株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
何のために企業理念があるのでしょうか。それは長期的に利益を生むためです。“企業理念”と“長期的な利益”は同じ意味です。
長期間営業していると、 災害や感染症、 戦争 などいろいろな環境変化があります。目先の損 得で右往左往していては、 常に誰かの後ろを歩 く事になります。 株式投資にしても同じだと思 います。 自分の考えを持っているから結果的に 他人と違った行動になり、 そこが利益を生むの です。 自社の目的に向かって進めば良いのです。 企業理念が “金儲け” だと目的が無いので 右往左往し気がついたら袋小路に入っていたり します。 そんなときは、 創業者の気持ちになっ て何をすべきかを考えてみる事をお勧めしま す。 創業時と現在では置かれた環境が変化した り技術が進歩したりしていて、 創業者の考えを 笑ってしまうかもしれませんが、 創業者は何を 考えてこの企業を興したのか、 またそのときど んな気持ちだったのかを想像してみるのも良い のではないでしょうか。 創業の目的が一貫して いても事業形態は時代に合わせて変化している と思いますし、 扱う商品も変わっているかもし れません。
創業の目的を達成した場合や創業の目的が達 成できないと分かったときは、会社を清算すれば良いと思います。私は1社清算したことがあ ります。資本金と同じ額の現金が残りました。資金が尽きて清算したのではなく、目的が達成できないと分かったから清算したのです。目的 を達成して清算した場合は、株主に多くの現金を渡す事がきるので素晴らしいと思います。以前、あるカレーチェーン店の創業者と話をした ことがあります。その方は50代で目的を達成し会社が大きくなったので、社長を引退して株もすべて手放し、プロの経営者に任せました。こ のように社長が交代し、新たな目標を設定して再出発する例もあります。その創業者は、起業前に元気づけられた多くの音楽家たちへ恩返しをするため、名古屋市内にコンサートホールを建て、またファンドもつくり音楽家の応援をしています。創業者も会社もそれぞれ目的に向かって進んでいます。
会社は、株式会社を設立した時点で創業者個人のものではなく株主様のものです。もし自分だけのものとして営業したいのであれば、売上 に関係なく法人にせず、個人事業で営業することをお勧めします。そうすれば、株主間で揉めることを避けられます。また、法人と個人事業 の選択方法は税額で判断せず、このように事業の目的から決めるのが正解だと思います。
当社の過去の株主には、ゼネコンの元専務がいました。その方は10代の頃、私の祖父に進路の相談に行き、大阪陸軍幼年学校へ進学しまし た。卒業前に終戦になり小さな建設会社に就職し、創業社長と一緒に働き年商400億円にまで育てました。会うたびにそのときの話をたくさん聞きました。年商5000万円で負債10億円の子会社を任されたこともあったそうで、雇われ社長でも保証人になる必要があり緊張したとのことです。しかし、数年で無借金にしたそうです。その話などはとても参考になりました。本人はもうこの世にはいませんが、私が困ったとき、あの人なら多分こう言うだろうなと思うことがたくさんあります。そんな感じで、創業者の気持ちになって考えてみると迷いが消えるかもしれません。
少し詳しく書いてみました。
あなたの会社の「理念」は何か? 長期的な利益を生むための、不変の羅針盤
はじめに:「企業理念」と「長期的な利益」は同じ意味である
「何のために企業理念は存在するのでしょうか?」
この問いに、私は「長期的な利益を生むためです」と即答します。そして、「企業理念」と「長期的な利益」は、本質的に同じ意味を持つとさえ考えています。
長年事業を続けていれば、災害、感染症、戦争など、予測不可能な環境変化に必ず見舞われます。その時、目先の損得勘定だけで右往左往していては、常に誰かの後追いをすることになり、持続的な成長は望めません。
これは株式投資にも通じる原理です。確固たる自分の投資哲学(=理念)を持つからこそ、市場の喧騒に惑わされず、結果として他人とは異なる行動を取ることができる。そこにこそ、利益が生まれるのです。
企業も同じです。自社が掲げた目的に向かって、まっすぐに進めば良いのです。もし、あなたの会社の理念が単なる「金儲け」だとしたら、それは明確な目的がないのと同じです。荒波の中で羅針盤を失い、気づけば袋小路に迷い込んでいるでしょう。
道に迷ったなら、「創業者」に還れ
もし、自社の進むべき道に迷いが生じたなら、一度立ち止まり、「創業者の気持ちになってみる」ことを強くお勧めします。
創業当時と今とでは、技術も社会環境も大きく異なります。現代の視点から見れば、創業者の考えは古臭く、笑ってしまうようなものかもしれません。しかし、重要なのはそこではありません。
「創業者は、何を成し遂げるために、どんな想いでこの事業を興したのか?」
その根源的な目的に想いを馳せるのです。扱う商品や事業の形態は時代と共に変わっても、その核となる目的は一貫しているはずです。
私がかつてお世話になった、あるゼネコンの元専務がいました。彼は若き日に私の祖父に導かれ、小さな建設会社に入社後、創業社長と共に会社を年商400億円にまで育て上げた人物です。彼は生前、数々の修羅場を乗り越えた経験を語ってくれました。私が経営で困難に直面したとき、今でも「あの人なら、きっとこう言うだろうな」と考えることがあります。その思考が、私の迷いを消し、進むべき道を照らしてくれるのです。
「目的の終わり」が、「会社の終わり」とは限らない
企業理念、すなわち「創業の目的」には、いつか終わりが来ることもあります。
目的を達成した場合、あるいはこれ以上は達成不可能だと判断した場合、私は潔く「会社を清算する」という選択肢もあって良いと考えています。私自身、過去に1社、資金が尽きたからではなく「目的が達成できない」と判断したために会社を清算した経験があります。
目的を達成して会社を清算し、残った資産を株主に分配できるなら、それは経営者として非常に素晴らしい幕引きではないでしょうか。
また、会社の形を変えて存続させる道もあります。以前お話ししたあるカレーチェーン店の創業者は、50代で創業の目的を達成すると、社長を引退。株式も全て手放し、会社をプロの経営者に託しました。会社は新たな目標を掲げて再出発し、創業者自身は、起業前に心の支えとなった音楽家たちへ恩返しをするため、私財を投じてコンサートホールを建設するという、新たな人生の目的に向かって進んでいます。創業者も会社も、それぞれが次のステージへ進む。これもまた、理想的な形です。
誰のための会社か?事業形態は「目的」で選ぶ
ここで改めて問うべきは、「会社は誰のものか?」ということです。 株式会社を設立した時点で、その会社は創業者個人のものではなく、「株主様のもの」となります。もし、事業を自分だけの采配で進めたいのであれば、売上規模にかかわらず、法人化せずに個人事業として続けるべきです。そうすれば、株主との意見対立を避けることができます。
法人か、個人事業か。この重要な選択を、目先の税額だけで判断してはいけません。自らの事業の「目的」と「誰のためにやるのか」という原点から決めることこそが、正しい選択だと私は考えます。
