Category Archives: 書き物

創造_宣伝方法

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出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 中小企業が素晴らしものを開発したとき、どのように宣伝すればよいのでしょうか。新聞、テレビ、ブログ、SNS、ネット広告など、いろいろ考えられると思います。しかし、素晴らしいものであればあるほど、信用されるまでに時間がかかると思います。分からない人に知らないものを説明するのは面倒なものです。1994年に起業したときから、分かる人だけに説明したいと思っていました。それでも、インターネットが普及していない頃は、説明しなければなりませんでした。しかし、現在はいろいろなツールが使えるようになり、分かる人を探す事が簡単になってきました。また、新しい技術や情報を求めている人も多いのです。そこで、最近私が行っている宣伝方法をお話しします。誰にでも当てはまるか分からないので、参考程度に読んでいただければと思います。
 12年前、ある喫茶店が開業しました。その頃からよく行っています。あるときオーナーから宣伝方法の相談を受けました。私は、お店を見て「思いっきり隠しましょう」と提案しました。ホームページはあるのですが、ネット集客に力を入れずに静かにしました。ネット広告の営業電話もすべて断り目立たないようにしてきました。そして、営業時間を短縮し、週休二日にして日曜日を休みにし、徐々に単価を上げてきました。また、コロナの影響もあり席数を減らしました。最近、噂で聞いたのですが、金沢で一番人気のある喫茶店と呼ばれているそうです。必死に隠したら口コミで広がったみたいです。そして行ってみたい人が増えたようです。毎日5~6時間の営業でオーナーが希望する年商を達成しています。
 私が、最近販売を開始した技術があります。これも分からない人に知らないことを説明しても時間と労力の無駄なので、ネット上での露出だけにしました。アナログ営業は一切行わず、自社のホームページから専用ホームページへのリンクも付けず、私を知っている人にもバレないようにネット上だけで情報発信を行いました。全国でビジネス展開するつもりなので地元だけ優先して営業することは行っていませんでした。情報発信は平等に行い、興味ある人から連絡いただければ良いと思っていました。運良く知名度のあるYouTubeチャンネルで紹介してもらうことができ、1ヶ月で24万人の方に見てもらうことができました。その後もひたすら静かに隠していたところ、ある人に見つかってしまいました。そして、ある分野で1位の企業を紹介されました。
 この2つの例からも分かるように、こちらから押し売りをせず、興味ある人とだけ取引すれば良いと思います。その方がお互いに良い取引になると思います。私は勝手に平成の営業方法と言っていますが、まだ昭和の営業をしている企業もありそうです。令和の営業はどんなふうになるのでしょうか。たぶん、パソコンの画面を見ているだけになると思います。ネット上のマッチングサイトの活用が主になるような気がします。楽しみです

創造_先手と後手

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出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 ”次どうしよう”と思ったときは、次の手を考えていないときではないでしょうか。私はこんなとき、後手に回ってしまったと思うようにしています。将棋でいう先手とは少し意味は違いますが、自分が主導権を持って有利な状態を先手と思っています。
世の中が変化したとき、現在販売している商品が価値を持たなくなることがあります。そのとき、次これを出そうと準備ができているときは先手に回っていると思います。先手に回るとは、世の中の変化を予測し、先に作戦を準備してある状態です。しかし、自分が思うような未来が来るとは限りません。そのため、複数のプランを準備しておく必要があります。複数のプランを準備するために必要なのは、多くの基礎研究を行い、それを元にし、いま世に出すと価値を持つ商品を組み立てる能力、または基礎研究を元にした商品案です。
 基礎研究は、ある程度範囲を決めて行う必要があります。趣味なら何を研究しても良いのですが、自社の売り上げの元となる研究なので、ある程度範囲を限定することになります。その限定する範囲は、自社の目標から導き出されることになります。目標を決め、到達するために必要な商品案を複数持ち、世の中の変化に対応してタイミング良く作戦を実行すると良いと思います。それと後手に回らない秘訣は、独自の路線を描いておくことです。他社製品を見て慌てて同じような製品を開発すれば、必ず後手に回ります。独自の路線が間違っていたら失敗ですが、賭けないと勝てないのも事実です。
 世の中の変化に気づくには、事件、事故、災害などの情報収集を常に行っていると良いです。例えば、Yahooニュースなどを見て最近増えてきたニュースの種類などをチェックすると良いかもしれません。ニュースはテレビではなくネットニュースを見て、記事数や文字数を見るようにしています。ニュースの傾向をつかむためです。
 40年近く前の学生時代、歴史の先生から教わったことがあります。先生から「テレビのニュースが正しいとは限らないので本質を見抜くにはどうすればよいか」という問いかけがありました。普通の人は新聞、テレビ、ラジオなどの情報しか入手できないので、どうするのだろうと思いました。先生の回答はこうです。「複数の情報を入手し、その違いを考えてみる」でした。今はインターネットがあるので、同じ事柄に対して多くの情報を入手することができます。それも違う立場の人が同じ事柄について発信しています。私の場合、情報収集の方法は、YouTube、X(旧Twitter)、Yahooニュースなどです。テレビはもう10年以上見たことがありません。ネット上の情報の方が、多くの立場の人が発信しているので参考になります。
 普段から情報収集しておくと、何かがつながり閃くことがあります。この閃きを蓄積しておくと困ったときの助けになります。
 私の場合、後手に回ってしまったと思ったとき、次の手は頭の中を探します。蓄積しておいた閃きの中から、使えるものはないか、と探すのです。起業直後は、この閃きの蓄積がないので、前回(「もがく」8月25日号)で書いたように断食をして無理矢理知恵を絞り出したのです。

