創造_見えないものとこと

出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2024年7月19日


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 世の中には、目で見えない”もの”と”こと”があります。

見えないもの:目的、目標、作戦、技術、権利、ノウハウなど
見えないこと:関係性(因果関係)
見えるもの:製品、サービス、現象など

 見えるものと見えない”もの”のどちらが大事かというと、源流である見えないものだと私は思います。川下である見えるものは、いつでも、どこでも、誰でもつくることができます。企業は商品がたくさん売れると大きくなります。そのため、目で見える物を重視する傾向があります。しかし、世の中が変化したとき、現在販売している目でみえる製品やサービスが価値を持たなくなる事はありえます。すぐに次の手を準備するためには、目でみえないものを重視しておく必要があると思います。技術、権利、ノウハウなどがあれば、すぐに次の商品を販売することができます。技術、権利、ノウハウなどは紙に書けば目に見えますが、紙が価値を持つわけではなく、理解して運用する能力が価値を持ちます。
 しかし、商品は、目で見える製品やサービスにすることをお勧めします。技術や権利、ノウハウなどは大事ですが、目で見えないものを売るのは大変難しいことです。それを買ってビジネスプランを組み立てられる人にしか、価値は分かりません。よって、購入できる人数が桁違いに少なくなります。それよりは、目で見える製品やサービスは購入後の使い方がわかりやすいので売りやすいのです。「これがいくら」といった方がよいでしょう。
 このように目で見える分かりやすいものを販売しながら、見えないものを大切にしていくとよいと思います。
 次に目で見えない”こと”について書いてみたいと思います。私は、10代の頃から不思議だなと思うことが沢山ありました。目の前で起こる現象に規則性があるのです。前にも書きましたが、学生時代、数学の先生が何のために数学を勉強するのかを説明してくれました。「世の中で起こっている現象を数式にして理解し、次に自分がどう行動すれば良いかを考えるため」というのです。最終的には目で見える現象となって現れるのですが、その仕組みや法則を知れば、次に自分がどう行動すれば良いかを知ることができます。これは、どの分野にも応用できることです。例えば、人間関係、科学的な研究、投資、ビジネスなどです。時として私は、ハリーポッターやスターウォーズが混ざった世界で生きているかのような錯覚を覚えることがあります。映画の原作を書いた人の生い立ちを知りたくなってしまいます。私は、観察しすぎなのかもしれませんが、観察し法則をライブラリーに蓄積し、必要なときに技術やノウハウの一部とすることで、特許などの権利にすることができます。そして、私はそれを製品化して販売してきました。観察するためには普段忙しくしていてはいけないと思います。体を動かすと頭が動かなくなります。法則一つ一つはあまり価値を持たないかも知れませんが、組み合わせによっては大きな価値を持ちます。その組み合わせを応用し、新しいことを考える事を仕事というのだと思います。

少し詳しく書いてみました。

ビジネスの本質は目に見えない。未来を創るために、私たちが本当に見るべきもの

 

私たちの周りには、二種類の世界が存在します。一つは、製品やサービス、日々の出来事といった「目に見える世界」。そしてもう一つは、そのすべてを根底で動かしている目的、技術、ノウハウ、そして物事の因果関係といった「目に見えない世界」です。

今回は、この二つの世界のどちらに焦点を合わせるかが、ビジネスの、ひいては人生の成否を分けるというテーマでお話しします。

 

第一部:企業の寿命を左右する「見えない資産」

 

まず、「目に見えない”もの”」について考えてみましょう。これらは、目的、目標、作戦、技術、権利、ノウハウなど、いわば企業の「見えない資産」です。

多くの企業は、目に見える「製品」がたくさん売れることで成長するため、自然とそちらを重視する傾向があります。しかし、それは物事の源流と川下の関係を見誤っています。製品という「川下」の存在は、いつでも、どこでも、極論すれば誰でも模倣し、つくることができます。しかし、技術やノウハウといった「川上」の源泉は、一朝一夕には生まれません。

