物理的な動線管理とWebサイトの完全分離
1. アイデアを守ることは、事業の命を守ること
メーカーとして新しいアイデアから生まれた商品を世に出すとき、最も恐れるのは「アイデアを盗まれること」や「事業を真似されること」です。
私自身、6年間ネット直販メーカーを運営する中で、幸いにもアイデアを盗まれたり、悪質な営業妨害を受けたりすることなく、平和に事業を続けることができました。もちろん、通常の市場競争での戦いは日々ありますが、それ以外のストレスはありませんでした。
私が実践したアイデアを守る方法は、大きく分けて二つあります。
- 法的に守る:(特許、意匠、商標、不正競争防止法など)
- 物理的に守る:私が独自に実践した情報遮断戦略
今回は、特にニッチなメーカーや個人事業主が参考になる、二つ目の「物理的な情報遮断戦略」についてご紹介します。
2. 工場を知られないための「物理的な情報遮断」
プロジェクタースクリーンメーカーとして事業を始めた際、ネット直販で求められる臨機応変な対応のため、自社製造の作業場所を確保する必要がありました。
しかし、この製造拠点こそが、アイデアとノウハウの詰まった「心臓部」です。
私が実践したのは、工場の場所を徹底的に隠すための「動線管理」です。
- 拠点の分散と匿名化: 事務所は石川県庁のすぐ横という公的なビルに置く一方、工場はそこから20kmほど離れた場所(元繊維工場)を借り上げました。
- 物流の集中: 工場に出入りする運送会社は、原則1社のみに限定。
- 仕入れルートの分離:
- 外部納入の場合: 仕入れ先には本社宛に荷物を送ってもらい、一旦本社で受け取ります。その後、指定の運送会社を使って工場へ転送します。
- 自社便納入の場合: 仕入れ先から本社へ届けてもらい、本社でホンダ・ステップワゴン(後部座席を取り払った運搬車仕様)に積み替え、自社便で工場へ運び込みました。
これにより、納入業者や仕入れ先の誰もが、製造拠点の正確な場所を知ることはありませんでした。
3. 事業の核心を知られないための「Webの情報遮断」
次に重要だったのが、インターネット上での情報の分離です。
ネット直販は売り上げの柱ですが、取引先や近所の人など、お客さんではない人にまで事業の核心を知られる必要はありません。
- ドメインの完全分離: 名刺に記載している「会社のホームページ」とは、別のドメインでネットショップを開設しました。
- 相互リンクの禁止:
- 会社のホームページからネットショップへリンクしない。
- ネットショップからも会社のホームページへリンクしない。
名刺交換をした取引先が会社のホームページをチェックしても、そこにネットショップの存在を示す情報はありません。これにより、売り上げの大部分を占める直販事業を、水面下で静かに育てることができました。
4. 法的、物理的、そしてネットの情報管理
事業を長く、平和に続けるためには、特許などの「法的保護」に加え、この経験から「物理的な情報遮断」「ネットの情報管理」の3つの分野での徹底した情報コントロールが必要だと確信しています。
おかげさまで、6年間ストレスなく事業を続け、現在そのネットショップは静岡県の会社に引き継がれ、今も元気に運営されています。あなたのアイデアを守るヒントになれば幸いです。
