株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
毎日、物を作って売る事は従業員に任せる作業です。経営者は仕事をしなければなりません。仕事とはビジネスプランを作り実行し、問題があれば修正しまた実行するということです。物がたくさん売れたので仕事をした気分になっていると、世の中が変化したときに次の策が無い事になります。そのためには、常にビジネスプランをブラッシュアップして磨いておく必要があります。そして、次の手を準備しておくことです。新商品を販売して時間が経過すると陳腐化して商品寿命が尽きます。始まったものは必ず終わるのです。商品寿命が尽きて売れなくなる商品数よりも新たに開発した商品数を多くすると安心でき、事業も継続できます。
これと同様に、ビジネスプランも陳腐化します。陳腐化の速度より速く多くのビジネスプランをつくるか、または改良する必要があります。
このように、新商品開発とビジネスプラン開発の2つが重要になるため、常に投資を行う必要があります。売上の3%以上を開発投資に使っている企業を「研究開発型企業」と呼ぶと聞いたことがあります。付加価値の高い商品を開発し、利益を投資にまわし、また付加価値の高い商品を開発する循環が発生すればよいのです。
私の場合、事業の始まりから終わりまで短いもので3ヶ月、長いもので6年です。立ち上げが好きなのです。言い換えると、考えることが好きなのです。水平飛行に入ると、単純作業の連続なので嫌いです。だから水平飛行に入ると、事業譲渡あるいは特許譲渡で終了します。何度も言いますが、始まったものは必ず終わるのです。商品の流行廃りはあったとしても、会社は安定して利益を生んでいきたいものです。
そのためにアドバイザーを使うことがあるかもしれません。一般的にアドバイザーは、作業の改善をアドバイスする事が多いと思います。しかし、それは仕事全体の1/10程度の範囲です。ビジネスプランのブラッシュアップをするアドバイザーは実業経験が必要です。何をしたらどうなるのかを知っている必要があるからです。できることなら実業経験があるアドバイザーの話を聞くことをお勧めします。
事業が水平飛行に入ると事業譲渡していると書きましたが、過去に譲渡した商標はネットショップ付きでした。譲渡から10年以上も経過していますが、現在も営業を続けています。そんな例を見ると嬉しくなります。その企業は大手メーカーの下請けで苦しんでいたそうです。どうしたら自社ブランドの製品を持つことができ、メーカーになれるのかを模索していたそうです。そんなとき、偶然に私が運営するメーカーのwebサイトを見つけたのです。そして「その事業が欲しい」と言われたので、商標とネットショップを譲渡し、下請け製造業から自社ブランド商品を持つメーカーに転身したのです。
私の仕事は、メーカーメーカーです。メーカーを作る仕事に見えることがあります。付加価値のあるビジネスプランや商品を持つためには必ずしも商品開発を行う必要はありません。吟味する能力は必要ですが、価値のある権利を買うという方法もあります。先ほどの商標とネットショップを買った中小企業は、1年で購入金額以上の利益を出しました。2年目以降は投資の必要もなく、利益を出し続けています。
私は、仕事とは作業ではなく、投資に勝つことだと思います。
少し詳しく書いてみました。
経営者の仕事は「作業」ではない。「投資」に勝ち続けることだ
毎日、物を作って売る。多くの経営者は、この日々の業務に追われ、会社が回っていることに満足感を覚えるかもしれません。しかし、それは大きな勘違いです。それは従業員に任せるべき「作業(サギョウ)」であり、経営者が本当に為すべき「仕事(シゴト)」ではありません。
経営者の真の「仕事」とは、ビジネスプランを構築し、実行し、問題があれば修正し、また実行するサイクルを回し続けることです。物がたくさん売れて「仕事をした気」になっていると、世の中が変化の牙を剥いた時、あなたの手元には次の一枚のカードも残っていない、という事態に陥ります。
