
出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2025年1月24日
株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
よく次のような相談を受けることがあります。
「この分野で何十年も営業しているが、次にどんな商品を作れば良いか分からない」と。
その業界に長年携わってきたメーカーであれば、業界の隅々まで知り尽くし、全体を見渡せているように感じるでしょう。さらには、誰も手がけていない未開拓の範囲を探し出すために、特許マップなどのツールを活用し、論理的な検討を重ねているケースもあるかもしれません。しかし、これはいわば二次元の世界での「シェア争奪戦」に過ぎないように思えます。
私はさまざまな業界で商品開発を行ってきましたが、どの分野においても専門家ではないため、業界内の細部に深入りすることなく、斜め上の視点から状況を観察する癖があります。そのため、相談者の取り組みが二次元の世界、つまり平面的な競争に留まっているように見えてしまうのです。なぜ誰も、視点を上に向けて「三次元」で考えようとしないのでしょうか。
平面上でのシェア争いを続けていれば、やがて効率が悪くなる局面に直面します。その時点で気づくべきなのは、そこがすでに「レッドオーシャン」、競争が激化した市場であるということです。しかしながら、業界に長く関わっているほど、新たな分野を見つける際にも、どうしてもその平面内での発想にとどまりがちです。
私の場合、新分野に挑戦して新商品を開発・販売すると、最初のうちは効率的に売上が伸びます。しかし、時間が経つにつれ効率が徐々に低下していくのが常です。そのタイミングで、再び新しい分野に目を向け、新商品を開発して市場に投入するようにしています。一つの業界や平面でのシェア争いに陥ることを避けているのです。もちろん、大企業など規模の大きい組織にとっては、短期間で業界を変えるのは難しいかもしれませんが、少なくとも5年から10年に一度くらいは、新しい分野への進出を真剣に検討する価値があると思います。
以前、私はある企業のアドバイザーを務めていました。その企業の悩みは、輸入品の台頭によってシェアが下降していることでした。競合メーカーが合法的に同等の商品を製造し市場に出すことが可能になると、その商品の寿命が尽きたと考えるべきだと私は思っています。おそらくその企業も、別の商品開発にも力を入れていたとは思いますが、依然として同じ平面上での競争に囚われていたように感じます。
二次元の世界がすべてだと思い込んで頑張っている方々に、ぜひ一度、自社を斜め上の視点から見直すことをお勧めしたいと思います。それは、自社の属している業界の枠組みを越えて外の世界を見ることにほかなりません。確かにそれは不安を伴うかもしれません。しかし、私のようにもともと「無所属」として自由に生きてきた人間にとっては、それほど恐れることではありません。
「無所属」で生きる練習として、例えば現金10万円とパソコン、そしてインターネットだけを使って、現金1000万円を稼ぎ出してみる、という挑戦はいかがでしょうか。その方法は完全に自由です。自由すぎて何から始めれば良いか分からなくなるかもしれませんが、そこから自分自身の考えを整理し、ビジネスプランを組み立てていく力を養えば良いのです。