創造_売れる証拠

帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


 ここまで製品仕様を決める方法を説明してきました。しかし、製品を製造販売しても売れなければ仕事をしたことにはなりません。そこで、売れる証拠が必要になってきます。
 マーケティングとは、Wikipediaに書かれている内容を要約すると、”マーケティング活動は、購買行動に働きかける行為である。”になります。働きかけた後どうなったかが問題なのです。もし私がマーケティングに費用を支払うとすると要求する成果は、売れる証拠です。「これくらい売れると思う」は誰でも言えます。必要なのは証拠です。それにより投資するかどうか判断します。売れる証拠とは売れた数量や金額です。売る前に販売実績を要求するのは無理があると思われるでしょうが、責任者の立場ならそう言いたいでしょう。
 いろいろな不確定な要素がある中で投資に踏み切る際、できるだけ小さな額を投資し売れる証拠を見つけたいと思います。しかし、小さく始めていては趣味のような規模になってしまいます。そこで使う手は、小さく初めて確証を得たら短時間で規模を拡大していくことです。数年前リーンスタートアップという本が流行っていましたが、そんなことが書いてあったようです。20年ほど前に販売した紙製品は、ネット上で売れるかどうかテストし、売れたので一気に投資し量産体制を整えました。そして中国製などが参入する前に撤退しました。トータル3ヶ月の仕事でしたが投資額が30倍になりました。ここまでは、小さくローリスクで始めて確証を得たら一気に拡大する方法です。
 次に確実に売れる証拠を作ってから製造販売する方法を説明します。売れる証拠とは売れた証拠です。売れた証拠とはお客さんが代金を払ったということです。お客さんが代金を払ってから作れば良いのです。予約販売のような仕組みです。これをクラウドファンディングを使って実現すれば良いのです。お客さんはその商品を欲しいと思えばクレジットカード決済を済ませます。目標額の注文が入ったらプロジェクト成功となりお客さんのクレジットカードから代金が決済されます。そしてメーカーが商品を発送した後、代金がメーカーに振り込まれます。投資資金が十分にある大企業もこの仕組みを使っています。売れる証拠が欲しいのだと思います。能力や規模に関係なく売れるかどうかはやってみないと分からないのです。もし分かるという人がいたらその人はすでに神様扱いされているはずです。
 結論としては、石橋を安く早く叩いてサッと渡るか、注文をもらってから作るかのどちらかになります。魅力ある製品であればお客さんは数ヶ月待ってくれます。ちなみに私のクラウドファンディングの成績は2021年前半で4戦4勝です。トータルで5戦5勝の負け無しです。

少し詳しく書いてみました。

 

「売れる証拠」の作り方:投資リスクをゼロにする2つの販売戦略

 

ここまでは、製品の仕様を決める方法について説明してきました。 しかし、どれだけ優れた製品を製造販売しても、それが「売れなければ」仕事をしたことにはなりません。

そこで、製造という「投資」に踏み切る前に、どうしても必要になるものがあります。 それが、「売れる証拠」です。

 

「予測」は証拠ではない。必要なのは「実績」

 

よく「マーケティング」という言葉が使われます。Wikipediaによれば、これは「購買行動に働きかける行為」を指しますが、重要なのは「働きかけた後、どうなったか」という結果です。

もし私がマーケティング費用を支払う立場なら、「これくらい売れると思う」といった曖昧な”予測”は求めません。私が要求するのは、投資判断の根拠となる“売れる証拠”、すなわち「実際にどれだけ売れたか」という“実績”です。

「売る前に販売実績を要求するなんて無理がある」と思われるかもしれません。 しかし、自らの資金を投じる責任者の立場なら、誰でもそう考えるはずです。

では、どうすれば「製造投資」という大きなリスクを負う前に、「売れる証拠」を手に入れることができるのでしょうか。 不確定要素が多い中で、私が実践してきた方法は2つあります。


 

方法1:「小さく試し、確証を得たら一気に拡大する」(リーン・スタートアップ)

 

一つは、できるだけ小さな投資額でテスト販売を行い、「売れる」という確証(=証拠)を見つける方法です。

ただし、ここで「小さく始める」ことだけを意識しすぎると、いつまでも趣味の規模から抜け出せません。 この手法のキモは、「小さく始めて確証を得たら、”短時間で”規模を一気に拡大する」というスピード感にあります。数年前に流行した『リーン・スタートアップ』という本に書かれていた内容も、これに近いものです。

私の実例を挙げます。 20年ほど前、ある紙製品を企画した際、まずネット上でごく少量、「本当に売れるかどうか」のテスト販売を行いました。そこで「売れる」という確証を得た瞬間、私は一気に投資を実行し、量産体制を整えました。

そして、安価な中国製品などが参入して市場が飽和する前に、利益が出ている最高のタイミングで撤退しました。 この仕事はトータルでわずか3ヶ月でしたが、投資額の30倍のリターンを生み出しました。

これが「小さくローリスクで始めて、確証を得たら一気に拡大する」方法です。


 

方法2:「注文をもらってから作る」(クラウドファンディング)

 

次が、より確実な方法です。 それは、「確実に売れる証拠を作ってから、製造販売する」という手順を踏むことです。

ここで言う「売れる証拠」とは、すなわち「売れた証拠」です。 そして「売れた証拠」とは、「お客さんがすでにお金を払った」という事実です。

つまり、お客さんが代金を支払ってから、製品を作れば良いのです。 これは従来の「予約販売」の仕組みですが、これを現代のテクノロジーで最も効率的に実現できるツールが「クラウドファンディング(CF)」です。

CFの仕組みはこうです。

  1. メーカーが製品の魅力を提示します。

  2. 「欲しい」と思ったお客さんが、購入の意思を示し、クレジットカード決済を(予約)します。

  3. 目標額の注文が入ったら、プロジェクト成功となり、初めてお客さんのカードから代金が決済されます。

  4. メーカーは(この時点ではまだ存在しない)製品を製造し、お客さんに発送します。

  5. 発送完了後、CF会社からメーカーに代金が振り込まれます。

この仕組みの最大のメリットは、メーカーが製造投資のリスクを一切負わないことです。 「売れるかどうか」を心配する必要がありません。なぜなら、すでに売れている(注文と入金が確定している)からです。

この手法は、投資資金が十分にあるはずの大企業も活用しています。 彼らもまた、能力や規模に関係なく、「売れる証拠」が喉から手が出るほど欲しいのです。 結局のところ、「絶対に売れる」と事前にわかる人など存在しません。もし分かる人がいたら、その人はすでに神様扱いされているはずです。


 

結論:あなたは「叩いて渡る」か、「注文で作る」か

 

ビジネスで成功するための方法は、このどちらかです。

  1. 石橋を安く早く叩いて(小さくテストし)、安全を確かめてからサッと渡る(一気に拡大する)

  2. 「橋を作ってくれたら渡る」という注文(と代金)をもらってから、橋(製品)を作る

どちらの方法でも、製品そのものに魅力があれば、お客さんは完成まで数ヶ月待ってくれます。

ちなみに、私のクラウドファンディングの成績は、2021年前半だけで4戦4勝。トータルでは5戦5勝の負け無しです。これは、私が「売れる証拠」を得てからしか「仕事」をしないからです。