創造_決断の量と質

決断の量と質

出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2026年2月20日

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

今回は、自分自身の頭脳の使い方について説明したいと思います。
仕事をしていると、考えるべき事が次から次へと降ってきます。そのとき、順に一つずつ処理していると、CPUの処理能力もバッテリーもすぐに枯渇してしまいます。また、割り込みが入ると大事な計算を後回しにしてしまう可能性もあります。私は、人が1日に判断し決断できる回数には上限があると感じています。ですから、重要な決断は、脳の処理能力が最も高い午前中に行うようにしています。夕方になり疲れてくると、「これは明日考えよう」と判断を先送りにすることもあります。
そこで、CPUのパフォーマンスを最大化するために、主に次のような項目についてシミュレーションし、実行しています。

○ 意思決定のコスト削減
朝起きてから、人は無数の選択を迫られ消耗していきます。そこで、考える工程そのものを削除することを考えるようになります。そもそも、「それは考える必要があるのか」と。

○ 快楽よりも安定
外食のため新しい店に入り、予想が外れたときはがっかりします。この感情の振れ幅は、仕事をする上でノイズになります。この振れ幅を小さくするため、私はチェーン店に入ります。平均点が下がっても、予想外のことが起きないからです。気持ちの変動をなくし、長距離走を淡々と同じコンディションを保ちながらこなしていく方が、最終的に良い結果が出ます。

○ 感情を排除し冷徹に補給
食事は、ご褒美ではなく体を動かすためのエネルギー補給であると考えています。具体的にはコンビニで食べ物を買うとき、金額対カロリーを見て買います。安価で高カロリーな物を選ぶということです。ここに「食べたい」という感情は挟みません。

○ 生活をシステムとして見る
栄養は足りているか。睡眠は足りているか。というように生活をロジックで考えています。私は、こだわりがない人ではなく、無駄な意思決定を減らし感情を安定させ、ここぞという大事な場面でCPUがフル稼働できるようにしているのです。

○ ノイズの低減
以前、取り組んだ仕事がなかなか進まなかったときがあります。そこで、仕事に無関係なノイズを減らすため、仕事に関係ないものをすべて削除したことがあります。残ったものは服と靴だけでした。住む場所はあったのでホームレスにはならずに済みました。本当に達成したいことを優先順位1にするとは、こういうことです。その結果、誰にも割り込みを入れられない静かな環境を手に入れることができ、進まなかった仕事が一気に動き出し、1個数千万円かかる試作品を作ることができました。
現在、仕事をしている建物には、時計・カレンダー・ゴミ箱などはありません。目に入ると意識してしまいます。それは、大きなコストになるため、徹底的に無駄を削ぎ落としています。もし、そこで時計を見たことが原因で会社の運命を変えるような事に気がつかなかったらと思うとゾッとします。これまでにもちょっとした気づきから新しい商品ができ、億以上売れた例があります。

○ 究極のシングルタスク
一般的に言われる「決断の節約」は、服を選ぶエネルギーを節約する程度のものですが、私の場合は、「生活者としての自分(自然人格)」を極限まで削ぎ落とし、「創造者としての自分(法人格)」だけを残した状態です。そうして計算し、実行し、結果を受け入れるのです。参考になるか分かりませんが一例としてお読みいただければ幸いです。

 

筆者紹介
砂原康治(すなはら こうじ)
1964年生まれ、石川県出身。学卒後、電子回路やソフトウェアの設計業務に携わり、1994年に企画・設計・製造を一人で手がけるメーカーとして独立。仮設信号機、LED照明器具をはじめ多くの製品を開発し、特許や事業としても販売。グッドデザイン賞、ベンチャーフェア2000審査委員会奨励賞(現:ベンチャーアワード)など受賞歴多数。最近では、自社開発した「冷却ペットボトルカバー」をMakuakeに掲載し、目標金額の2271%の応援購入金額を獲得するなど、クラウドファンディングでも好結果を続けている。専門分野である新商品開発、 販路開拓、 知的財産、 IT・Eコマースなどの分野で、公的機関の商品開発アドバイザーとしても活動し、2024年4月より「いしかわ大学連携インキュベータ」のチーフインキュベーションマネージャーを務める。