
出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版 2024年12月20日
株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)
今回は、一年の締めくくりということで、気分転換のコツをお話しします。一例ですので、気楽に読んでいただければ幸いです。
これまで本コラムで書いてきたように、一年中考え事を続けると疲れることがあります。生身の人間として、精神的に休むことも必要です。ただ、休むといっても何もしないわけではなく、普段と違うことを体験することが大切だと思います。
一般的に気分転換といえば、映画を見る、飲みに行く、体を動かすなど多様な方法があります。しかし、職場や自宅にいると、電話やメール、来客があり気が休まりません。そこで私の場合、普段の居場所からできるだけ離れることを心がけています。距離を取ると安心するのは、仕事や私用が追いかけてこないからだと思います。精神的に疲れる年には、毎月旅行に行き、安く遠くへ出かけて普段と違う景色や匂い、食べ物を楽しみました。以下に、リフレッシュの具体例をいくつかご紹介します。
① 長野での滞在
ある年の2月8日、北陸地方が大雪だった朝、車で出発し、長野県のウィークリーマンションに2週間滞在しました。当時、体調が思わしくなく湯治を考えたものの、温泉にこだわりがなかったため、安価なウィークリーマンションを選びました。近くにワイナリーやイオンモールがあり、衣食住に困ることはありませんでした。盆地のため、イオンモールの屋上駐車場から見える360度の白い山々は絶景でした。その間、誰とも連絡を取らず、一人でのんびり過ごしました。
② しまなみ海道
朝一の電車で金沢駅を出発し、10時までに尾道駅に到着。予約しておいたレンタル原付を借り、しまなみ海道の自転車道を今治まで走りました。原付二種が通れるため、自転車で訪れた際と同じ美しい瀬戸内の景色を楽しめます。東京の友人と尾道駅で合流し、二人でしまなみ海道を満喫しました。今治ではゲストハウスに一泊2800円で滞在し、翌日は尾道に戻って別のゲストハウスに泊まりました。2泊で5600円+電車代で、普段とは違う体験ができました。
③ 沖縄での過ごし方
オフシーズンには沖縄本島を訪れることがあります。Yahooトラベルで安い日を選べば、飛行機とホテルがセットで4万円前後。最安値で3万5千円だったこともあります。昼頃に那覇空港へ到着後、レンタルバイクを借りて最北端まで往復300km走行。その日の夜はライブハウスへ。酔っても安心できるよう、徒歩3分圏内のホテルに宿泊しました。
④ 長距離バイク旅
季節や天候に応じて、大型バイクで金沢から青森や北九州まで一気に走ることもあります。昨年は北九州市の門司まで830kmを走り、翌日阿蘇を経由して鹿児島まで行きました。「バイクは危険」と言われることもありますが、商品開発への投資ほど失敗のリスクは高くないと感じています。
私は、このようにして頭に刺激を与え、リフレッシュを図っています。遠くへ行くことで、新たな発見や良い効果があるかもしれません。時間がある方は、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
少し詳しく書いてみました。
思考のスイッチを切る技術。私が実践する「物理的逃避」による脳のリフレッシュ術
一年の締めくくりに、皆様、本当にお疲れ様でした。一年中、仕事やプライベートで思考を巡らせ、気づけば心身が擦り切れてしまっている、ということはないでしょうか。私たち生身の人間にとって、精神を意図的に休ませる時間は不可欠です。
ただ、ここで言う「休む」とは、単に何もしないことではありません。むしろ、日常とは全く違う刺激を脳に与え、思考のチャンネルを強制的に切り替えることだと私は考えています。
一般的な気分転換、例えば映画鑑賞や友人との会食、スポーツなども素晴らしいものですが、職場や自宅の近くにいる限り、不意の電話やメール、来客などで思考はすぐに日常に引き戻されてしまいます。
そこで私が最も効果的だと感じているのが、普段の居場所から物理的にできるだけ遠くへ離れることです。物理的な距離が、仕事や雑事といった精神的な重圧からも距離を作ってくれる。この安心感こそが、真のリフレッシュの第一歩だと確信しています。精神的に特に消耗が激しかった年には、私は毎月のように「安く、遠くへ」をテーマに旅に出て、いつもと違う景色、匂い、食文化に身を浸しました。
今回は、その具体的な実践例をいくつかご紹介します。皆様にとっての「思考のスイッチの切り方」のヒントになれば幸いです。