市場が変化し、今の大ヒット商品が明日には全く価値を失うことは、現代では日常茶飯事です。その時、目に見える製品しか持たない企業は、なすすべなく立ち往生してしまうでしょう。一方で、その製品を生み出した「見えない資産」をしっかりと蓄積してきた企業は、その技術、権利、ノウハウを応用し、すぐに次の商品を市場に投入することができます。変化への対応力、その源泉こそが「見えない資産」なのです。

もちろん、これらの技術やノウハウも、紙に書き出せば「見える化」できます。しかし、その紙自体に価値があるのではありません。その情報を深く理解し、自在に運用できる組織や人材の「能力」こそが、価値の本質なのです。

 

第二部:ビジネスの鉄則 ― 売るべきは「見える形」

 

しかし、ここで一つ重要な逆説があります。どれほど「見えない資産」が重要だと言っても、ビジネスとして売るべきは「目に見える形」にした製品やサービスである、ということです。

技術や権利、ノウハウといった「見えない資産」そのものを売買するのは、極めて困難です。なぜなら、その価値を正確に評価し、購入後に自社のビジネスプランに組み込めるだけの高度な知見を持つ買い手は、桁違いに少ないからです。「この特許には未来の可能性がある」と語るより、「この製品を使えばあなたのこの問題が解決する。価格はいくらだ」と提示する方が、圧倒的に分かりやすく、売りやすいのです。

したがって、賢明な戦略とは、目に見える分かりやすい製品を販売して収益を上げながら、その利益を源泉である「見えない資産」の蓄積と強化に再投資し続けること。このサイクルを回し続けることが、持続的な成長の鍵となります。

 

第三部:世界の設計図を読み解く「見えない法則」

 

次に、もう一つの「目に見えない”こと”」、すなわち物事の背後にある関係性や法則性についてです。

私は10代の頃から、目の前で起こる様々な現象に、不思議な規則性があることに気づいていました。学生時代、数学の先生が教えてくれた言葉が、今でも私の思考の根幹を成しています。 「何のために数学を勉強するのか。それは、世の中で起こっている現象を数式(モデル)にして理解し、次に自分がどう行動すれば良いかを考えるためだ」

これは、数学の世界に留まらない、万物に共通する真理です。人間関係の力学、科学的な発見、投資のトレンド、ビジネスの盛衰。最終的にはすべて「目に見える現象」として現れますが、その背後には必ず普遍的な仕組みや法則が存在します。その法則を知れば、未来を予測し、次の一手を合理的に決定できるのです。

時として私は、この世界がまるで『ハリー・ポッター』の魔法や『スター・ウォーズ』のフォースのような、目に見えない力と法則で動いているかのような錯覚を覚えることがあります。そして、これらの法則性を注意深く「観察」し、発見した法則を自分の中にライブラリーとして蓄積していく。それらを既存の技術やノウハウ(見えない資産)と組み合わせることで、新たな特許や製品という形に昇華させてきました。

この「観察」のためには、一つ重要な条件があります。それは、心身ともに多忙であってはならない、ということです。体を動かし、日々の業務に追われていると、頭は目の前のタスク処理で満たされ、物事の本質を静かに観察し、深く思考する余裕が失われてしまいます。

一つ一つの法則は、それ単体では小さな価値しか持たないかもしれません。しかし、レゴブロックのように、それらをどう組み合わせるかで、全く新しい、そして非常に大きな価値を創造することができる。この組み合わせを考え抜き、新たな価値を創造することこそが、「仕事」という行為の本質なのだと、私は考えています。

目に見える製品や現象に一喜一憂するのではなく、その背後にある「見えない資産」を磨き、普遍的な「見えない法則」を探求し続ける。それこそが、変化の激しい時代を生き抜き、未来を自らの手で創り上げていくための、唯一確かな羅針盤となるのです。