出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2026年1月23日
株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
「仕事と作業、そして趣味。これらを混同していませんか?」これは、私が常に自分自身へ問いかけている事です。日々の忙しさの中で、単なる「作業」をこなしただけで、あたかも「仕事」をしたような気分になっていないでしょうか。
新技術や新製品を開発するとき、私たち「発明家」は時間を忘れて没頭します。しかし、「経営者」の視点で全体を俯瞰したとき、冷や汗をかくことがあります。「今、熱中しているこの時間は、本当に会社の利益に繋がるのか?」、「仕事と称して、自分の趣味に走っていないだろうか?」そうした不安を払拭し、自分の現在地を冷静に把握するために、私は頭の中に「田の字(4つのマス)」を描くようにしています。
この「田の字」は、横軸に「仕事(思考・価値創造)」と「作業(手を動かす実務)」を、縦軸に「趣味(自分視点)」と「仕事(顧客視点)」を置いて考えます。
① もっとも危険な「右上」の罠
私たちが目指すべきは、顧客のために価値を生む「左下(仕事×仕事)」の領域です。しかし、開発者や発明家が最も陥りやすい罠は、実は「右上(趣味×作業)」の領域です。 例えば、誰にも頼まれてもいない箇所の精度を上げたり、意思決定に必要以上のデータを集めてみたりすることです。これらは「手を動かしている」ため、本人は仕事をしていると錯覚しています。しかし経営者の冷徹な視点で見れば、それは「趣味のプラモデル作り」と同じであり、利益を生まないどころか、貴重な時間を浪費しているに過ぎません。「仕事をした気分になっていないか? それはただの『凝った作業』ではないか?」この問いかけこそが、経営者の視点です。私の場合、成果に必要なこと以外は徹底して行わないようにしているため、周りから見ると手抜きをしているように見えることがあるようです。しかし、それは「しないといけないこと」だけに集中しているのです。もちろん、もう少し丁寧にやらなければと反省することもありますが、この線引きは重要です。
② 左上と右下の扱い方
では、他の領域はどうでしょうか。「左上(趣味×仕事)」は、発明家の夢や好奇心が詰まった場所です。ここはイノベーションの源泉ですが、いつまでもここに留まっていてはいけません。経営者の視点で「どう利益に変えるか」を考え、左下の「顧客のための商品」へと落とし込む必要があります。一方、「右下(仕事×作業)」は、事務処理などの実務です。会社として不可欠な要素ですが、経営者自身がここに時間を割いていては会社は伸びません。私の場合、固定費を増やさないよう外注を活用したり、ソフトウェアの使い方を工夫したりして仕組み化し、自分自身はここから離れるようにしています。
【結論】 経営者にとって重要なのは、自分の持ち時間を「左下(真の仕事)」に寄せることです。発明家としての「こだわり(趣味性)」という熱量は大切ですが、それを単なる「作業」で消費してはいけません。その熱量は、具体的な商品化のために使わなければならないのです。ふとした瞬間に「田の字」を思い出し、今自分が安きに流れて「右上」に逃げ込んでいないかを確認してみてください。「作業」を極力減らし、「趣味」の情熱を「顧客価値」へと変換する。その変換プロセスこそが、我々にとっての真の「仕事」であり、価値の「創造」なのです。

