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創造_知財の流通

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 過去に特許流通という事業がありましたが、ほとんどは大企業が保有している特許を中小企業に移転する動きでした。大企業は規模の大きな製品を作るために取得した部分的な特許が多くありますが、それを中小企業に移転したとしてどうなるのでしょうか。特許流通事業は、その特許を利用して新製品が生まれて新しい売上になる事を目指したのだと思いますが、設計や製造の部分的な特許では製品は生まれません。流れが反対なのです。
 特許流通を活性化させるには、中小企業が一つの特許から生み出した製品を大企業がさらに大きな事業に育てる方向が良いと思います。中小企業は良い製品を開発しても販売力が弱い場合が多いので大企業はそれをさらに大きく育てる事業を行えば良いのです。または、その知財を基に大企業の事業の一部として、さらに事業規模を拡大すれば良いのです。製品を開発した中小企業は特許を保有しているので、貸したり譲渡したりして自社で事業化するより大きな利益を得られれば良いのです。このようにスムーズな特許移転や事業のバトンタッチが可能になれば、良いアイディアが短期間で世に出ると思います。しかし、移転はスムーズに進まないのが現状です。
 その理由の一つが特許の抜け穴です。特許を使わずに同じ機能と性能の製品が安価に設計製造できれば、その特許を使う必要はありません。強い特許を持つことが大前提で特許流通が始まります。特許の抜け道を見つけられない場合、借りるか買い取るかしかありません。そこから特許流通が始まります。それでも特許を保有している中小企業は強気に出てはいけません。あくまでも対等な取引を行わなければなりません。大企業はその特許が消滅するまで待つ体力があるのです。20年待てば特許は消滅します。または、改良特許を出願し基本特許を持つ中小企業の製品改良を阻止します。改良製品を販売したければクロスライセンスを行うしかありません。このようにして外堀を埋める方法はいくらでもあるのです。ですから、基本特許といえども妥当な金額というのがあるのです。その妥当な金額で合意することが重要です。身の程を知る事が大事です。
 そうやって技術移転が決まり大企業がビジネスを大きく育てれば、開発した中小企業の評価もあがると思います。次に開発する技術も注目されるはずです。譲渡価格は、売り手と買い手が合意した金額になります。特許をどのような方法で評価しても金額は両者の合意で決まりますが、売り手の方で金額の根拠を示す事で話し合いのベースができます。これは簡単です。その製品の販売実績を開示すれば良いのです。私の場合は、その製品の売上が入金された通帳を見せて特許を売ってきました。ここで買い手の大企業が陥る失敗があります。中小企業は販売力が弱いという前提です。現在は、ネットで製品を販売する時代となり、中小企業は大企業より販売力が弱いという前提が成り立たなくなっています。私が以前譲渡した特許は、ネットで必死に販売して、つくった売上を見せて金額を決めました。当社より遙かに規模の大きい会社でしたが、譲渡後は売上が落ちた例があります。中小企業は各能力が小さいという前提もすでに無くなっています。今後、特許は中小企業から大企業へ移転されるのが自然になると思います。