創造_商品の価値

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 一万円札を千円で売れば売れますよね。買った方が得をするからです。消費者が思う価値よりも安い価格で商品を販売すれば売れます。これを物やサービスで実現すれば良いのです。但し原価を200円とすれば粗利800円になります。これが商品企画です。このように、買わない理由を全て無くすのです。そうすれば売れるしかありません。
 例えば、買い物に使うエコバッグは1回使うと買い物袋5円分が節約できます。1年に100回買い物に行くと500円の節約になります。2年使うと千円の節約になります。2年で千円節約するためにいくら払いますか? 私なら、いつも持ち歩く手間を考えると100~200円です。このように買った人がいくら得をするのかを計算してみるとその商品の強さが分かります。先にここを計算しておくと無駄な商品企画をしなくてすみます。
 メーカーとは、価値が大きい物を開発する、買わない理由を全て無くす、買うとすぐ消費者が得をする、というふうに買うと満足する商品を開発するのが仕事です。
 そのためにはあらゆる事を考えなければなりません。需要があるのか、消費者が価値を理解できるのか、強い特許で他者を排除できるのか、発明を技術的に実現できるのか、自社が持つ機能や性能で売上までたどり着けるのか、など非常に多くの項目を同時に満足さえなければなりません。このように多くの項目を満足させる必要がある場合、自由に好きなものを作れないのです。これから開発する商品の条件を設定すると、これしかないという仕様に落ち着きます。逆にいえば計算すれば良いので簡単です。
 一番基本になる条件は、【いつまでにいくらの利益が必要なのか】になります。新商品は、この条件を満たす必要があります。他の条件を設定すると具体的な商品が算出できます。メーカーには、この能力が必要になります。状況が変化すれば、再度計算し直せば良いのです。商品企画で悩んでいるようでは常に売れる商品を開発することは難しいと思います。思いつきや閃きだけでは成功率は上がらないと思います。偶然成功することもありますが、商品企画をコントロールし無理せず自社が販売できる商品を算出し売れた量により計算式を修正すればさらに精度が上がると思います。
 よく失敗する例として、自分が好きな物を作ってしまう場合です。これには計算による根拠が無いのです。単にエコバッグが目に付いたから、いくらの価値を持つか計算しないで商品化すると低価格帯で勝負することになります。
 以上は物理的な価値の話です。持つことに意味があるブランド品などはこれとは全く違う価値基準になります。物理的価値より遙かに高い価値を生み出したのですから。そのブランドを育てたメーカー経営者に敬意を表したいと思います。
 私から見たメーカーのイメージはこんな感じです。製造業とは全く違うことが分かると思います。物を作って販売しているからメーカーと製造業は混同されやすいのですが、まったく違う業種です。利益を生む仕組みが違うのです。製造業の延長線上にメーカーがあるのではないのです。

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