破壊 (ベンチャー企業)

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 10年ほど前からベンチャー企業ブームがありました。しかし、ベンチャー企業という会社は無いのです。普通、会社は、有限会社か株式会社なのです。誰かが勝手にベンチャー企業と呼んだだけなのです。「新しいことを始めたベンチャー企業は儲かる」と欲に目がくらんで投資した人たちは今頃何をしているのでしょうか。数年前、私の会社を訪ねてきた人が「私も自分のお金をベンチャー企業に投資しています」と言っていましたが、目が血走っていました。冷静に成功の確率や損益を考えているのだろうか、と心配になりましたが、本人の満足を壊す必要もないので放っておきました。
 最近になって、やっとベンチャーブームも静かになったような気がします。ほとんどが消滅したのだと思います。その理由は、たぶん情理一体の経営ができていないのだと思います。情とは、夢のことです。理とはお金や経営のことです。通常、経営者の頭の中で情が社長になったり、理が社長になったり状況を見て臨機応変に対応しなければなりません。倒産するベンチャー企業は情が社長を独占しているのです。しかし、夢は食えないのです。また、お金だけを追っていくと道が行き止まりになっている事に気が付きません。どちらも必要です。優秀な経営者とはこの二つのバランスが取れた人だと思います。
 私は、お金が無くなると理に社長を譲ります。そして手っ取り早く利益を生んで、情に社長の座を譲るのです。その手っ取り早く利益を生む方法は、売れる物を作って売ることです。情が社長を独占すると事業の仕様を先に決定できません。「こんな製品ができたからどうやって売ろうか」という状態に陥るのです。ベンチャー企業が陥りやすい投資が先行するパターンです。
 私は年商約1兆円の企業と顧問契約していた時期があるので分かるのですが、投資が先行する悪いパターンは大企業にもあります。先日、ある商社の役員から「この事業成功すると思いますか?」と聞かれました。すでに2億円投資をした後に何を言っているのだろうと思いました。東南アジアの会社に出資して日本での販売権を得たそうです。それで安く電子部品を販売できるとのことです。しかし、日本の電子部品メーカーが価格を下げればひとたまりもないことは明らかです。勝つための戦略が無いのに投資を先行してしまったのです。この程度のことなら私に顧問料100万円払ってくれれば2億円の支払いを止めたのにと思ったものです。その商社はグループ全体で大きな売上げがありますが、とうとう赤字になったそうです。今回2億円という少額だったので良かったのですが、これが積み重なるといくら大きな企業でもいずれは消滅します。私はその商社から週に2日商品企画の仕事を手伝ってほしいと言われていたのですが断りました。
 今回この商社の場合、その特殊な電子部品の販売権を得るのではなく、その部品を使った商品企画や特許などの知的財産を持つことが正解だったと思います。2億円も知的財産に投資すれば時間をかけずに強力なものが買えます。特に日本では知的財産は安いので会社でも特許でも技術でも何でも買えるのです。但し、技術の経済的価値が分かる技術者と知財の仕入れから製品の販売までを統括する戦略家を付けなければならないと思います。(2004年1月)

noteには他にもたくさん書いていますのでよかったら見てください。

Category: 書き物
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