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創造_人格の種類

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出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、人格の種類について書いてみたいと思います。人の性格ではありません。普通に考えると自然人格(自然人)、法人格(法人)などが思いつきます。その他には、人工人格などが考えられます。
 ウィキペディアによると、【法人は、自然人以外で、法律によって「人」とされているもので、「人」は、権利義務の主体となることができる資格(権利能力)を認められたものである。】と書かれています。私は、法人格とは、株主(オーナー)がその法人を設立した目的を達成するために意思決定をし、それを世の中に表現するためにあるのだと思っています。
 自然人格は、親が産んだから、この世にあるのだと思います。私はそう思っています。
 次に人工人格は、人工的につくられた人格です。コンピュータ上で動作するかどうかは別として、実態はソフトウェアです。西暦2000年頃、ある方の紹介で浅草にあるソフトウェア開発会社を訪問しました。その頃は4人ほどで人工人格を開発していましたが、すぐに数十人規模になりました。その後、パソコンがその会社の受付をするようになっていました。そして、実在する人間の声で会話できるようになりNHKでも放送されました。そのとき私は映画”A.I.”(2001年公開)を観たときのように鳥肌が立ちました。そして、人工人格と自然人格の区別が付かないと問題が起こりそうな気がしたので、人工人格にはメールアドレスに”@”ではなく違うマークを使うと良いのではないかと提案したことがあります。
 前置きはここまでにして本題に入りましょう。時々、「あの社長の性格は***だから」という会話を聞きます。それは、社長個人の人格の事を話していると思うのですが、仕事の場合、法人格として物事を判断します。個人の人格とは全く関係ないと思うのは私だけでしょうか。逆に、個人の気持ちによって会社経営をしている方もいるのではないでしょうか。その場合は、法人ではなく個人事業にした方が良いと私は思います。よく税額で法人にするか個人事業にするかを決めるという話を聞きますが、私は目的によって決めるべきだと思います。
 法人格の会社を経営しているときは、法人格として物事を判断しなければならないと思います。ですから、会社としての判断は、社長個人の人格や性格とはまったく関係ないと思います。私はよく優しそうな人と思われがちですが、以前ある会社の副社長からドスの効いた声で「お変わりになられたようで」と言われたことがあります。それは、その副社長が私個人の人格と会社の人格とを混同していただけなのです。
 たくさん売れた商品のアイディアは、法人である会社にとっては大切な財産です。しかし、私個人は愛着を持って開発した商品でも、会社から見れば、単に商品開発のプロセスを経て算出された計算結果です。そう考えると、躊躇せず商品企画が旬の時期に特許や事業として売却することも可能です。開発者である私個人の気持ちを入れるべきではないと思っています。言い換えれば、何事もその場面に合った人格として判断すればよいと思います。

創造_当たり前を権利化

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株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 私は、起業当初、売れる製品を開発し特許を取得すれば、特許を貸してほしいとか、売ってほしいという問い合わせが来るものだと思っていました。しかし、現実はそうではありませんでした。理由はいくつか考えられます。
1.その特許を使わなくても同様の製品を作ることができる
2.その製品を製造販売する必要がない
などです。
 まず1.の対策としては、逃げ道のない特許を取得するしかないと思います。具体的には、請求項(権利範囲)を自分で書いて営業的に有利になる価値ある権利をつくります。以前も書きましたが、ここは技術の面から考えるのではなく営業的に有利になる権利を考えます。この請求項を考えるときは発明者を外して、経営者と営業担当者が考えても良いくらいだと思っています。そして完成した請求項を権利化できるように弁理士に本文を作成していただくと良い明細書が完成すると思います。但し、審査官も拒絶理由通知を出さないといけないので、本当にほしい権利範囲は、請求項2として出願します。請求項1は引きしろとして、もう少し踏み込んだ内容を書いておきます。拒絶理由通知に「請求項1には新規性が無い」と書かれていたときは、請求項1を削除し、請求項2を請求項1に繰り上げて登録する作戦です。

