出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2022年11月18日
株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
ウィキペディアによれば、「オフグリッドとは、電気、ガス、水道など生活に必要なライフラインの一つ、または、それ以上を公共事業に依存せず、独立した方法で設計された建物の特徴やその生活様式を指す」とあります。今回、太陽電池を使った「オフグリッド住宅」の設計を行っているので、採算や安定性などを考えてみたいと思います。
オフグリッドには2種類あります。1つは自家発電で足りない電力を電力会社から買う方法、もう1つは完全に自家発電だけで必要な電力を賄う方法です。この2つについて考えてみます。
北陸の住宅事情としては土地に余裕があるため、住宅や車庫の屋根に太陽電池を設置することで必要な発電量は確保できると思います。完全に自家発電だけで電力を賄う方式で蓄電池容量を計算してみました。連続して太陽が出ない無日照日を5日として計算したところ、蓄電池容量が巨大になりました。蓄電池寿命を10年とすると、普通に電力会社から電力を買う方が安くなる計算です。今回の設計では、10年間で、設備費用が電力会社から電力を買う場合と同等 以下になるように設定します。
今度は無日照日を3日で計算してみました。蓄電池寿命を10年とすると、採算的には電力会社から電力を買うのと同等になりました。但し、4日以上連続して太陽が出ないと電源喪失になります。北陸の冬ではよくあることです。そこで妥協案を考えました。無日照日を3日として蓄電池残量が少なくなったときだけ電力会 社から電力を買い蓄電池を充電する方式です。1kWhあたり18円とすると、1日10時間充電に使っても180円です。 冬期間これが5回あったとしても900円です。これで巨大な蓄電池を4 割削減できます。この辺りが現実的な仕様ではないでしょうか。太平洋側では、この仕様で完全オフグリッドが可能となり、電力会社との契約は不要になります。また、災害時に停電しても通常の生活ができます。昔は太陽電池の価格が高価で、100Wあたり10万円程度していましたが、現在は国産の太陽電池でも1/4程度になっています。寿命や性能は分かりませんが、輸入品では1/10のものもあります。
北陸の冬は太陽が出ないので、風力発電機も効果的だと思います。冬の夜間風が強い日が多いので、1kW程度の発電機でも10時間で10kWhの充電が可能です。約1日分の電力量になります。
蓄電池は直流ですが、商用電源や太陽電池、風力発電など、電圧の違う色々な発電システムを融合させられるようになったのは、高効率のインバーターができたからです。太陽電池などは常に発電量が変化しますが、これを無駄なく蓄電池に充電できるのもインバーターのおかげです。昔は太陽電池電圧と蓄電池電圧を合わせてシステムを設計していましたが、インバーターのおかげで、これが自由に組み合わせられるようになったのです。
一戸建ての住宅ならエネルギーの自給自足は可能です。ZEH(ゼッチ:ゼロエネルギー住宅)の性能を備えた住宅との相性も良く、このような自家消費システムがこれから普及すると思われます。私がこのシステムの設計を始めた 理由は、温暖化が影響しています。 化石燃料を使わず、電気代も気にせず、夏季にエアコンを遠慮無く使い涼しく過ごしたいと思ったからです。
少し詳しく書いてみました。
北陸で「オフグリッド住宅」は実現できるか? 現実的な設計とコストの答え
1. オフグリッドとは何か?
ウィキペディアによれば、「オフグリッド」とは、電気・ガス・水道などのライフラインを公共事業に依存せず、自立したシステムで賄うライフスタイルや建物を指します。
現在、私は太陽電池を活用した「オフグリッド住宅」の設計に取り組んでいます。特に気候条件の厳しい北陸において、採算性や電力の安定供給をどう確保するか。今回はその設計プロセスでの試算を共有したいと思います。
2. 北陸の冬 vs バッテリー容量の壁
オフグリッドには大きく分けて2つのアプローチがあります。
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完全自立型: 電力会社と契約せず、100%自家発電で賄う。
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ハイブリッド型(部分自立): 基本は自家発電だが、足りない分は電力会社から買う。
北陸は敷地に余裕がある家が多いため、屋根やカーポートにパネルを設置すれば、年間の「発電総量」自体は確保できます。問題は「蓄電」です。
【試算A:完全にオフグリッドする場合】 北陸の冬を想定し、「5日間連続で太陽が出ない(無日照)」条件で計算しました。
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結果: 必要な蓄電池の容量が巨大になりすぎる。
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採算: 蓄電池の寿命を10年と仮定すると、設備投資額が「普通に電気を買う料金」を上回ってしまい、経済合理性がありません。
【試算B:無日照を3日と想定する場合】 条件を少し緩めて計算しました。
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結果: 10年間のコストは、電力会社から買うのと同等になりました。
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リスク: しかし、北陸の冬で「4日以上太陽が出ない」ことは珍しくありません。この設計では4日目に電源喪失(ブラックアウト)してしまいます。
3. 導き出した「現実的な妥協案」
そこで私が設計したのが、コストと安心を両立させる「ハイブリッド・オフグリッド」です。
基本設計は「無日照3日」で耐えられる蓄電池容量にします。その上で、「蓄電池残量が少なくなった緊急時だけ、電力会社から電気を買って充電する」という仕組みです。これなら巨大なバッテリー容量を約4割削減でき、コストも現実的になります。
コストへの影響は軽微です: 仮に電力が足りなくなり、電力会社から充電したとしても、コストは以下の通りです。
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電気代単価 18円/kWh と仮定
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1日10時間充電した場合 = 180円
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ひと冬に5回発生したとしても = 年間わずか900円
この仕様が、北陸における最も現実的な解ではないでしょうか。 逆に言えば、冬の晴天率が高い太平洋側であれば、このスペックで「完全オフグリッド(電力契約なし)」が可能になり、災害時でも普段通りの生活が送れるでしょう。
4. システムを支える技術の進化
このシステムが現実味を帯びてきた背景には、技術の進化があります。
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太陽電池の低価格化: かつては100Wあたり10万円したパネルも、現在は国産で1/4程度、輸入品なら1/10程度まで価格が下がっています。
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風力発電の活用: 北陸の冬は日照が少ない代わりに、夜間の風が強い傾向にあります。1kW程度の風力発電機でも、一晩で約10kWh(一般家庭の約1日分)を充電できるため、太陽光の弱点を補完できます。
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高性能インバーターの登場: これが最大のカギです。太陽光、風力、商用電源、蓄電池。それぞれ電圧や電流の特性が異なりますが、最新のインバーターがそれらを統合し、無駄なく制御してくれます。昔のようにパネルとバッテリーの電圧を厳密に合わせる必要がなくなり、自由なシステム設計が可能になりました。
5. 「我慢しないエコ」を目指して
一戸建て住宅におけるエネルギーの自給自足は、もはや夢物語ではなく、十分に可能です。断熱性能を高めたZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)との相性も抜群で、今後ますます普及していくでしょう。
私がこの設計にこだわる理由は、地球温暖化への配慮はもちろんですが、もっと個人的な思いもあります。 それは、「化石燃料を使わず、電気代も気にせず、夏の暑い日にエアコンを遠慮なく使って涼しく過ごしたい」。 そんな「我慢しない快適な生活」を、自給自足のエネルギーで実現したいと思っています。