創造_もがく

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、精神論を書いてみたいと思います。前回、「ぼんやりした商品のイメージができたとき、それを実現する方法を考え、現在から半歩先の未来へジャンプする」と書きました。しかし、どうやって半歩先の未来へジャンプしてハッキリした商品イメージをつくるのでしょうか。これは、どの本にも書いてありません。また、知識を増やしても実現しません。私の場合、もがきながら考えます。他に方法が思いつかなのです。
 その実例をお話しします。あるとき商品のアイディアが出ないことがありました。それまでアイディアを出し続けていたため、ネタの仕込みができていなかったのだと思います。しかし、仕事なので出ないでは済まされません。必ず売れる商品を考える必要があります。これができないと廃業することになります。そのときふと思いました「働かざる者食うべからず」と。そして、ヒット商品が出るまで日中断食を始めたのです。家を出て会社へ行き帰宅するまでの間、水しか飲まないと決めたのです。次のヒット作が出るまでに1年もかかってしまい、その間に体重は10kg減り、体温は下がり、午後になると頭がフラフラになっていました。それでも、ヒット作ができたおかげて投資額が3ヶ月で30倍になりました。そして1日3食に戻しました。ただ、1年続いた体の飢餓状態が影響したのか、大きな病院で手術を受けることになりました。案外ハードな断食でした。しかし、必ず売れる商品を考える自信がつきました。体調が良いから良い商品を生み出せるとか、お金が無いからできないとか、このとき言い訳は不要だと思いました。仕事は、結果だけを評価すべきだと思います。普段何をしていても良いのですが、期限までに成果を出せばよいのです。その後、断食はやめました。千日回峰行ほどではありませんが、案外精神的にきつかったです。
 その後は、もがき方を変えました。早朝日の出くらいの時間からロードバイク(自転車)で25kmを全力で走ることにしました。6、7月は4時頃にスタートしました。信号もあるので走っている時間は1時間くらいです。5月から10月くらいまで毎年行い10年以上続けました。迷っていることは事は走りながら考え、自宅に戻ってくる頃には結論を出しています。そして頭がスッキリした状態でパソコンに向かうのです。このように、考えて分からないときは走って考えました。また、体を鍛えることは精神的にも鍛えることになると思います。そして問題を解決する能力も高くなっていくのだと思います。
 毎日1時間ですが、走っていると筋肉がついてきます。私の場合、平地で時速54kmまで出るようになりました。長距離だと石川県から仙台市まで走ったことがあります。1日で走った最長時間は、17時間です。場所は、伊豆半島1週200kmです。ゴールしたとき、まだ元気だったので、もしかしたら24時間走れるのではないかと思いました。しかし、いくら体が疲れても期限までに売れる商品を考える事よりは楽です。体の疲れは寝たら取れます。売れる商品はそんな簡単にできるわけではないので、もがき苦しんで生み出すことになります。しかし、その過程がおもしろいのです。その過程を何回か経験すると、自分なりの法則が見えてきます。これが大事なのだと思います。一度、製品がヒットすると、やめられなくなります。

