創造_ゼロイチこそ仕事

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出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2025年3月21日


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 私は時々、「どうしたら儲かりますか?」と聞かれることがあります。その答えは、「売れるものを創って売れば良い」です。そう答えると、多くの人が「?」という表情をします。しかし、「それを考えることが仕事なのです」とは直接言いません。「どうしたら売れる商品に気づくことができるのですか?」と尋ねられたとき、ようやく私の仕事が始まります。この質問をされることは多くありませんが、たまに大企業からも聞かれることがあり、その際にはアドバイザーとして仕事をしています。

 先日、以前私が新ブランドの立ち上げをお手伝いした会社の部長さんが訪ねてきました。「今年、新ブランドの売上が3,000万円でした。来期は1億円を目指します。」とのこと。彼らは、ニワトリと卵の状態から抜け出したようです。この経験こそが重要なのです。「お金がないからできない」「あれがないから無理だ」と、できない理由ばかりを考える人は、何もしない方が良いでしょう。今回は、素直にアドバイスを聞き、実行していただいたことで成果が出ました。もちろん、アドバイスを受け入れてもらうためには、アドバイスする側の実績や能力を証明する必要があると感じます。そして、私のアドバイスを信じて実行してくださったことに感謝しています。

 今回のテーマである“ゼロイチ”とは、何もないところから売上を生み出すことを指します。1を10や100に増やすのは、単にたくさん売れば良いだけの話であり、それは作業レベルの問題です。しかし、ゼロイチの話は作業とは異なります。

 商品を売る際、最終的にお金を出すのは人間です。だからこそ、人が「欲しい」と思う商品を創る必要があります。それも単に従来品のコストダウンや性能向上を目指すのではなく、新たな価値観を商品として提示することが重要です。世の中を観察し、「近い将来こうなるのでは?」と予測できたとしましょう。そうすると、「次に必要になる商品はこれだ」と推測できます。これがゼロイチの一つの方法です。

 私は30年前、「下請けや工賃仕事はしない」と決めて起業しました。つまり、ゼロイチを実践するということです。それは自由に考え、実行できるため、とても魅力的に感じました。ライフジャケットなしで海に飛び込み、泳ぐような感覚です。しかし、それを実現するためには基礎研究が必要であり、特許などの知的財産を扱う機会も増えましたし、知財のみで勝負した場面もあります。

 ゼロイチの面白い点は、成功すると無敵になった気分を味わえることです。パソコンさえあれば利益を生み出せるのですから。これこそが仕事の醍醐味だと思います。

 しかし、ここで大きな問題があります。新たな価値観で新商品を考えているときに、製造や販売の作業が割り込んでくると、私の場合、新商品のアイデアを生み出せなくなってしまいます。そのため、新規に商品開発を行う際には、現在の製造販売の仕事を辞めることから始めます。作業の割り込みがない状態を作り、次のテーマに集中するのです。この間、通帳の残高は自由落下していきます。しかし、恐怖を振り払い、次のテーマに没頭することが重要です。

 このようなリスクを回避するためにも、商品開発の部門を持ち、営業とは分離して商品開発を行うことをお勧めします。そうすることで、会社としてゼロイチを実現できれば、無敵の企業へと成長するのではないでしょうか。新技術や新商品の開発部門を持ち、商品や事業そのものを生み出す感覚で営業をすることで、より楽しく、意義のある仕事ができると思います。

Category: 書き物
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