アスキーから『オークション起業』を出版

企画が180度変わった話:『オークション起業』誕生秘話

 

今日は、私の2冊目の著書『オークション起業』が、どのようないきさつで世に出ることになったのか、その裏話をご紹介したいと思います。

 

営業の日々と、突然のチャンス

 

今となっては懐かしい思い出ですが、当時はまさに必死でした。 1作目を書き上げた後、私は意気揚々と2作目の原稿を書き上げました。そして、その完成したばかりの原稿をカバンに詰め、様々な出版社の門を叩く「持ち込み営業」の日々を送っていたのです。

しかし、現実はそう甘くありません。多くの挑戦もむなしく、なかなか良い返事はもらえない日々。そんな中、ある一社が私の原稿に興味を示してくれました。

それが、なんと、当時の大手出版社であったアスキー(現:株式会社KADOKAWA)だったのです。

「あの『アスキー』が?」と、信じられない気持ちでいっぱいだったのを覚えています。これでついに、私の2冊目の本が出版される道が開かれた…! と、私は胸を躍らせました。

 

出版決定! しかし、告げられた「まさかの条件」

 

ところが、喜びも束の間、編集担当の方との打ち合わせで、私は予想だにしなかった言葉を耳にすることになります。

当時、私が持ち込んだ企画のタイトル案は『やっぱり怖いネットオークション』というものでした。その名の通り、ネットオークションに潜む危険性や、「こんなトラブルがあった」「こういう点に注意すべきだ」といった、利用する上での注意喚起を促す内容です。「こういうリスク管理の情報は絶対に必要だ」と、私は信じていました。

しかし、編集担当の方から返ってきたのは、こんな言葉でした。

「読者が求めているのは、怖い話や注意点ではありません。彼らが知りたいのは、ずばり『儲かるネタ』です」

そして、こう続けます。

「この『儲かる』というテーマで、内容を180度変更して、全く新しく書き直してほしいんです」

頭をガツンと殴られたような衝撃でした。企画の根幹を、すべてひっくり返すような要求だったからです。

 

10日間の猛執筆。そして『オークション起業』の誕生

 

普通なら「そんな無茶な」と諦めてしまうかもしれません。 しかし、私は「ここで大手のアスキーから本を出せるチャンスを逃したくない」という一心で、この大きな方向転換の要求を飲むことにしました。「やります。書き直します」と。

そこからが、我ながら壮絶な日々でした。 編集部から与えられた(あるいは自ら課した)スケジュールは、わずか10日間

10日間で、ゼロから全く新しい本を一冊書き上げるのです。

私は持てる知識と経験を総動員し、PCに向かい続けました。寝る間も惜しんで、まさに「猛執筆」という言葉がふさわしい集中力で書き上げました。

そして、本当に10日後、まったく新しい原稿を編集担当の方に提出したのです。 こうして世に出ることになったのが、私の著書『オークション起業』です。

 

当時の「熱量」と、今だから話せる「勘違い」

 

この本は、急ごしらえで書いたとはいえ、内容は私自身の実体験に基づいたノンフィクションです。どうやって仕入れ、どうやって売り、どうやって利益を出していくか。その試行錯誤のプロセスや、当時のネットオークションの「現場の空気感」が、生々しくパッケージされています。

だからこそ、書き上げた当時の熱量がそのまま詰まっており、今読み返しても「なかなか面白い内容じゃないか」と自負しています。

ちなみに…。これは今だから笑って話せることですが、当時の私は、この一連の出来事を経験して、こう思っていました。

「アスキーのような日本有数の大手出版社から紙の本を出版できるなんて、この業界はなんて簡単な世界なんだろう」

持ち込みからトントン拍子で出版が決まり、(大変な書き直しはありましたが)無事に本が書店に並んだ。その事実に、少し有頂天になっていたのかもしれません。もちろん、そんなに甘い世界でないことは、その後のキャリアで痛いほど知ることになるのですが。

 

現在、この本を手に入れるには

 

そんな『オークション起業』ですが、残念ながら現在は絶版となっており、新品の書籍として書店で見かけることはありません。

もし「そんな裏話があった本なら、少し読んでみたい」とご興味を持っていただけましたら、AmazonなどのECサイトで中古本として流通している場合があります。ご縁がありましたら、探していただけますと幸いです。

著者が「10日間」で書き上げた熱量を、感じていただけるかもしれません。