第一章:すべての成功は、やがて陳腐化する
始まったものは、必ず終わります。これは、商品もビジネスプランも同じです。新商品が市場に出て時間が経てば、必ず陳腐化し、その寿命を終えます。この避けられない死の速度よりも速く、そして多くの新しい商品を開発し続けること。それが事業を継続させる唯一の道です。
同様に、それを支えるビジネスプランそのものも、刻一刻と陳腐化していきます。常に複数のプランを準備し、磨きをかけておく必要があります。
だからこそ、企業は「新商品開発」と「ビジネスプラン開発」という2つのエンジンに、常に燃料(投資)を注ぎ続けなければなりません。売上の3%以上を開発投資に使う企業を「研究開発型企業」と呼びますが、本質は比率ではありません。「付加価値の高い商品を開発し、得た利益を次の開発に投資し、さらに付加価値の高い商品を生み出す」という永久機関のようなサイクルを回せているかどうかが、すべてを決めるのです。
第二章:私が「水平飛行」で事業を売却する理由
私個人の話をすれば、一つの事業の始まりから終わりまでは、短いもので3ヶ月、長いものでも6年です。なぜなら、私は事業の「立ち上げ」、すなわち「考えること」が好きだからです。事業が軌道に乗り、売上が安定する「水平飛行」のフェーズに入ると、それは私にとって刺激のない単純作業の連続に変わってしまいます。
だから私は、事業が水平飛行に入った時を「終わり」と定め、事業譲渡や特許譲渡という形で現金化してきました。商品の流行り廃りに会社の運命を委ねるのではなく、会社そのものは常に安定して利益を生み出す仕組みを構築したいのです。
この考え方は、アドバイザーの選び方にも通じます。一般的なアドバイザーは、日々の「作業」の改善を助言することが多い。しかし、それは仕事全体の1割程度の話です。本当に価値があるのは、ビジネスプランそのものを磨き上げる手助けができる、実業経験豊富なアドバイザーです。彼らは、何をすれば、何が起こるのかという、生々しい因果関係を知っているからです。
第三章:「メーカー」を創る仕事、メーカーメーカー
私が「水平飛行」で事業を売却してきたと書きましたが、その一つの実例が、私の仕事の本質をよく表しています。
ある時、私が運営していたネットショップ付きの事業を、ある中小企業に譲渡しました。譲渡から10年以上が経過した今も、その事業は力強く継続しています。その会社の社長から、後にこんな話を聞きました。
「我々は、大手メーカーの下請けとして苦しんでいました。どうすれば自社ブランドを持つメーカーになれるのか、ずっと模索していました。そんな時、偶然あなたの会社のサイトを見つけ、『この事業が欲しい!』と直感したのです」
この取引によって、彼らは長年の夢だった下請け製造業から、自社ブランドを持つメーカーへの転身を果たしました。
この経験を通じて、私は自分の「仕事」を新たな言葉で定義するようになりました。それは「メーカーメーカー(Maker Maker)」、つまり、メーカーを創る仕事です。
付加価値のあるビジネスプランや商品を手に入れる方法は、必ずしも自社でゼロから開発することだけではありません。先ほどの会社のように、価値ある権利や事業を**「買う」**という選択肢もあるのです。もちろん、その価値を正しく見抜く「吟味する能力」は不可欠ですが。
事実、彼らは購入金額をわずか1年で上回る利益を叩き出し、2年目以降は追加投資なしで、安定した利益を生み出し続けています。
結論:仕事とは、作業ではなく、投資に勝つこと
ここまでお話ししてきたことを、最後に一つの言葉に集約したいと思います。
経営者の「仕事」とは、日々の「作業」に忙殺されることではありません。それは、自社のリソース(時間、資金、人材、知恵)をどこにどう配分するかを決定し、その結果としてリターンを最大化させること。
すなわち、「投資」に勝ち続けることです。
この一点において、すべての経営判断は評価されるべきだと、私は考えています。
