出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2025年12月19日
株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
・「連戦連敗」こそが、最強の武器になる
私の特許における戦績は、10勝40敗です。この「40敗」のために費やした膨大な時間と費用を、みなさんはどう思われるでしょうか? 無駄、徒労、浪費……そう考えるのが普通かもしれません。しかし私は、これを「勉強」であり「確実な投資」だったと捉えています。
・安藤忠雄氏に学ぶ「負ける力」
世界的建築家である安藤忠雄さんに、『連戦連敗』という著書があります。華々しい実績を持つ彼でさえ、そのキャリアはコンペ(設計競技)での敗北の連続であり、「10回戦って1回勝てればいい方だ」と語っています。しかし安藤氏は、負けたプロジェクトを単なる徒労とは考えません。極限まで考え抜いた思考のプロセスは、たとえ採用されなくても自身の血肉となり、必ず次の建築への「強烈なエネルギー」になると説いています。
私の「40敗」も、これと全く同じです。 お金と時間は失いましたが、実験結果と知識という目に見えない資産は残りました。その時「失敗した」と思ったとしても、そこで得たデータやノウハウは次の作戦の貴重な「肥やし」になるのです。
・失敗の蓄積が「脳内ライブラリー」を作る
起業当初、私にはこの「失敗の経験」がありませんでした。それはつまり、新しい商品を考えようとしても、判断材料となる「知識のストック」が脳内にない状態です。ゼロからアイデアをひねり出す作業は、苦難の連続でした。
しかし、現在は違います。必要に迫られたとき、私はすぐに「頭の中へネタ探し」に出かけます。世の中のトレンドを見渡し、頭の中にある「失敗と実験のライブラリー」と照らし合わせるのです。「過去のあの実験結果(40敗の一部)と、今のこの需要を組み合わせればヒットするのではないか」。 そうした精度の高い仮説が立てられるのは、過去の膨大なデータの蓄積があるからに他なりません。失敗を恐れずに実験を繰り返してきたからこそ、今の引き出しの多さがあるのです。
・「物欲」を捨てて「実験」を楽しむ
そもそも、失敗をせずに成功だけを手に入れようとするのは無理があります。 通常、商品が売れなければがっかりするものですが、私の場合、不思議とその感情が薄いのです。それよりも「実験によって新たな知識を得られた」というワクワク感の方が勝ります。
これは、私がもともと「物欲」が少ないせいかもしれません。 物欲が強いと、損をすることへの恐怖が強くなり、「失敗=悪」「成功=善」という単純な二元論に陥りがちです。私は「物欲とは、欲と恐怖がセットになったもの」だと考えています。執着が少なければ恐怖も薄れ、淡々と実験を繰り返し、結果をデータとして冷静に受け入れることができます。
・困ったときの「売れる物」
淡々と実験を続けていれば、いざという時に救われます。 私はお金に困ったとき、頭の中のライブラリーへ行き、蓄積した知識を組み合わせて今求められているものを生み出します。
これを私は、「困ったら売れる物を作って売れ」と表現しています。40回の「連戦連敗」があったからこそ、確信を持って10回の成功を生み出せる。安藤氏が敗北をエネルギーに変えたように、私もまた、失敗という名の実験データを武器に、生きているのです。

