メーカーと下請け製造業:ビジネスモデルの選択と戦略
メーカーの事業戦略:工場を持たない柔軟性
自社ブランド・自社製品を持つメーカーであっても、必ずしも自前の工場を持つ必要はありません。
自社で開発した製品の製造を外部に委託し、自社ブランドとして販売することで、高い付加価値を獲得できます。外注先に材料費と工賃を支払うこの形態は、工場を保有する際に発生する高額な固定費負担を回避でき、必要な時だけ発注するという極めて柔軟な生産体制を実現します。
ただし、長く続く定番製品を扱う場合は、品質やコスト管理の観点から自社工場を持つことが有利になる場合もあります。
下請け製造業の役割とリスク
これに対し、下請け製造業の主な役割は、メーカーから提供された図面通りに製品を忠実に製造することです。一部設計業務を担うこともありますが、あくまでメーカーの指示に基づいた業務であり、自社単独で自由に製品を企画・開発する仕事とは根本的に異なります。
下請け製造業の最大のメリットは、在庫リスクがないことです。受注した通りに製造・納品することで確実に代金を得られます。しかし、事業の成長はメーカーからの注文量に依存します。
メーカーと製造業の転換の難しさ
メーカーと下請け製造業、どちらの道を選ぶかは、オーナーの経営判断に委ねられます。
メーカーのメリットは、売れる商品を企画・開発し、販売すれば、それが直接的に売上と利益になる点です。商品が売れない時期は苦しいですが、それは自らの判断で乗り越える自由(「野良の気分」)があります。
一方で、下請け製造業から自社ブランドを持つメーカーへ転身する企業は非常に稀です。メーカーとして成功する企業は、最初からメーカーとして起業しており、この二つの業態は、求められるスキル、組織文化、そしてリスクテイクの姿勢が根本的に異なると言えます。
メーカーは「投資業」である
かつて私が約10年間、下請け製造業の会社で設計の仕事をしていた際、社長が「儲からない」と漏らすのに対し、私は「売れるものを作って売れば儲かります」と答えていました。しかし、社長は商品開発に必要な投資を嫌がる様子でした。
この経験から、私はメーカーを製造業ではなく「投資業」であると捉えています。
メーカーの仕事は、市場のニーズを見極め、商品開発というリスクを負って投資し、その投資を成功させることにあります。単に物を作ることではなく、リスクをマネジメントし、新たな価値を創造するための先行投資を行う覚悟こそが、メーカー事業の核なのです。

