出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2026年7月17日
検索されない斬新な商品をどう売るか?〜認知度ゼロから市場を開拓するWEB戦略〜
新商品をインターネットで販売しようとする際、まず行うべきなのは、その商品カテゴリの「検索ボリューム(検索されている量)」を調べることです。このリサーチの目的は、ネット上における市場規模を推測することです。
検索ボリュームが多い商品は市場規模が大きい反面、競合も多く競争が激しいと予想されます。逆に検索ボリュームが少ない商品は、市場規模が小さいことを意味します。すでに認知されている商品は、ユーザーが能動的に検索してくれるため、商品説明を詳しく魅力的に記載することが販売を伸ばす正攻法となります。
しかし、これまでにない画期的な新商品や、新たなカテゴリを創り出してしまった場合、その商品の検索ボリュームは「ゼロ」になる可能性があります。消費者はその商品の存在を知らないため検索できないからです。「誰も知らないから検索されない」というジレンマに陥るのです。つまり、斬新な商品ほど最初に販売を軌道に乗せるのが難しいという現実があります。
この「検索されない商品をどう売るか」という課題について、私が約20年前に経験した具体的な事例をご紹介します。
ターゲットは、沖縄の島野菜「クワンソウ」です。萱草の仲間でオレンジ色の花を咲かせます。沖縄では昔から「眠れないときにお茶にしたり食べたりするとよく眠れる」と言い伝えられてきました。私は以前、クワンソウエキスを抽出する沖縄のベンチャー企業と出会い、そこから睡眠サプリメントを購入し試してみたことがあります。
その経験から、「クワンソウを直接お茶として販売すれば良いのではないか」と考えました。そこで沖縄の企業に依頼し、飲みやすい粉末茶に加工してもらい、専用の自社Webサイトを立ち上げて販売を開始しました。
ところが大きな壁にぶつかります。当時の本土ではクワンソウを知る人がほぼおらず、商品名で検索されることは皆無だったのです。当然、Webサイトも全く閲覧されません。
そこで私は、集客のアプローチを根本から変えました。「クワンソウ」という未知の単語で検索させるのではなく、ターゲット層が抱える悩みに関心を向けたのです。具体的には、Webサイトのコンテンツを単なる商品説明から、「沖縄の島野菜」と「睡眠」を中心としたテーマに書き換えました。睡眠の情報を求めてサイトを訪れ、その解決策の一つとしてクワンソウ茶を知るという自然な導線を作ったのです。これにより集客が徐々に増え、販売へとこぎ着けることができました。
また、販売オペレーションにも工夫を凝らしました。単価2,800円と安価なため、自社で都度発送していては手間がかかります。そこで、自社サイトの注文ボタンを押すとAmazonの自社店舗へ遷移する仕組みにし、AmazonのFBA(自動発送システム)を活用しました。これにより、低単価商品でも手間をかけずに効率的な販売が可能になりました。
現在では、クワンソウ茶は大手ネット通販等で広く販売されていますが、誰も知らない当時は集客に大変苦心しました。この経験から学んだのは、「斬新な商品を開発した場合、ユーザーの検索意図(関心)と自社商品の関係性を論理的に結びつけ、Webサイトを構築する必要がある」という重要な教訓でした。
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筆者紹介
砂原康治(すなはら こうじ)
1964年生まれ、石川県出身。学卒後、電子回路やソフトウェアの設計業務に携わり、1994年に企画・設計・製造を一人で手がけるメーカーとして独立。仮設信号機、LED照明器具をはじめ多くの製品を開発し、特許や事業としても販売。グッドデザイン賞、ベンチャーフェア2000審査委員会奨励賞(現:ベンチャーアワード)など受賞歴多数。最近では、自社開発した「冷却ペットボトルカバー」をMakuakeに掲載し、目標金額の2271%の応援購入金額を獲得するなど、クラウドファンディングでも好結果を続けている。専門分野である新商品開発、 販路開拓、 知的財産、 IT・Eコマースなどの分野で、公的機関の商品開発アドバイザーとしても活動し、2024年4月より「いしかわ大学連携インキュベータ」のチーフインキュベーションマネージャーを務める。
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