事業が“一人歩き”を始める瞬間:第三者の声が持つ、本当の力

【2014年4月23日の記録】

本日、私が開発を進めている新しいスポーツウェアのプロジェクトに関して、一つの重要な進展がありました。取引先である繊維会社から、「この件について、営業部門も交えて本格的に検討する」という、心強い連絡が入ったのです。

一見すると、これは社内会議の決定に過ぎないかもしれません。しかし、私にとってこの一報は、プロジェクトが次のステージへと移行する、確かな兆しを意味していました。

 

なぜ、この一報が重要なのか?

 

その理由は、この会社が最終製品を作る「アパレルメーカー」ではなく、素材を供給する「繊維会社」であるという点にあります。彼らが自社でウェアを製造・販売することはありません。彼らの役割は、優れた素材を開発し、それを世界中のアパレルメーカーに提案することです。

そして、今回の会議に「営業部門も参加する」という事実。これこそが、決定的に重要なポイントです。

これまで、このプロジェクトは私と先方の開発部門との間で、技術的な可能性を探る「点」のコミュニケーションが中心でした。しかし、営業部門が参加するということは、この話が単なる技術検討の段階を越え、「この素材(技術)を、どの顧客(アパレルメーカー)に、どう提案していくか」という、より具体的な販売戦略のフェーズへと移行しつつあることを意味します。

つまり、私のアイデアが、彼らのビジネス戦略の中に組み込まれ始めたのです。

 

最強の宣伝とは「第三者の口コミ」である

 

私自身が開発者として、このスポーツウェアの革新性をいくら熱心に語っても、それはどうしても「手前味噌」に聞こえてしまいます。そこには、売り手としてのバイアスが常につきまといます。

しかし、業界で信頼の厚い繊維会社の営業担当者が、自らの顧客であるアパレルメーカーに対して、「今、こんな面白い開発が進んでいるんですよ」と語ってくれるとしたらどうでしょうか。

その言葉には、私自身の宣伝とは比較にならないほどの「客観性」と「信用度」が宿ります。それはもはや広告ではなく、専門家による「価値の証明」に他なりません。

今回の会議は、その小さな、しかし確実な第一歩です。ここから生まれた熱が、営業担当者を通じて外部の企業へと静かに伝わっていく。開発者である私の知らないところで、私のプロジェクトに関する「噂」が、良質な口コミとして自然発生的に広がっていく。

事業が自らの足で歩き始め、その輪が徐々に広がっていく。そんな理想的な展開を予感させる、静かな、しかし確かな手応えを感じた一日でした。

 

 

 

shlomo