創造_何を作る

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 何をつくればよいのでしょうか。以前(本誌2021年9月17日号「仕様の決め方」参照)にも少し書きましたが、売れる商品を計算する方法をもう少し詳しく説明してみたいと思います。

 まず、2つの条件を確認します。
条件①
 自社または取引先のノウハウや技術で、実現可能な範囲で商品を考える必要があります。できないことを商品にはできないからです。リソースをリストアップするということです。
条件②
 世の中にある商品カテゴリの範囲から商品を考えます。分からない人に知らないものを説明するのは時間とコストがかかるため、いま現在、世の中にある商品カテゴリの中から考えます。一歩先ではなく、半歩先の商品を考えるということです。もし一歩先のことに気づいてしまったら、そのアイディアが半歩先となる時期まで寝かせておきます。特許の期間は出願から20年なので、半歩先になると思われる時期がその範囲に入るようであれば、先に特許出願だけ済ませておくという方法もあります。次に、世の中にある商品カテゴリの一覧を作りますが、このとき、自社の事業領域とANDをとり、重なる領域の中で考えるようにすると良いと思います。あるいは、自社の事業領域の周辺までを含めても良いと思います。これはAmazonやYahooショッピングのカテゴリ一覧を見れば分かります。
 これで、リソースと商品カテゴリが決まったので、この2つのデータベースから計算します。リソースを頭に置き、カテゴリ一覧を見ながらマッチングしていきます。このときハッキリとした製品が思い浮かぶ場合は、すでに類似品がある可能性が高いです。ここでは、「ぼんやりした製品の雰囲気」、「具体的な製品は分からないが、こんな需要があるかもしれない」などが分かれば良いと思います。
 ぼんやりした商品のイメージができたとき、それを実現する方法を考えます。それが発明になります。現在から半歩先の未来へジャンプするのです。このジャンプの方法は本に書いてありません。本に書いてあるのは過去のことだけなので、いくら勉強し知識を増やしてもヒット商品は生まれないのです。未来を創造するしかありません。
 ジャンプする前に、さらに詳細な情報を収集し商品の条件を設定します。ここまでは学校の勉強と同じです。ここをおろそかにすると売れない商品をつくってしまうことになります。条件設定が完了し、商品の仕様がほぼ固まった状態でジャンプします。その商品の仕様を実現するための方法を創造するのです。その創造は発明を含む場合もあります。発明が含まれていれば特許を出願し、価値ある権利として20年の期間を利用すれば良いのです。
 結論としては、現在入手できる情報を元に商品の概要(アウトライン)まで追い込みます。考えるというより理詰めで追い込むという言い方が似合います。そして未来を創造しながら、それを実現する方法を考えます。ここは勉強すれば誰にでもできというものではなく、センスが問われるところです。自分にそのセンスが有るのか無いのか、自分の才能や性能を自覚することも大事で、無ければセンスを持った人と協力して行うしかありません。

