創造_物づくりの価値

帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 物づくりに価値はありません。価値があるのは、その物を作る権利、販売する権利です。誰でも作れる物は安いところが受注します。設計製造の過程が複雑で自社しか作れないと思っている方もいるかもしれませんが、自社が作れる物は他者も作れるのです。製造販売を独占したい物は技術的に独占するのではなく法的に独占する方が安価で確実です。そうする事で、自社で値段を付けることができるようになります。高い技術力によって作ったとしても自社が作ることができれば他者も作ることがでるのです。
 先日、ある大企業の商品開発部の方と話をしました。「材料は市販品です」と説明したところ不思議な顔をされました。どこにでもある材料を買ってきて組み合わせただけで、特許登録になり製造販売を行う権利が生まれたことに驚いたようです。新しい物をつくってはじめて権利化できると思っていたようです。
 特許を出願すると決めた時点で、その仕事は技術屋の仕事ではなく法律家の仕事になります。物を作らないと発明や開発を行った事にならないと思っていたようです。大企業でもそんな認識の会社があります。
 その特許のおかげで類似品は出現せず独占的に販売できています。このため下請けの製造業者から仕入れた完成品に自社の利益を乗せて販売できるのです。そこが付加価値になります。
”材料費+工賃”には付加価値は乗っておらず、その価格はメーカーとしての原価です。
 最近販売している製品は2つの繊維生地をカットして重ねて縫った物です。2つの生地は市販品です。その組み合わせによる効果が特許登録になりました。特許は技術的に複雑な物を作る必要はないのです。過去に類似品が無く、進歩性、新規性があれば登録されるのです。作り方を秘密にして類似品の出現を防いでいる企業もあります。その場合、他者が同じ内容の特許を取得すると自社はその製造をやめなければなりません。それを防ぐた
めには、いつからこの製品を製造販売していたのかが分かる証拠を作っておく必要があります。先使用権の確保です。後になっていくら「昔からやっていた」と言っても証拠がなければ反論できません。独自技術を利益に変えるには、ノウハウとして秘密情報管理を確実に行うか、特許出願し内容を公開しても独占する方を選ぶか、決めなければなりません。
 製造業では原価を正確に把握する必要があります。私の場合、外注先から梱包が完了した完成品を購入しているので仕入れ価格が、ほぼ原価になります。これにより原価計算を省くことができます。原価を正確に把握する場合、原価計算を勉強する方がいます。私の場合は、原価計算をしなくてもよい方法を考えます。また、必要なものだけを持つようにしています。そうすると工場は不要になります。代表的なファブレス企業としてAppleや任天堂、キーエンスなどがあります。キーエンスは同業者に発注しても付加価値の高い製品を販売しています。ということは製造に大きな価値はあるのでしょうか。良い商品を考え独占権を確立させた事に大きな価値があります。私はこれを仕事といいます。

少し詳しく書いてみました。

「モノづくり」に価値はない? 本当の利益を生む「権利」と「ファブレス経営」の話

1. 「作る」ことより「権利を持つ」ことに価値がある

厳しい言い方になりますが、単に「モノを作る」こと自体に大きな価値はありません。真の価値は、そのモノを作る権利、そして販売する権利を握ることにあります。

なぜなら、「自社で作れるものは、他社も作れる」からです。 「うちは特殊な技術だから真似できない」と考える技術者は多いですが、時間をかければ技術的な模倣は可能です。技術的な参入障壁はいつか崩れます。 だからこそ、製造販売を独占するためには、技術力で守るのではなく「法(特許)」で守る方が、安価で確実なのです。法的に独占することで初めて、自社の言い値(プライスリーダーシップ)で商売ができるようになります。

2. 特許に「ハイテク」は必要ない

先日、ある大企業の商品開発担当者とお話しした際、私が開発した製品について「材料はすべて市販品です」と伝えたところ、非常に驚かれました。 「どこにでもある材料を組み合わせただけで、特許になり、独占権が得られるのか?」と不思議そうでした。

ここに大きな誤解があります。

  • 誤解: 新しい素材や複雑な技術がないと特許にならない。

  • 真実: 既存の材料の組み合わせでも、そこに「新規性」と「進歩性」があれば特許になる。

実際、私が最近販売している製品は、2種類の市販の生地をカットして重ねて縫っただけのものです。しかし、その「組み合わせによる効果」が認められ、特許を取得しました。 特許を出願すると決めた瞬間から、その仕事は「技術屋」の領域を超え、「法律家(知財戦略)」の仕事になります。モノを作ることだけが発明ではないのです。

3. 利益の源泉は「独占権」にある

特許のおかげで、私の製品には類似品が存在しません。 そのため、下請け業者から仕入れた完成品の原価(材料費+工賃)に、自社が決定した利益を乗せて販売することができます。

「材料費+工賃」はあくまでメーカーの原価であり、付加価値ではありません。 「他社が参入できない状況を作り、利益を乗せる権利」こそが、最大の付加価値なのです。

4. 「秘匿」か「特許」か? リスク管理の分かれ道

独自技術を守るには、2つの道があります。

  1. ノウハウとして隠す(ブラックボックス化): 製造方法を秘密にする方法です。しかし、もし他社が独自に同じものを開発し、先に特許を取ってしまったらどうなるでしょうか? 自社はずっと前から作っていたとしても、特許侵害で訴えられるリスクがあります。 これに対抗するには「先使用権(昔からやっていた証拠)」を確保しておく必要がありますが、証拠能力の維持は大変です。

  2. 特許を出願して公開する: 技術内容は公開されますが、独占権は保証されます。

私は後者を選びます。いつ来るかわからない競合におびえるより、権利を確定させて堂々と独占販売する方がビジネスとして健全だからです。

5. 「ファブレス」こそが最強の製造業

製造業において、原価管理は重要ですが、私は複雑な原価計算をしません。 なぜなら、工場を持たない「ファブレス経営」を実践しているからです。

外注先から「梱包まで完了した製品」を購入すれば、その仕入れ価格がそのまま原価になります。計算の手間も省けますし、工場という固定費を持つ必要もありません。

  • キーエンス、任天堂、Apple これらの高収益企業はすべて、自社工場を持たない(あるいは最小限の)ファブレス企業です。キーエンスは製造を委託していますが、極めて高い付加価値を誇ります。

これは何を意味するでしょうか? 「製造すること(手を動かすこと)」そのものよりも、「売れる商品を企画し、独占権を確立すること」にこそ、莫大な価値があるという証明です。

私は、この「仕組みを作ること」こそが、真の仕事だと考えています。