アイデアを守る「情報防衛論」:発明家にとって最大の敵「産業スパイ」を物理的に遠ざける方法

1. 発明家にとって最大の敵は「スパイ」である

 

発明家や小規模メーカーにとって、事業の根幹であるアイデア、製法、素材、販路、仕入れ先、そして独自の「考え方」は、何年もかけて築き上げてきた財産です。

そして、その財産を無償で奪おうとする最大の敵が「産業スパイ」です。

盗まれる情報の価値は、金銭に換算すれば数千万円の損害、売上損失で言えば数億円から数十億円にもなります。しかし、モノを盗んだわけではないため、彼らは「窃盗罪にはならない」と思っている節があります。

 

2. 「スパイ」を見分けるためのシンプルな基準

 

「産業スパイ」というと、映画のような専門職を想像しがちですが、実態は違います。

スパイという職業は存在しません。 ごく普通に付き合っている知人、取引先、あるいは「友達」のように振る舞う人が、結果的に情報を盗み出し、それが流出源になれば、その人はスパイ行為をしたことになります。

彼らを見分けるためのシンプルな基準は一つです。

「用事がないのに、やたらと近づいてくるかどうか」

取引があれば当然行き来がありますが、特に用事もないのに頻繁に連絡してきたり、親しげに遊びに来たりする人物は、注意が必要です。

 

3. 「物理的非接触」で情報を守る具体的な対策

 

私は、自分の「ついしゃべってしまう」性格も考慮に入れ、「物理的に外部の人間と接触しない」という究極の情報防衛策を実践しています。

具体的に実行している対策は以下の通りです。

  • 怪しいメール・電話の遮断:
    • 怪しいと思われる人からのメールは受信しない設定にする。
    • 怪しいと思われる人へは、メール送信や電話をかけない
    • 怪しいと思われる人とは会わない
  • 情報公開の原則:
    • 未発表のアイデアや情報を、外部へ公表しない
    • 販売を開始した商品の情報だけを公表する

 

4. 誤って接触しないための「逆メモリー戦略」

 

ここで一つ、実践的な注意点があります。

「怪しいと思われる人の携帯電話番号を、メモリーから消してはいけない」ということです。

警戒すべき人物の電話番号こそ、携帯のメモリーに「要注意」などの名前で残しておきましょう。そうすれば、着信時に一目で相手を認識でき、間違って電話に出てしまうのを防ぐことができるからです。

アイデアは発明家にとっての命です。この静かなる情報戦争に打ち勝つためにも、私たちは常に警戒し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えるための物理的な仕組みを構築し続ける必要があるのです。