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創造_基礎研究

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、基礎研究の重要性について話したいと思います。
 そろそろ暑くなってきたので、冷やす話からしましょう。物を冷やすには4つの方法があります。放射冷却、電子冷却、気化熱を奪う、化学的に冷やすの4種類です。
 放射冷却とは、雲が無いときに地表から宇宙空間に赤外線を放射し冷える現象です。電子冷却とは、ペルチェ素子などを使い電流を流すと、発熱する部分と冷える部分ができる現象です。気化熱を奪う方法は、水などの液体が蒸発すると、その蒸発した部分が冷える現象です。化学的に冷やす方法は、氷に塩をかけると冷えるなどの現象です。
 私は現在、放射冷却と気化熱を奪う方法を利用した商品を販売しています。原理が単純なので特許など取れないと思うかもしれませんが、長期間の研究により原理に近いところから権利化することができました。単純ということは強い権利ということです。
 単純な権利ですから、他人が同じ目的で同じ事を考えた場合、同じ構造になるということです。実際に、他社製品が私の保有する特許の権利範囲に入っているというものがあったので、その製品の販売を中止してもらうことになりました。その後、別の他社へその特許を貸すことになりました。誰が考えてもたどり着くところは最も単純な方法です。これが強い権利です。他社を排除し自社で独占できるということです。独占できないと利益は出ません。
 では、なぜそんな都合の良い権利を簡単に取れるのでしょうか。実は、簡単ではないのです。その考えにたどり着くまでに、長い時間を基礎研究に使っているのです。他人から見れば、私は遊んでいるように見えるかもしれませんが、考えがあって研究しているのです。投資すると必ず成功と失敗があり、実らない研究もたくさんあります。しかし、投資に成功しないと利益は出ません。
 気化熱を奪う方法で繊維の特許を複数持っています。製品が売れだすまでに8年かかりました。その間、仕様、用途、販売方法など試行錯誤していました。特許はまだ10年残っているので、これから回収します。すぐ売れないからといって特許を捨ててはいけません。売る自信があるのなら売れるまで色々な条件を調整し、売れる状態にまで持っていけばよいのです。
 放射冷却の研究は、1993年から行っています。研究開始から30年が経過しましたが、今年2023年にやっとサンプルを作ることができました。開発費、用途、仕様など色々な条件が揃うまで時間がかかりました。この特許の期間はあと15年ありますので、今年から事業化しました。
 ネット上のツールを使って簡単に売上をつくっているように見えるかもしれませんが、膨大な開発費をかけているのです。最終段階の世に出すところだけ見せているので、簡単に強い取得して製品をつくり、売上をあげているように見えるのかもしれませんが、これは、長い長い基礎研究があるからできるのです。それも民間の零細企業がやっているので、当然それにともなう大きい犠牲があります。その犠牲と成功したときの喜びを天秤にかけて、成功したときの喜びが勝った人だけが、自社ブランドの自社製品をもつメーカーになれるのではないでしょうか。 

創造_物づくりの価値

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 物づくりに価値はありません。価値があるのは、その物を作る権利、販売する権利です。誰でも作れる物は安いところが受注します。設計製造の過程が複雑で自社しか作れないと思っている方もいるかもしれませんが、自社が作れる物は他者も作れるのです。製造販売を独占したい物は技術的に独占するのではなく法的に独占する方が安価で確実です。そうする事で、自社で値段を付けることができるようになります。高い技術力によって作ったとしても自社が作ることができれば他者も作ることがでるのです。
 先日、ある大企業の商品開発部の方と話をしました。「材料は市販品です」と説明したところ不思議な顔をされました。どこにでもある材料を買ってきて組み合わせただけで、特許登録になり製造販売を行う権利が生まれたことに驚いたようです。新しい物をつくってはじめて権利化できると思っていたようです。
 特許を出願すると決めた時点で、その仕事は技術屋の仕事ではなく法律家の仕事になります。物を作らないと発明や開発を行った事にならないと思っていたようです。大企業でもそんな認識の会社があります。
 その特許のおかげで類似品は出現せず独占的に販売できています。このため下請けの製造業者から仕入れた完成品に自社の利益を乗せて販売できるのです。そこが付加価値になります。
”材料費+工賃”には付加価値は乗っておらず、その価格はメーカーとしての原価です。
 最近販売している製品は2つの繊維生地をカットして重ねて縫った物です。2つの生地は市販品です。その組み合わせによる効果が特許登録になりました。特許は技術的に複雑な物を作る必要はないのです。過去に類似品が無く、進歩性、新規性があれば登録されるのです。作り方を秘密にして類似品の出現を防いでいる企業もあります。その場合、他者が同じ内容の特許を取得すると自社はその製造をやめなければなりません。それを防ぐた
めには、いつからこの製品を製造販売していたのかが分かる証拠を作っておく必要があります。先使用権の確保です。後になっていくら「昔からやっていた」と言っても証拠がなければ反論できません。独自技術を利益に変えるには、ノウハウとして秘密情報管理を確実に行うか、特許出願し内容を公開しても独占する方を選ぶか、決めなければなりません。
 製造業では原価を正確に把握する必要があります。私の場合、外注先から梱包が完了した完成品を購入しているので仕入れ価格が、ほぼ原価になります。これにより原価計算を省くことができます。原価を正確に把握する場合、原価計算を勉強する方がいます。私の場合は、原価計算をしなくてもよい方法を考えます。また、必要なものだけを持つようにしています。そうすると工場は不要になります。代表的なファブレス企業としてAppleや任天堂、キーエンスなどがあります。キーエンスは同業者に発注しても付加価値の高い製品を販売しています。ということは製造に大きな価値はあるのでしょうか。良い商品を考え独占権を確立させた事に大きな価値があります。私はこれを仕事といいます。

