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創造_アイディアの価値証明

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出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2025年5月23日


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 アイディアの価値はどのように決まるのか
 アイディアには価値があります。しかし、その価値がいくらなのかを客観的に証明することは簡単ではありません。では、アイディアの価値はどのようにして決まるのでしょうか。その答えはシンプルで、「売り手と買い手が合意した金額」によって決まります。つまり、売れた価格がアイディアの価値になります。そのアイディアから生まれる利益はまた別の話になります。

では、その価値を認めてもらい、実際に売買に至るまでにはどのような手順になるのでしょうか。

<アイディアの価値を証明するまでの手順>
以下が、私が実践したおおまかな手順です。

① アイディアを自分のものにする
② 売上の証拠をつくる
③ 売上の本質を明確にする
④ 買い手候補に権利を提示する
⑤ 条件の良い相手に販売する
⑥ アイディアの価値確定

それぞれについて詳しく説明します。

② アイディアを自分のものにする
 最初に、他者に真似されないようにアイディアを法的に「自分のもの」にする必要があります。その方法としてもっとも安価で確実なのが、特許の取得です。

ノウハウとして社外秘にする方法もありますが、それでは他人が同じことを思いついた場合に保護できませんし販売の手順が難しくなります。

② 売上の証拠をつくる
 次に、売上の証拠をつくることです。そのためには、製品やサービスを設計・製造・販売する必要があります。この段階で初めて、アイディアが単なる思いつきではなく、事業として成り立つものであると証明できます。
 当然ですが、製品化や販売には現金の投資が必要です。理想を言えば、特許出願直後に高値で売却できればよいのですが、現実はそう簡単ではありません。仮に1千万円で特許が売れたとしても、その開発に1千万円以上かかっていては利益が出ません。

③ 売上の本質を明確にする
 売上があることは重要ですが、それが何によって実現されているのかを示すことも重要です。たとえば、特許があるから売れていると考えるのは一見正しく思えますが、実際には製造ノウハウや販売力による場合もあります。
 つまり、その事業が他者でも再現可能なのか、それとも権利やノウハウを持つ自分だけが実行できるのか、を明確にする必要があります。買い手の視点で見れば、「その売上の源泉がどこにあるのか」が見極めのポイントになります。

④ 買い手候補に権利を提示する
 次に、価値を明確にした権利や事業の内容を買い手候補に見せることです。ここから価格などの条件交渉が始まります。
 これまでは専門の仲介業者を通じて交渉するのが一般的でしたが、最近ではインターネット上でマッチングを行う仕組みも数多く登場しており、売り手が直接買い手候補にアプローチすることも可能になりました。

⑤ 条件の良い相手に販売する
 複数の買い手候補が現れた場合、それぞれが提示した条件を比較し、最も良い条件を提示した相手に販売します。この段階で、売買が成立し、アイディアの「市場価値」が確定します。

⑥ アイディアの価値の確定
 このようにして成立した売買価格こそが、客観的に見たときのそのアイディアの価値になります。
 ただし、アイディアの価値は扱う人の能力や環境によって大きく変動します。そのため、会計上のように固定的な算定はできません。最終的には、「売れた金額=その時点での価値」と考えるのが現実的です。