ケース1:『完全なる遮断』で見つける心の静寂 ― 長野、二週間の潜伏
ある年の2月8日の朝。北陸特有の重く湿った雪が、視界を白く塗りつぶしていました。私はその日の朝、車に乗り込み、一路長野県を目指しました。目的は、ウィークリーマンションを借りての二週間の滞在です。
当時の私は心身ともに不調を抱えており、いわば「湯治」が目的でした。しかし、温泉旅館の細やかな「おもてなし」すら、今の自分には過剰な刺激に感じられました。誰にも干渉されず、ただ静かに過ごしたい。その思いから、生活に必要な最低限の設備が整った安価なウィークリーマンションを選んだのです。
滞在先の近くにはワイナリーや大型のイオンモールがあり、衣食住に困ることはありません。特に印象的だったのは、盆地にあるイオンモールの屋上駐車場から見た360度のパノラマです。雪を纏った北アルプスの峰々が、澄み切った冬の青空に突き刺さるように連なる様は、まさに圧巻でした。その壮大な景色を前にすると、自分の悩みがいかに些細なものかを思い知らされます。
この二週間、私は誰とも連絡を取りませんでした。デジタルデバイスから意識的に距離を置き、ただひたすら、のんびりと過ごす。この「完全なる遮断」が、乱れた思考の回路をリセットし、心の静寂を取り戻してくれました。
ケース2:『共有する非日常』がもたらす活力 ― しまなみ海道、原付二人旅
ある晴れた日の朝、私は始発電車に飛び乗り、金沢から尾道へ向かいました。10時前に尾道駅に到着し、予約しておいたレンタル原付に跨がります。目指すは、瀬戸内海を貫く「しまなみ海道」を渡り、四国の今治へ。
この道は、自転車の聖地として有名ですが、原付二種であれば自転車道を走ることが可能です。車のスピードでは見過ごしてしまう島の風景や潮の香りを、自転車と同じ目線で、しかし体力を過度に消耗することなく満喫できるのが、この旅の魅力です。
尾道駅では東京から来た友人と合流。二人で美しい島々を繋ぐ橋を渡りながら、普段はできないような他愛のない話に花を咲かせました。今治では一泊2800円のゲストハウスに泊まり、翌日は尾道に戻ってまた別のゲストハウスへ。交通費を除けば、宿泊費はわずか5600円。低コストでありながら、「信頼できる仲間との非日常の共有」は、孤独な旅とはまた違った形で、心に活力を与えてくれました。
ケース3:『最小コストで最大効果』の戦略的リセット ― オフシーズンの沖縄
まとまった休みが取りにくい時期には、オフシーズンの沖縄が最高の逃避先になります。Yahoo!トラベルなどでタイミングを見計らえば、航空券とホテル代込みで4万円前後、最安値では3万5千円という破格の値段で旅が実現します。
昼頃に那覇空港に降り立ち、すぐにレンタルバイクを借ります。そして、やんばるの森を抜け、島の最北端である辺戸岬まで往復約300kmを一日で走破する。サトウキビ畑を吹き抜ける風、車窓から見えるコバルトブルーの海、亜熱帯の植物の匂い。そのすべてが、日常で凝り固まった五感を解き放ってくれます。
夜は国際通り近くのライブハウスへ。沖縄民謡のライブに身を委ね、心ゆくまで酔う。そのために、宿は必ずライブハウスから徒歩3分圏内に確保します。「最小のコストで、最大の非日常体験を得る」という、極めて戦略的なリフレッシュ術です。
ケース4:『極限の集中』が生む思考の解放 ― 金沢発、1000kmのバイク旅
季節や天候に恵まれた時には、大型バイクに跨がり、金沢から青森や北九州まで、一日で一気に走り抜けることもあります。昨年は北九州市の門司まで830kmを走り、翌日には阿蘇の雄大なカルデラを抜けて鹿児島まで南下しました。
「バイクは危険だ」と心配されることもあります。しかし私に言わせれば、不確定要素の多い商品開発への投資に比べれば、そのリスクは遥かに低い。なぜなら、バイクの運転は、自分の技術と状況判断、つまりほぼ完全に自己のコントロール下にあるからです。
走り続けるという一つの行為に極限まで集中することで、日常のあらゆる雑念は強制的に振り払われていきます。風を切り、エンジン音と対話し、刻々と変化する状況に対応し続ける。このプロセスは、一種の瞑想にも似て、走り終えた後には頭の中が驚くほどクリアになっているのです。
このように、私は旅の目的や期間、予算に応じて、様々な方法で思考のスイッチを切り、脳に新たな刺激を与えることを意識しています。遠くへ行けば行くほど、日常から切り離され、新たな発見や思わぬ良い効果が生まれるかもしれません。
年末年始、もし少しでも時間が許すなら、あなたも「物理的逃避」を試してみてはいかがでしょうか。それはきっと、来年を走り抜くための、最高のエネルギーチャージになるはずです。