創造_鉾としての特許

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

ほとんどの方は、特許をもつ理由は製品を真似されないためと考えているでしょう。そして、特許は保険だと思っていると思います。ここからは、製品を製造販売せずに特許を売上にする方法を説明します。

 まず強い特許をもつ必要があります。自分で出願しても購入しても構いませんが、まず自社で特許権を保有します。ここからが仕事になります。特許が登録になると利益に変えます。方法は、販売するか貸すかのどちらかです。貸すことができれば不動産収入のようになります。不動産と違うのは、独占契約を除いて、1つの特許を複数の企業に貸せることです。借りた企業は、時間と研究開発費と人材を投入しなくても商品がもてます。種や苗を買う感じです。その後、事業化して利益に変えます。特許を販売することも貸すこともできない場合は、研究開発の投資に失敗したということです。敗者復活戦として、メーカーになって自社で製品を販売する方法があります。販売実績ができれば、再度、特許権として販売したり貸したりできる可能性がでてきます。販売実績があった方が、特許を販売したり貸したりできる確率が高くなり、あるいは、事業譲渡の可能性もでてきます。私は、全てのパターンを経験しました。

 私は、発明家という職業柄、アイディアを出すことが仕事ですが、アイディアごとに毎回全く違う業界でメーカーをやっていては、効率が悪くてたまりません。そこで、通常は知財部がある大企業へ提案書を送り、販売したり貸したりします。しかし、売れるときと売れないときの売上の差が大きいため、安定的にアイディアを売る方法を考えました。そして、アイディアを買う会社を探して見つけたのが、アメリカの企業です。すぐに売買契約を締結し、アイディアを販売する事ができました。その企業は、“パテント・トロール” という業種と思われています。旧の呼び名は、“特許マフィア” です。世界中からアイディアを買い取るための資金を調達し、そして買い取ったアイディアを事業化したりメーカーに貸したりして利益に変えています。
 例えば、日本企業がその特許に近い製品を販売していたとします。アメリカで特許訴訟を起こし、ライセンス契約に持ち込むのが通常のパターンです。権利に抵触していなければ、最後まで続けて裁判に勝てば良いのですが、裁判費用の見積りが10億円だとすると、5億円で和解案が提示されます。悩むところですが、和解やライセンス契約をする企業が多いのです。その企業への出資者には、世界的な大手企業も入っていると言われています。

 このように、特許というのは保険ではなく武器なのです。大学も研究成果を企業へ販売したり貸したりして利益を得ています。私も特許を販売したり貸したりしています。ですから、“パテント・トロール” だけを区別する方法が無いのです。どの企業も特許法の中で営業しているにすぎません。

創造_独占する方法

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

 ここまで製品仕様を決める方法を説明してきました。しかし、製品を製造販売しても独占しなくては利益になりません。他社が同じような物を安く販売するからです。
 1995年、起業直後にマイコン制御で動作する製品のメーカーをやっていました。外注に払った設計費の総額は1千万円です。製品単価は40万円ほどでした。初年度1人で1億円以上売り上げました。ユーザーサポートも大変でしたが何とかこなすことができました。
 インターネットが使えるようになり紙製品を販売したことがあります。3ヶ月間で650万円の利益が出ました。この二つを比べてみたとき気づいたことがあります。何を売っても、もらった1万円札は同じだということです。ならば開発費が安い物の方が効率が良いのです。しかし、開発費が安い物は単純な物が多く、すぐに真似されます。そこで特許が必要になります。特許登録までに数十万円かかったとしても開発費に1千万円より遙かに安いのです。
 まず特許を取るためには、これまでにどのような出願があるのか先行技術を調査する必要があります。JplatPatというサイトで検索可能です。ここでの調査が成功と失敗を分けます。私は、現在先行技術調査に慣れたので特許登録率は100%です。調査し出願しているので当たり前です。通常特許の権利は、過去にあった技術と今回開発した技術の境界まで取得できるものと思われています。しかし、出願明細書に正直にそのような権利範囲を書いても審査官は、拒絶する理由を何か探さなければいけないのです。そこで境界を境に権利範囲を主張しても審査官に押されて譲歩する必要が出てきます。そして本来取れるべき権利範囲から一歩引き下がった権利範囲が特許になってしまいます。この対策としては、主張する権利範囲を境界よりも少し押し気味に書くことです。そうすると審査官は、「ここ出過ぎ」とそこを理由に拒絶理由通知を送ってきます。そうなればストーリー通りで「・・は審査官殿の仰るとおりです。・・・」というふうに訂正し当初目標の権利範囲の特許を取得します。このような審査官とのやりとりは出願時点で想定しておきます。ですから出願明細には審査官とのやりとりの台本を盛り込むのです。脚本家の才能も必要なのです。特許のプロからは「また審査官を騙したのか?」とよく言われます。
 製品が完成し特許も登録になれば仕事は完了です。あとは作って売る作業に入ります。作って売ることは仕事ではなく作業です。他社を排除し独占状態で自社製品を売るブルーオーシャンになります。私は、ブルーオーシャンしか経験がありません。そしてやめる時期も自分で決めます。始まったものは必ず終わるのです。勝って終わる決断力が必要です。


訴状を書き始めました。

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訴状のひな形

訴状を書き始めました。これは雛形です。

これから内容を書いていきます。通常、弁理士と弁護士に頼むことは自分でやっています。

今回は東京の裁判所になります。新幹線があるので日帰りが楽になりました。

状況は全て把握したので進みてみます。