熱を使わずに霜と結露を予防するカーブミラーの開発経緯です。
研究を始めたのは1993年です。物としては開発に成功しましたが特許を使う企業が現れず実用化は行っていません。
1993年に放射冷却の研究を始めて現在に至ります。
放射冷却という現象を理解すれば温暖化対策のためのくふうができると思います。この研究を通して感じました。
現在は、放射冷却を住宅の室内を冷やすために利用する特許を保有しています。
この研究が元になりました。
発明から商品企画、製品設計、ネット直販などメーカーとしてのノウハウを提供しています。グッドデザイン賞、ベンチャーフェアなどで受賞歴多数あり。
熱を使わずに霜と結露を予防するカーブミラーの開発経緯です。
研究を始めたのは1993年です。物としては開発に成功しましたが特許を使う企業が現れず実用化は行っていません。
1993年に放射冷却の研究を始めて現在に至ります。
放射冷却という現象を理解すれば温暖化対策のためのくふうができると思います。この研究を通して感じました。
現在は、放射冷却を住宅の室内を冷やすために利用する特許を保有しています。
この研究が元になりました。
カーブミラーの結露と霜予防の研究を動画にしてみました。
この話は、現在(2019年)も続いている開発ストーリーの始まりです。
概要
1993年の何月だったか忘れましたが、当時務めていた会社へあるカーブミラーメーカーの営業マンが来ました。目的は、結露と霜が付かないカーブミラーを開発できないかとのことです。そのときすでに対策した製品は3種類ありました。
・蓄熱材内蔵タイプ
・ヒーター内蔵タイプ
・光触媒を塗布したタイプ
1.放射冷却とは何ぞや
放射冷却とは高い温度を持った物から低い温度を持った物へエネルギーが移動する現象です。エネルギーは赤外線として移動します。電気ストーブの前に来ると暖かさを感じると思います。これは電気ストーブから赤外線が自分の方へ飛んできているからです。逆に氷柱の横に立つと目をつぶっていてもヒンヤリすると思います。これは自分から氷柱へ赤外線が飛んでいったのです。このようにエネルギーを同じにしようとする現象があります。
太陽から地球へもエネルギーは届いています。日中気温が上がるのはこのためです。夜間は、熱を持った地球が宇宙空間へ熱を赤外線として放射してしまいます。宇宙空間は物質が無いので温度もありません。絶対零度なのです。摂氏でいうとマイナス273℃です。それと地表の温度が30℃ほどあれば約300℃の温度差がありエネルギーが移動するのです。これが放射冷却です。放射冷却は日中も起こっているのですが太陽から届く熱の方が大きいため冷えるイメージは無いと思います。しかし、太陽光を遮って日陰にすれば放射冷却のみ利用することができます。
2.各方式の特徴
・蓄熱材内蔵タイプ
カーブミラー内部に蓄熱材が入っており、日中の気温で蓄熱材が温められ夜間の放射冷却による冷えによる結露と霜を予防します。欠点は、日中と夜間の気温が逆転したとき蓄熱材入りのカーブミラーだけ結露することです。また、重量があり設置工事が大変です。
・ヒーター内蔵タイプ
これは夜間のみ商用電源でカーブミラー裏面のヒーターに通電する方式です。効果は確実でJRなどで採用されています。しかし、道路など商用電源を引けないところでは設置不可能です。また商用電力線を引く必要があり毎月の電気代の支払いも発生します。
・光触媒を塗布したタイプ
これはTOTOの特許を使った製品らしいです。積水樹脂が製品化しました。当初、カーブミラーの結露予防のアイディアに興味を持っていたのですが光触媒方式を採用しました。
これは、結露しても水滴にならず、薄い水の膜になるため鏡として機能します。しかし、霜になった場合は像が写りません。残念50点です。
この3種類はどれも対処療法のため欠点ができていまいます。これを根本的に解決するには、放射冷却を理解する必要があると思いました。
3.上向きが冷える
毎日、夕方から外へ出て放射冷却現象を見ていました。道路に立っているカーブミラーがいつ曇るのかを見ていたのです。そうすると面白い現象に気がつきました。自動車の屋根やボンネットが先に結露しドアなど垂直の面は遅れて結露するのです。また下向きの面は結露しません。カーブミラーのひさしの下も結露しません。この現象を見て結露という物が上から降りてきているのかも知れないと考えました。霜が降りるという表現からも上から降りてくるのかと思いました。しかし、雨のように降ってくるのかと思ってみても何も降りてきません。
それで気がついたのですが、空は冷たく地面は暖かいのです。ですから、地面の方向へは赤外線は放射されず冷えないのです。空の方は冷たいため赤外線は放射され冷えるのです。
ということは上向きの面が冷えやすく斜めや垂直の面は遅れて冷えるということになります。カーブミラーは、ほぼ垂直です。そこでカーブミラーが結露する前に検知してミラー裏面のヒーターに通電することはできないかと思ったのです。