次に2.の対策です。ここは従来からの考え方をガラリと変えないといけないかもしれません。自分が価値あると思った製品を開発し特許出願したとしても、世の中がその方向に進まなければ誰もその特許に興味を持ちません。たとえ製品が売れて利益が出たとしてもです。
 そこで対策です。世の中が進む方向を予測しその一歩手前で特許出願し、半歩手前で製品を販売するイメージです。世の中が進む方向にワナを仕掛けるような感じで特許出願するのです。くれぐれも一歩手前で製品を販売しないでください。世の中の人はまだ理解できませんから、半歩先まで待って販売すれば、「こんな物が欲しかった」と言って買ってくれます。私は、そのタイミングを半歩先といっています。まだその製品は販売されていないが、見せると売れる時期という意味です。
 最後に、この考え方をさらに磨くとどうなるかご説明いたします。誰もが通るところに特許を仕掛けるわけですから、当たり前に思える事を特許登録することになります。そうするとおもしろいように自分の特許に抵触した製品を見つけることができます。販売している会社は、「こんなことが特許ですか?」と聞いてきます。それに対して私は「はいそうです」と答えます。誰もが当たり前と思っていることですから、先使用権を持ち出されないように気をつける必要があります。
 特許の審査官は、進歩性と新規性があれば特許を認めざるを得ないのです。つまり、誰もが当たり前と思っていることは関係ないと思います。但し、先に同様の製品が販売されていたり雑誌に載っていたりしてはいけないので、その点は十分調査する必要があります。
 この微妙な感じ、分かっていただけるでしょうか。追いかけてもダメ、好きなところに仕掛けてもダメとなると、多くの人が通るところを見つけ、先に特許を仕掛けておくしかないのです。誰もが通るところなので、誰もが当たり前と思っているのです。それを権利化しておけばヒット作になると思います。

創造_起業支援

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株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 私は、売れる商品をつくって売れば良いと思って起業しました。やってみるとその通りでした。売れる商品を開発できないと資金難に陥りますが、売れる商品ができると事業ってなんと楽しいのだろうと思いました。その繰り返しを30年行っています。現在は、発明家、メーカー、知財の販売まで全ての工程を行いながら、その経験を元に商品開発アドバイザーとしても活動しています。
 30代の頃は、いろいろな方からアドバイスを頂きました。とても価値あるアドバイスもありましたし、そうでないアドバイスもありました。何故かと考えたところ、アドバイスをする方の経験に基づいたものかどうかの違いでした。その頃からノンフィクションのアドバイザーになろうと思うようになり、現在は、実体験を元にアドバイスを行っています。
 あるとき、ある方にアドバイスしていると「じゃーやってみて」と言われたことがあります。そのとき、アドバイザーは横からアドバイスするものと思っていましたが、自分ならこうするという信念を持ってアドバイスしなければならないと気づきました。もう少し踏み込むと、アドバイスするからには、その企業の社長ができなければいけないと思いました。ここまでくると、アドバイザーではなく経営代行です。
 起業には2種類あると思います。新規に会社を設立してゼロから出発する場合と、ある程度の規模の企業が新しい事業を立ち上げる場合です。ゼロから事業を立ち上げるときは、最初のビジネスプランを成功させないと辛いものがあります。社内で新事業を立ち上げる場合は、使えるものが多いため安全に開始できると思います。
 どちらも実行する内容は同じで、まずリソースの一覧をつくります。できることと使えるものの一覧です。次に利益目標と期限を設定します。そうすると、商品企画を含めて最善の方法が一つ見えてきます。あとは実行するだけです。
 私は、このように条件設定から商品企画を含む最善の方法を計算する事を仕事だと思っています。これまで多くの商品を開発し成功と失敗を繰り返してきましたが、その都度、どのような経路をたどってこの考えに至ったのかを遡って検証していました。商品開発は閃きや思いつきで行っても良いのですが、その企業に適した最善の方法があるはずなのです。それを計算すれば、ビジネスプランと商品企画が算出されます。
 ここで、最善の方法が一つしか無い理由を簡潔に説明します。設定した期限が来たときに、「あのときこうしておけば良かった」と、最善だった方法に気づくことがあります。ということは、まさに今、こうすれば良いという方法がある筈なのです。数学的に最善の方法が一つであることが証明されましたが、その答えに気づけるかどうかです。あとは計算式に従って実行すれば良いのですが、その計算式の立て方こそ商品開発のノウハウだと思っています。
 私事ですが、2024年4月から”いしかわ大学連携インキュベータ”のチーフインキュベーションマネージャーを務めさせて頂くことになりました。少しでも入居者様のお役に立てるよう努力いたします。 

