もし、あなたが毎朝顔を合わせるその鏡が、ある瞬間、あなたの姿を映すのをやめ、内側から色鮮やかな映像を映し出し始めたとしたら——。
今回は、そんなSF映画のような光景を現実にするために、私が過去に開発した、少し不思議で、そしてとても美しい発明品についてお話ししたいと思います。
それは「鏡」であり、「スクリーン」でもある
一見すると、それはごく普通の美しいガラス製の鏡です。壁にかければ、あなたの姿を、部屋の景色を、ありのままに映し返します。
しかし、この鏡の本当の姿は、「ガラス製の透過型プロジェクタースクリーン」。その真価は、鏡の裏側からプロジェクターの光を当てた瞬間に明らかになります。
光が鏡の内部を透過し、その表面に到達すると、魔法が起こります。先ほどまであなたの姿を映していたはずの鏡の中に、突如として映像がくっきりと浮かび上がるのです。まるで、鏡の向こう側にもう一つの世界が広がっているかのような、幻想的な光景が目の前に現れます。
星屑のように「キラキラ」と輝く映像美
このスクリーンが映し出す映像は、ただ鮮明なだけではありません。私が最も心を奪われたのは、その独特の「輝き」でした。
ガラス内部に練り込まれた特殊な粒子が光を受けて乱反射するのでしょうか。映像全体が、まるで星屑を一面に散りばめたかのように、繊細に、そして上品にキラキラと輝くのです。夜空の映像を映せば、そこには本物の星々が瞬いているかのような奥行きが生まれ、水中の映像を流せば、光の粒が水泡のようにきらめきながら立ち上っていくように見えます。
その美しさは、通常の液晶ディスプレイやプロジェクタースクリーンでは決して味わうことのできない、アナログな素材感とデジタルな映像が奇跡的に融合した、唯一無二のものでした。
用途は、あえて探さない
「この素晴らしい技術、どんな用途を考えているのですか?」
もしそう聞かれたら、私はこう答えるしかありません。 「いいえ、具体的な用途は、何も考えていません」と。
この発明は、「何か問題を解決したい」「こういうビジネスにしたい」という目的から生まれたものではありませんでした。ただ純粋に、「鏡の中から映像が浮かび上がったら、どれほど美しいだろう」という好奇心と探求心だけが、開発の原動力だったのです。
商業施設のデジタルサイネージ、美術館のインタラクティブアート、未来のスマートホームのインターフェース…。もちろん、可能性を挙げればきりがありません。
しかし、私はあえてその答えを探さないことにしました。なぜなら、この「魔法の鏡」が何を映し出すべきなのか、その答えは、これを目にした人の想像力の中にこそあると信じているからです。
技術は時として、明確な目的を持つよりも先に、純粋な「美」や「驚き」としてこの世に生まれることがあります。この鏡は、私にとってまさにそんな存在の一つ。今もどこかで、見る人の心を映し、静かに輝いているのかもしれません。
