出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2026年6月19日
新製品の開発において、性能評価やデータ収集は欠かせません。しかし、そのために高額な測定器や試験設備を自社で購入するのは、資金面で大きな負担となります。そこでお勧めしたいのが、各都道府県にある工業試験場などの「公設試験場」を活用することです。
私自身、これまでにプロジェクタースクリーンの光学特性、ガラスや樹脂板の光学特性、紙製吸音パネルの音響特性などの測定で公設試験場を何度も利用してきました。今回は、私の実体験に基づく3つの事例から、公設試験場を効果的に利用するためのヒントをご紹介します。
1. 独自のネットワークで最適な試験場を見つける
以前、プロジェクタースクリーンメーカーを営んでいたとき、素材の視野角を測定しようと地元の石川県工業試験場に相談しました。求めている測定装置はありませんでしたが、公設試験場は全国規模の「横のつながり」を持っています。担当者の方が独自のネットワークで調べてくださり、静岡県の「浜松工業技術支援センター」を紹介していただきました。すぐに現地を訪問し、無事に必要なデータを取得できました。身近な試験場に設備がなくても、まずは相談窓口として活用することで、解決の確かな糸口が見つかるのです。
2. 柔軟な対応を引き出し、業務効率化を図る
次に、ガラスや樹脂板の光学特性測定を行った事例です。このときも石川県には最適な測定器がなく、隣県の「富山県産業技術研究開発センター」を紹介されました。
ここで特筆すべきは、同センターの臨機応変な対応です。初回こそサンプルを持参しましたが、2回目以降は宅配便でサンプルを送り、測定データをメールで返送してもらえるようになりました。出張の手間や時間が大幅に省け、迅速にフィードバックを得られたことで開発スピードが向上しました。自社で高額な測定器を購入するまでもないが、正確なデータは必要不可欠という状況において、こうした柔軟な対応は非常に助かりました。
3. 充実した設備で、納得いくまで試行錯誤する
最後に、私が発明した「紙製吸音パネル」の音響透過損失を測定した事例です。石川県工業試験場には、一企業では保有が難しいほど立派な音響試験室があり、県外からも多くの利用者が訪れます。
当時の目標は、「宅配便で送れ、木造住宅の2階にも置ける、軽くて安価な防音個室」の開発でした。音響工学には重い物ほど音を遮断するという「質量則」がありますが、私はあえて軽い紙素材での遮音に挑んでいました。そのため形状の異なるサンプルを何種類も試作し、幾度となく測定を繰り返す必要がありました。
近くにこうした恵まれた施設があったおかげで、納得いくまで試行錯誤ができました。結果として、防音パネル単体では大手楽器メーカー製と同等の性能を実現できました。ドアや角の処理において、アルミフレームを使わずに紙の加工技術だけで仕上げるという次なる課題も明確になり、実践的で大きな収穫を得ることができました。
おわりに
公設試験場は、設備投資のリスクを抑えながら製品開発に挑戦できる、極めて強力なパートナーです。自社内ですべての課題を解決しようとせず、まずは近くの公設試験場に足を運び、気軽に相談してみてください。きっと、製品開発を力強く前進させるヒントが得られるはずです。
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筆者紹介
砂原康治(すなはら こうじ)
1964年生まれ、石川県出身。学卒後、電子回路やソフトウェアの設計業務に携わり、1994年に企画・設計・製造を一人で手がけるメーカーとして独立。仮設信号機、LED照明器具をはじめ多くの製品を開発し、特許や事業としても販売。グッドデザイン賞、ベンチャーフェア2000審査委員会奨励賞(現:ベンチャーアワード)など受賞歴多数。最近では、自社開発した「冷却ペットボトルカバー」をMakuakeに掲載し、目標金額の2271%の応援購入金額を獲得するなど、クラウドファンディングでも好結果を続けている。専門分野である新商品開発、 販路開拓、 知的財産、 IT・Eコマースなどの分野で、公的機関の商品開発アドバイザーとしても活動し、2024年4月より「いしかわ大学連携インキュベータ」のチーフインキュベーションマネージャーを務める。
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