創造_終わりを決める

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株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 始まったものは必ず終わります。始めることを自分で決め、終わりも自分で決めることができればハッピーエンドになると思います。しかし、始めることを決められても、終わりを決められない人が多いのではないでしょうか。昭和の時代は、人の寿命よりビジネスプランの寿命が長かったので、それでも良かったのですが、今は色々なものの動きが早いので、ビジネスプランや商品の寿命も短くなっています。世の中の動きより早く考え行動しないと、自分のビジネスプランが鎮撫化して価値を持たなくなると思います。
 学生時代、授業で「時間が経つと変わるものと変わらないものがある」と習いました。不易と変易というそうです。昔は変わらないと思われていたものでも現在では変化するようになってきました。変わらないものは、物理の法則だけのような気がします。
 私はこれまで、自分で始めて自分で終わりを決めてきました。次のビジネスプランを考える事は大変ですが、会社の運命を一つのビジネスプランや商品に委ねていては、商品寿命とともに会社も終了します。これは性格にもよると思うのですが、新規に商品を立ち上げ、売上が伸びていくことは楽しいけれど、水平飛行に入ると単純作業になりつまらなくなるのは私だけでしょうか。そのため、いつも水平飛行に入ると終わりを考え始めます。
 終わり方はいくつかあると思います。
①採算が取れなくなるまで商品を販売する
②売上が上昇中に事業譲渡する
③売上が水平飛行に入ったとき事業譲渡する
これは状況によって選べば良いと思います。売上が減少傾向に入ってからの事業譲渡は値段が付かない可能性があるので、終わり方はこの3つから選ぶと良いと思います。

 途中で事業譲渡するメリットは、次のテーマに時間と資金を投資できる点だと思います。同じ業界で商品を増やして売上拡大するのは簡単で良いことですが、業界そのものが無くなることもあります。現在の事業を行いながら、違う業界のビジネスプランや新商品を考えることは、実はとても難しいのです。
 通常業務の傍ら、新規事業を開発しようとしても良い成果がでないと感じています。そこで次のテーマをつくるためには、専任の担当者を置くことをお勧めします。時間を細切れにされては、深く考えることができないのです。専任の担当者は誰でも良いわけではなく、持って生まれたセンスの上に努力を積み上げられる人が良いと思います。これは単純作業ではないので、適性が問われると思います。
 以前、自社工場で自社製品を製造直販していた事があります。そのときは、次の商品を開発できませんでした。これは危険だと思い、次のテーマが無いのにもかかわらず、その事業を譲渡したことがあります。事業譲渡の代金を使い切る前に、次の事業を立ち上げれば良いのです。リスクは高いのですが、その方が生存の確率が高いと感じました。そこまでしても、次の商品開発というのは重要なテーマだと思います。
 人材に余力があれば商品開発の部署を設ける事をお勧めします。そのためには、付加価値の高い商品を開発する必要があります。鶏と卵の話になりましたが、どこかで無理をしてその流れに乗る必要があると思います。それが仕事だと思います。

創造_アクロバティックな特許販売

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株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、アクロバティックな特許販売の実例をご紹介いたします。雑談と思ってお読みください。
 あるときアイディアを売ろうと思いました。どこに何を販売するか考えるため新聞の株価欄を見ながら考えました。この企業に何を提案したらNOと言えないだろうかと1社あたり3秒考えました。3秒考えて思いつかないときは次の企業へ移ります。ある企業の名前を見たときピンときました。この企業にこのアイディアを提案すれば、買ってくれるのではないかと思ったのです。そこで、その企業の研究所に電話し、「提案があるので製品を1台無償で送ってほしい」と伝えたところ、提案を聞いてくれることになりました。製品が到着したので、改造してアイディアを盛り込み、特許出願も済ませて試作品を研究所に持ち込みました。
 普通は、そこで秘密保持契約を締結し、発明の内容を開示しますが、どんな発明か分からないのに、秘密保持契約を締結することはありません。少しずつ開示しながら秘密保持契約までたどり着く方法もあります。しかし、私はいきなり試作品を見せ動作させました。研究所の方は驚いたようでした。いきなり試作品を見せたので、よほど特許に自信があると思ってくれたのでしょう。その後、秘密保持契約を締結して特許の内容を開示しました。順序が逆になりましたが、ここで一旦、安定状態になりました。

 次に、研究所は類似の特許がないかを調査しました。その時点では見つかりませんでした。その後、1年待っても類似の特許が公開されないので、取引の段階に入りました。研究所からの提案は、次の2つです。
①特許の持ち分を50%譲渡し共同開発に進む
②特許の持ち分を100%譲渡する(現金を払いお帰り頂く)

