今日は、道路工事で使う仮設信号機のお話です。
下記が私が開発した仮設信号機です。
他のメーカーの物との違いを説明したいと思います。
従来の仮設信号機は、あっちとこっちの信号機を信号線でつないでコントローラーが制御していました。
信号機2台とコントローラー1台がセットで動作していました。
これを開発するきっかけからお話しします。
起業後、製品を持っていない、販路がない、人脈がない、お金がない、住宅ローンは1千万円ある、体力はあるという状態でした。
そこで、提案書を作って飛び込み営業をしてみました。
毎日、テーマを決めてその業界で営業している会社へ提案書を持っていくのです。商品企画の提案書です。
採用されたら一緒に仕事をしようと思ったのです。
車にタウンページと携帯電話を積んで手当たり次第に走りました。
多い日は1日一般道を300km走りました。
6ヶ月目にやっとあるゼネコンに「あんた線の無い信号機作れるか?」と言われました。
「はいできます。」と返事をして信号機メーカーとしてスタートすることになりました。
そして開発費の一部を小切手で先にもらいました。
そのとき自宅にあったのは1千万円の住宅ローンと現金が7万円でした。
12月27日に150万円の小切手をもらって帰ってきました。
うれしかったな~。
年明けから設計がスタートし4月から出荷が始まりました。
その年、1億円売りました。
しかし、大変でした。
全国のユーザーサポートに走り回らなければならず関西の怖い会社と取引してしまったり人身事故が起こってPL訴訟になりそうになったり大変でした。
そしてそのゼネコンや商社と取引をやめようと思って400万円払って取引をやめてもらいました。
商社が間にはいるとユーザー欲しい物とメーカーが作りたい物にズレが出てきます。
これは危険と思ったのです。
そして直販でいこうと思いました。社名に付いているダイレクトはそのときのいきさつからです。
そして中古のハイエースを買って東北、中部を中心に営業しました。
そこで、出会って取引を始めた会社は、コマツ、キャタピラー、三菱商事、奈良県の会社などです。
ここから信号機の説明をしたいと思います。
最終機種の説明です。
まず、信号機2台または3台(三叉路用)は独立運転をしています。
内蔵している高精度水晶発振子により3ヶ月連続運転が可能です。動機ズレが問題にならない期間が3ヶ月ということです。
定期的に特定小電力の電波でデータ通信をして動機ズレを修正しています。
赤とか青になるタイミングを電波で送っているわけではありません。そんなことしたら混信などがあれば両方青になる危険性があります。あくまで独立運転で同期の微調整だけ行っています。
でも近くで2セット以上動作すると他のセットの電波を受けてしまいます。
そこでくふうしました。
起動する時電子キーを差し込んで起動した信号機同士のみが通信できるソフトウェアにしたのです。
いまでいう自動車のキーにIDは入っているような物と似ています。20年近く前に製品化してました。
もう一つは、同期信号が来るべき時間プラマイ2秒だけ同期信号を受け付けるようにしました。もし一つの電子キーで2セット起動してしまった場合でも2セットのサイクルがズレていれば間違った動作になりません。
もう一つは同期信号が途切れて連続3ヶ月でセットで動作していた信号機はすべて赤になって停止します。
3ヶ月あればほとんどの公共事業が終了するから3ヶ月にしました。また同期の保証ができる期間も計算によりその程度だったのです。
同期の保証はこの3つの対策をしました。
そして筐体(ケース)はポリカーボネイト樹脂の真空成形を使いました。
他のメーカーは鉄の箱を使っていますが、私は透明なプラスチックを使いました。
普通、そんなケースを使うと電気的なノイズでマイコンなんか外じゃまったく動作しなくなります。
そんなことは知ってます。
しかし私の得意分野はノイズ対策と熱設計です。他のこともできるけど。
中にはプリント基板を固定する板金フレームがすこしあります。そこがFG(フレームグランド)になります。
大地と同じ電位ということです。
ノイズ対策は、アルミ箔と樹脂フィルムを貼り合わせたシートを使いました。
これでプリント基板を覆って外部からの静電気ノイズを遮断しました。磁気的なノイズは防げません。
フレームグランドとアルミ箔と回路が動作しているSG(シグナルグランド)との関係をスッキリさせて問題なく動作しました。出荷後も不具合はありませんでした。
ポリカーボネイトのケースは表とパーツと裏パーツがあり両面テープで接着しました。
建設現場で使う製品をプラスチックと両面テープで作るとは大胆なやつだなーと思いました。(私です。)
小型軽量で同期の保証がありトラックから落としても壊れない製品ができました。
内部の回路はオール半導体で構成し電源スイッチなども省き接点レスにしました。
これで壊れるところがありません。
仕様は写真を見て頂ければ分かると思います。
この製品のメーカーを6年ほどやってある商社に事業譲渡しました。