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創造_波に乗る

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 同じものを作り続けていると売れなくなります。製品を立ち上げて、売り上げが上昇し、水平飛行に入り、その後、徐々に売り上げが落ちていきます。そして、採算がとれなくなりその製品が廃版になります。ここで会社まで終了してしまうと一発屋と呼ばれます。一発屋で終わらないためには次々に製品を立ち上げなければなりません。そして先に立ち上げた製品が売れているうちに次の製品を立ち上げ複数の製品を立ち上げていきます。合計して廃版になる製品よりも立ち上げた製品の数が多く利益も増えていくのであればよいと思います。
 製品を立ち上げるにしても、どの方向の製品を立ち上げるか考えなければなりません。まったく畑違いの分野に進出するよりも現在営業している分野で川上から川下まで見渡してみるのもよいと思います。またその方が安全だと思います。原料→材料→部品→製品→最終商品と物が流れていきます。もし今、自社が部品を製造している場合、原料側の製品を考えた方がよいのでしょうか、または、最終商品側の製品を考えた方がよいのでしょうか。私は消費者に近い最終商品側の製品を考えた方がよいと思います。その理由は二つあります。一つは主導権が握れるからです。部品を製造していると最終商品が売れないと部品が売れません。自社で売り上げと利益をコントロールできないのです。もう一つは、付加価値が高くなるからです。加工度が上がれば単価は上がります。そこに自社独自の技術が入っていれば付加価値も高くなります。この二つの理由から最終製品の方へ事業領域を拡大するとよいと思います。私の場合、30年近く前の創業時から最終商品のみを直販してきました。
 このように多くの波に乗り売り上げと利益を自由にコントロールできるとよいと思います。取り組むテーマは、急に思いつくものではありません。普段から興味を持ったものを調べてみる必要があります。従来製品のサンプルを買って使ってその製品を3次元のイメージとして理解していきます。市場動向、製品の構造、知財の関係など複数の項目を頭の中でイメージしていきます。イメージしながら物を触っていると全体像が見えてきます。何の全体像かというと、製品そのものの技術であったり、知財であったり、販売方法や価格であったり複数の項目がイメージとして理解できてきます。そのとき他の人から見ると遊んでいるように見えるかもしれません。しかし、それは研究開発費で行っている立派な仕事なのです。製造業の方から見ると無駄に見えるかもしれませんが、最終製品のメーカーからみると、そこが大事なところです。気がつくか、気がつかないかで会社の運命が決まります。
 一つの大きな波に乗っているときそれを現金化できます。いつか終わる商品を最後まで売り続けてもよいのですが、事業が安定しているとき現金化してさらに次の事業に投資することもできます。その次の事業を常に見つけておくことが必要になります。売り上げの数パーセントを調査や研究開発に使ってもよいのではないでしょうか。

創造_基礎研究

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、基礎研究の重要性について話したいと思います。
 そろそろ暑くなってきたので、冷やす話からしましょう。物を冷やすには4つの方法があります。放射冷却、電子冷却、気化熱を奪う、化学的に冷やすの4種類です。
 放射冷却とは、雲が無いときに地表から宇宙空間に赤外線を放射し冷える現象です。電子冷却とは、ペルチェ素子などを使い電流を流すと、発熱する部分と冷える部分ができる現象です。気化熱を奪う方法は、水などの液体が蒸発すると、その蒸発した部分が冷える現象です。化学的に冷やす方法は、氷に塩をかけると冷えるなどの現象です。
 私は現在、放射冷却と気化熱を奪う方法を利用した商品を販売しています。原理が単純なので特許など取れないと思うかもしれませんが、長期間の研究により原理に近いところから権利化することができました。単純ということは強い権利ということです。
 単純な権利ですから、他人が同じ目的で同じ事を考えた場合、同じ構造になるということです。実際に、他社製品が私の保有する特許の権利範囲に入っているというものがあったので、その製品の販売を中止してもらうことになりました。その後、別の他社へその特許を貸すことになりました。誰が考えてもたどり着くところは最も単純な方法です。これが強い権利です。他社を排除し自社で独占できるということです。独占できないと利益は出ません。
 では、なぜそんな都合の良い権利を簡単に取れるのでしょうか。実は、簡単ではないのです。その考えにたどり着くまでに、長い時間を基礎研究に使っているのです。他人から見れば、私は遊んでいるように見えるかもしれませんが、考えがあって研究しているのです。投資すると必ず成功と失敗があり、実らない研究もたくさんあります。しかし、投資に成功しないと利益は出ません。
 気化熱を奪う方法で繊維の特許を複数持っています。製品が売れだすまでに8年かかりました。その間、仕様、用途、販売方法など試行錯誤していました。特許はまだ10年残っているので、これから回収します。すぐ売れないからといって特許を捨ててはいけません。売る自信があるのなら売れるまで色々な条件を調整し、売れる状態にまで持っていけばよいのです。
 放射冷却の研究は、1993年から行っています。研究開始から30年が経過しましたが、今年2023年にやっとサンプルを作ることができました。開発費、用途、仕様など色々な条件が揃うまで時間がかかりました。この特許の期間はあと15年ありますので、今年から事業化しました。
 ネット上のツールを使って簡単に売上をつくっているように見えるかもしれませんが、膨大な開発費をかけているのです。最終段階の世に出すところだけ見せているので、簡単に強い取得して製品をつくり、売上をあげているように見えるのかもしれませんが、これは、長い長い基礎研究があるからできるのです。それも民間の零細企業がやっているので、当然それにともなう大きい犠牲があります。その犠牲と成功したときの喜びを天秤にかけて、成功したときの喜びが勝った人だけが、自社ブランドの自社製品をもつメーカーになれるのではないでしょうか。