石川県工業試験場へ防音パネルの音響透過損失を測定に来ました。
石川県工業試験場 音響試験室の特徴
石川県工業試験場の音響試験室は、残響室と無響室という2つの特性が異なる部屋を組み合わせている点が大きな特徴です。これにより、JIS規格(日本産業規格)に基づいた精密な遮音性能の測定が可能になっています。
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残響室: 音が壁や天井でよく反射し、室内のどこでも音のエネルギーが均一になるように設計された部屋です。パネルに入射する音を均一にする役割があります。
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無響室: 壁や天井、床に吸音材が張り巡らされ、音がほとんど反射しないように作られた部屋です。パネルを透過してきた音だけを正確に捉える役割があります。
測定方法としては、音響インテンシティ法という手法を採用しています。これは、音の強さ(エネルギーの流れ)を直接測定する方法で、パネルを透過してきた音の量を正確に評価できます。
測定の具体的な手順
パネルの音響透過損失(遮音性能)は、以下のステップで測定されます。これはJIS A 1416「実験室における建築部材の音響透過損失測定方法」に準拠した一般的な流れです。
ステップ1:試験体(パネル)の設置
まず、測定したいパネルを残響室と無響室の間にある試験体取付枠に設置します。この枠のサイズは、1㎡または10㎡から選択でき、様々な大きさのパネルに対応可能です。パネルの周囲に隙間ができないよう、音響的に密閉(シール)することが非常に重要です。
ステップ2:音源室(残響室)での音の発生
残響室内に設置されたスピーカーから、測定に必要な周波数帯域(通常100Hzから5000Hz)のピンクノイズという基準音を発生させます。ピンクノイズは、様々な高さの音(周波数)をバランス良く含んだ音です。残響室の特性により、パネル全体に均一な音圧がかかります。
ステップ3:音響パワーの測定
次に、パネルを透過して無響室側に出てきた音のエネルギーを測定します。石川県工業試験場では、音響インテンシティ法を用いて以下の測定を自動で行います。
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マイクロホンの設置: 無響室側に、音響インテンシティプローブ(特殊なマイクロホン)を設置します。
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自動測定: 3次元マイクロホン移動装置が、パネル表面を覆うように設定された測定点を自動で移動しながら、各点での音の強さを測定します。
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音響パワーの算出: 測定された各点の音の強さを面積分することで、パネル全体から放射される音響パワー(音の総エネルギー量)を算出します。
ステップ4:音源室の音圧レベル測定
同時に、音源である残響室内の平均音圧レベルを測定します。これもマイクロホンを移動させながら複数の点で測定し、平均値を求めます。これにより、パネルにどれだけの音が入射したかを評価します。
ステップ5:音響透過損失の計算
最後に、測定した値を用いて音響透過損失(単位:デシベル, dB)を算出します。音響透過損失 $TL$ は、以下の式で計算されます。
ここで、
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$L_{p1}$ は、残響室(音源室)の平均音圧レベル (dB) です。
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$W_2$ は、無響室側で測定された音響パワー (W) です。
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$S$ は、試験体(パネル)の面積 (㎡) です。
この計算を周波数ごとに行い、「どの高さの音が、どれくらい遮断されたか」をグラフで評価します。数値が大きいほど、遮音性能が高いことを意味します。
このように、石川県工業試験場では、自動化された高精度なシステムを用いて、製品や材料の遮音性能を詳細に評価することが可能です。