 ①の場合、業界トップメーカーと共同開発を行い、売上に対してロイヤリティを受け取ることになります。年間100億円売れた場合、ロイヤリティを2%とすると、その半分の1%(1億円)受け取ることになります。
 普通に考えれば①を選ぶと思いますが、私は②を選びました。特許出願から公開まで1年半かかるので、特許が公開になるまであと半年あります。しかし、研究所は特許を自分好みに補正したいので、1年以内に持ち分を手に入れる必要があります。今回の発明にかかった時間は3秒だったので、難易度は案外低く、私は、残り半年の期間で誰かが類似の特許を出願している可能性があると感じました。これは、常に先行技術調査を行い、世の中の技術レベルを把握しているから感じることだと思います。はじめに企業名を見ながら1社あたり3秒考えたときに、発明と先行技術調査を頭の中でやっていたのです。実際に行動するときは、特許情報プラットフォーム(Jplatpat)を使って正確に先行技術調査を行います。

 この取引の勝因は3つあります。
◆いきなり電話で試作品を送れと言ったこと【強く出る】
◆秘密保持契約無しでいきなり試作品を見せたこと【強く出る】
◆現金化してサッと引いたこと【強く出ると思わせて撤退】

 その後の半年で類似の特許は見つかったのでしょうか。

創造_自分のステージ

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出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 誰でも自分に合ったステージで働く方が良いと思います。数の大きい順に図を描いてみました。なお、このコラムでは製造業の話はしないので、ご了承ください。
 誰でも起業するときは、”こんな仕事をしよう”と考えます。それがその人のステージだと思います。例えば、***のメーカーをやってみようとか、士業をやってみようとか、投資家をやってみようとかです。それを考える理由は、”これならできそうだ”という根拠のない自信があるからだと思います。それが、その人の活躍するステージだと思います。 私の場合、小学校4年生のときに「発明家」になろうと思いました。そして、大手メーカーの製品を設計する仕事に就きました。しかし、下請けで単なる作業者で、アイディアを出す場面がほとんど無かったため、メーカーとして起業することにしました。資金、商品、取引先など何も無いところからのスタートでしたが、1人で初年度に1億円を売り上げることができました。やはり、売れる物を作っていれば良いのだと確信が持てました。しかし、メーカーというのは製品が売れ出すと単純作業になり、つまらなくなりました。そこで、売上のある事業は現金化できるのではないかと思い、その事業を売ってみることにしました。1999年の事だったと思います。何とか事業譲渡に成功し、私は時間とお金を手に入れました。権利を作って売る仕事の醍醐味を味わってしまいました。「これだこれ!」と思い、これまでに合計10件の事業や特許などを販売しました。本来、発明家とはこのような仕事なのです。このように、起業後に自分のステージにたどり着くこともあります。
 いろんな場面に遭遇して思うことは、「最初に思ったことが正しい」ということです。最初に思った仕事がその人には向いているということです。少し違うなと思ったときは、もがいてみることです。そうすると、少し離れたところに居心地が良いところが見つかるかもしれません。最初に感じたステージに立ってみてシックリくれば良いし、少し違和感があれば動いてみることです。これはサラリーマンでも同じだと思います。違うと思ったら転職すれば良いのです。
 図にあるステージの上の方へいくほど影響力が増します。また、ステージを1つ上がるごとに考える項目が桁違いに増えます。例えば、商品開発を行う発明家という仕事では、原理の発明以外に、特許の登録と管理、製品の仕様を決め設計製造が可能か、ビジネスプランとして成り立つかを考えます。自分のステージだけではなく、それ以下のステージも動かす必要があります。それで考える項目が桁違いに増えるのです。
 次は投資家です。投資家は、ビジネスプランを評価し投資するかどうかを考え、良いと思えば投資します。特許を使う権利はビジネスプランの実行者が保有していますが、投資家は全体を所有することになります。失敗すれば投資した資金の全てを無くします。設備投資の「投資」という言葉とは意味が違います。
30年ほど営業してみて感じたことは、ステージ間で”ものさし”の隔たりが極めて大きいということです。生まれながらにして持っている価値観の違いという感じでしょうか。その隔たりは簡単に埋まるものではなく、できるだけ早く自分に合ったステージを見極めることも大事だと思います。