出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2024年9月20日
株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
今回は、居心地の良い家について書いてみたいと思います。少し技術的なことにも触れたいと思います。毎年気温が上がってきており、夏の最高気温も高くなっています。では、北陸において夏涼しく冬暖かい居心地の良い家とはどんな家でしょうか。室温について少し考えてみました。
①南側の窓は必要か
北陸に住んでいて気になることは、冬太陽が出ないことです。感覚的に南側に窓があっても、冬太陽が出ないため室温を上げる効果は少なく、夏は南からの太陽光が部屋に入り暑いのです。
そこで、金沢市の日照データを元に計算してみたところ、予想通り南側の窓は夏も冬も室温に関してメリットはほとんどありませんでした。南側の窓は、夏暑く、冬温まらない事が分かりました。しかし、南側の景色を見たい方にとっては必要です。
②高気密、高断熱とは
最近、高気密高断熱住宅という言葉をよく目にします。しかし、その性能を数値で表している工務店やハウスメーカーはいくつあるでしょうか。知人が住宅展示場へ行くというので、「この数値を確認したら良いよ」と言って数値を公表しているメーカーの資料を渡しました。
断熱性能が高くても隙間があれば冷暖房の効率が落ちます。ですから、まず取りかかるのは気密性能のアップだと思います。その後、予算に合わせて断熱性能を決定するのが順序として正しいと思います。
気密性能は、C値という値で表されます。この数値が、0.2以下であれば非常に優秀だと思います。窓を閉めるとドアが開けにくくなります。
次に断熱性能は、UA値で表されます。外皮平均熱貫流率といいます。この値は、小さいほど断熱性能が高く0.2以下だと高性能だと思います。
③日射取得について
冷房期の平均日射取得率はηAC値で表されます。北陸の冬は太陽がほとんど出ないため、南側の窓を無くすか小さくして、このηAC値を0.5以下に抑えたいところです。
④実際の室温
上記のような性能の建物は、実際に室温がどうなるのか実験してみました。7月のある日、早朝からエアコンを使用せずに測定してみました。昼頃、外気温が35℃まで上昇しました。そのとき室温は25℃でした。昼夜を通して、ほとんど室温が動かない感じです。
⑤価格対性能について
安価に快適な室温を維持するには、安価な中古住宅を買い家電量販店で買ったエアコンを付けると良いでしょう。
しかし、エアコンを使わなくても室温20℃台を維持して、夕方帰宅しても外気温より涼しく感じられる家が良いと思います。ペットを飼っている家庭などは、24時間エアコンが稼働しているため、電気代が気になるところです。ということで建物の基本性能が良いと何をするにもメリットがありますが、価格は木造で鉄骨並みの価格になるような気がします。
逆に、鉄骨で高気密高断熱にするよりは、木造でコストを抑えて高気密高断熱を実現し、耐震性能を考慮しながら壁量充足率を基準の3~5倍以上を実現する方が、価格と性能のバランスが取れて良いと思います。