創造_メーカーの全体像

創造_メーカーの全体像

出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2026年3月20日

 

今回は、メーカーの仕事がどのようなものか、大まかにご説明したいと思います。私が取り組んでいるのは「製品が目で見える分野」ですので、今回は化学、薬学、バイオなどは除いてお話しします。

1. 製品づくりの基本
世の中のスマホ、家電、自動車など、ほとんどの製品は電子回路で制御されています。その作り方は、大きく次のような流れになります。
まず、最初に製品の仕様を決め、それを実現する電子回路を設計します。回路内にマイコンがあればソフトウェアを作り、電子回路をプリント基板にして、ソフトウェアを書き込んだマイコンを載せます。その完成したプリント基板をケースに入れると製品の完成です。このように、ケースの中で電子回路が動作しているのが現代の多くの製品です。
一方、繊維や機械などその他の分野は「目で見える」ため、新製品を開発する際は目で見て考えながら進めていきます。

2. リスク管理(取扱説明書と保険)
モノができたら、次は取扱説明書を作ります。このとき「製造物責任(PL)」を考慮することが重要です。メーカーが負担できる責任分解点を明確にし、責任を持てない部分については取扱説明書や製品本体に見やすく警告しておく必要があります。
次に、「生産物賠償責任保険」に加入します。これは万が一事故が発生し、メーカーに責任があると認定されたときのための保険です。私も自社製品で人身事故があり、一度この保険を使おうと思ったことがあります。

3. ビジネスの要となる「価格」と「特許」
ビジネスにおいて、価格設定は最初に考えるべき項目です。「こんな製品があったらいくらなら売れるだろうか」を考え、小売価格から原価を逆算します。私の場合、人件費を含めた原価が自社の販売価格の30%以下になるように設計しています。こうしておけば、資金が一回転したときに余裕が出ます。
また、特許出願の検討も欠かせません。販売してもすぐに真似されては利益が出ないからです。一般的には弁理士に相談します。特許にウェイトを持たせた企画ができればベストです。

4. パッケージと販売促進
Webサイト制作: 販売のためのサイトは、WordPressで作り、Googleアナリティクスで解析できるように設定するのがスタンダードです。

パッケージデザイン: PhotoshopやIllustratorを使います。Illustratorのデータを印刷会社の入稿ページから入稿しますが、納期や部数によって価格が大きく変わるため、1週間程度は納期を見ておくと良いです。

動画制作: 製品説明の動画も制作します。安価で使いやすい動画編集ソフトがいくつかあるので試してみると良いでしょう。YouTubeチャンネルも必須です。

5. モノづくりを支えるツール群
メーカーの仕事は「商品企画、特許、販売方法、価格設定」などを総合的に一体として考える必要があります。変数が多く最初は混乱しますが、何回も自社製品を世に出していくと慣れていきます。

使用するツールは多岐にわたります。

設計系: 電子回路CAD、機械CAD、プリント基板設計ツール、ソフトウェア制作ツール
クリエイティブ系: 写真加工ソフト(Photoshop)、印刷原稿作成ソフト(Illustrator)、動画編集ソフト
Web・販売系: Webサイト制作(WordPress)、ドメイン取得、サーバーレンタル、代金決済サービス

ここまでがメーカーが行う最低限の作業です。全体像を把握するための参考になれば幸いです。

 

 

筆者紹介
砂原康治(すなはら こうじ)
1964年生まれ、石川県出身。学卒後、電子回路やソフトウェアの設計業務に携わり、1994年に企画・設計・製造を一人で手がけるメーカーとして独立。仮設信号機、LED照明器具をはじめ多くの製品を開発し、特許や事業としても販売。グッドデザイン賞、ベンチャーフェア2000審査委員会奨励賞(現:ベンチャーアワード)など受賞歴多数。最近では、自社開発した「冷却ペットボトルカバー」をMakuakeに掲載し、目標金額の2271%の応援購入金額を獲得するなど、クラウドファンディングでも好結果を続けている。専門分野である新商品開発、 販路開拓、 知的財産、 IT・Eコマースなどの分野で、公的機関の商品開発アドバイザーとしても活動し、2024年4月より「いしかわ大学連携インキュベータ」のチーフインキュベーションマネージャーを務める。