ゴムひもの天才だった叔父と、東急ハンズへの売り込み

■ 伸縮する不思議な「面ファスナー」

まず、このノートパソコンのカバーを見てください。 通常はファスナー付きの袋を使いますが、これは私の叔父が開発した特殊な素材で、くるっと巻くだけで保護できます。

使っているのは「伸縮する面ファスナー」です。 (※「マジックテープ」と呼びたいところですが、あれはクラレ社の商標です。一般名称よりも商標の方が有名になってしまいましたね)

この素材、ただ者ではありません。 約1.8倍に伸びる上に、全面がくっつくのです。そのため、大きさが変化するものや、常に締め付けておきたい用途に最適です。 試作したPCカバーは販売には至りませんでしたが、アタッシュケースに入れても傷がつかず、非常に便利でした。

■ 「寅さん」のような売り込み

なぜ、この素材の話をするかというと、開発者である叔父が亡くなったからです。66歳でした。彼はゴムひもの天才でしたが、「物はいいが、なかなか売れない」と嘆いていました。 そこで私が、消費者に届けるルートを作ることにしたのです。

「パッケージを作らずに売るにはどうすればいいか?」 考えた末、私は「生地の切り売りコーナー」がある東急ハンズ池袋店へ向かいました。ここなら、マジックテープなどと同じように置いてくれるかもしれません。

店員さんに「あのー、ゴムひもなんですけど見てもらえませんか?」と声をかけました。 鞄にゴムひもを詰めて売り歩く姿は、まるで『男はつらいよ』の寅さんです。

■ 売り場でのヒット、そして問屋へ

この飛び込み営業が功を奏し、取引が始まりました。 最初は切り売りでしたが、次に2.5cm幅のものを50cmにカットしたパッケージ商品を投入。横浜店の担当者が気に入ってくれたこともあり、名古屋店、池袋店と順調に売れていきました。

そうこうしているうちに、問屋さんが取り扱いを始めました。 問屋というのは、売れそうだから用途を開発するのではなく、「他で売れているから扱う」ものです。単純な「作業」を「仕事」だと思っている節があり、少し複雑な心境ですが、それだけ商品が認められたということでしょう。

■ 私が考えた活用アイデア

この素材は本当に便利です。いくつか用途を挙げておきます。

  • トラックの荷台: 塩ビパイプなどの束ねる時に。崩れても緩まないので安全です。

  • 工事現場: バンセン(針金)の代用として仮設固定に。

  • 自転車・農作業: ズボンの裾バンドとして。特に雨合羽の裾を留めると巻き込み防止になり安全です。

  • スキー板: 伸縮性があるので、板同士が離れず、エッジで指を挟む事故も防げます。寒い中イライラせずに済みます。

  • その他: ケーブル整理、タイヤチェーンの収納、スポーツ時のヘアバンド(汗止め)など。

叔父が遺したこの技術、もっと多くの人に知ってもらえればと思います。