しかし、カーブミラー表面と空気の分子は接触しています。接触しているのにカーブミラーだけがなぜ冷えるのでしょうか?ここが長い間疑問でした。たぶんミラーと接触している空気の分子はミラーと同じ温度なのでしょう。しかし、その隣の分子は少し暖かいと思います。それに結露する日は風がありません。空気とミラーの温度がなじまないのでしょう。風がない状態でミラーだけが放射冷却で冷えていきます。遅れて冷える空気の中に冷たいミラーが存在するのです。これが結露の原因です。
4.結露予知センサー
水平面が早く結露し垂直面が遅れて結露する現象に気がついたため垂直面が結露する直前に結露を予知するセンサーをつくれないか考えていました。答えは簡単でした。斜めの面が結露したときそれより遅れて結露する垂直なカーブミラーを加熱すれば良いのです。具体的にはカーブミラーの裏面に貼ったヒーターに通電するのです。そのとき斜めの面の裏面にもヒーターを貼りこの面の結露が取れたときカーブミラー裏面のヒーターへの通電も止めれば良いのです。そして実験用センサーを試作することにしました。
記号の説明
11:カーブミラー
11a:ヒーター
21:斜めの鏡
21a:ヒーター
22:結露検出用赤外線LED
ブロック図はこうなります。太陽電池が発電した電力をバッテリーに蓄え夜になると制御回路が働きます。制御回路はセンサー部である斜めに設置した鏡の結露を赤外線により監視しています。そして斜めの鏡が結露したときカーブミラーとセンサーの鏡の裏面に貼ったヒーターに通電します。センサーの鏡の結露が取れた時点でヒーターへの通電を止めます。こうすれば結露寸前にカーブミラーの温度を少し上げることができ結露を予防することができるはずです。
実際に試作し実験してみたところ一晩で1分間の通電が5回ありました。合計5分の通電で結露を予防することができました。詳しくは下記のページに書きました。
放射冷却による結露や霜は、地球と宇宙との間でおこる熱の移動によって地表付近にあ
この現象に興味を持った砂原康治が18年の研究の結果、熱を使わずに放射冷却のなかで屋外に置いた物を気温より冷やさない方法を発明しました。
18年を費やした砂原康治の研究内容を説明します。
カーブミラーの研究成果はビジネスとしては成果はありませんでしたが温暖化傾向の中いろいろな物を冷却する用途に応用できます。
次は、エネルギーを使わずに冷却する研究に着手します。
参加費 1000円/人
(2015年1月31日15時~ ITプラザ武蔵 5F 第2研修室)
定員15人
ついに最終回です。
消費電力を極力抑えてみました。
これは1Wのファンをデューティ50%で動作させ平均0.5W消費しました。
すると、風力が弱く周囲まで風が回らなかったようです。
今まで鏡面の裏に風を当てる効率を追求してきました。
できるだけ弱い風で鏡面の裏面とカーブミラー内部の空気を撹拌して馴染ませてきました。
今回は構造的に弱い風量でも風速を上げる方法を考えました。
下の図のように鏡面の裏面に少しすき間を空けて仕切板を設置します。
仕切板の中心に電動ファンを付けて裏側へ空気を引きます。
そうすると仕切板の裏側は空気が流れる断面積が大きく空気がゆっくり流れます。
逆に仕切板より表側(鏡面裏)は空気が流れる断面積を小さくしてあるので空気が速く流れます。
これにより電動ファンの能力は同じでも鏡面裏の空気の速度を上げることができます。
そうすれば空気と鏡面と温度が馴染みやすくなります。
単純ですが流量を変えずに流速を上げる方法です。
以上です。
ミラーの結露予防にここまでしつこく研究してみました。
そして、ミラーメーカー3社に提案してみました。
A社:うちは光触媒の設備投資をしてしまったから方式を変えずにいく。
B社:高機能のミラーを販売しても通常のミラーを販売しても役所の予算は同じだから売上も同じです。新しいことをする必要がありません。(18年前に結露と霜対策のテーマを持ち込んできた会社です。)
C社:無償なら使ってやっても良い。
ということで1円にもなりませんでした。チャンチャン。
しかし、特許を検索する限り放射冷却を一番理解しているのは私ではないかと思います。
そのとき無駄だと思っても3年で7割、5年で10割役に立ちます。いつもそう感じています。
この失敗(失敗ではなく実験結果)は根っこだと思っています。
屋外で気温や湿度を測定していると気が付いたことがあります。
放射冷却が起こると地表付近から冷えていきます。
徐々に上の方の空気が冷えていきます。
確認のため建物の2階から熱電対の温度計を2種類の高さで垂らしてみました。
結果はやはり上の方が温度が高いという値が出ました。
それも高さ1mで1℃くらい温度が違ってきます。
1m上は1℃温度が高い空気があるのです。
そしてその温度分布は等高線のように少し凸凹しています。
このような空気の層ができるのです。
ということは1m上の空気を吸い込めばミラーはその付近にある空気よりも高い温度を保てるということかと思いました。
そこで実験してみました。
それが上の写真です。
左が普通のミラーで右が上から空気を吸い込むパイプを取り付けました。
一応、これで放射冷却を応用した結露と霜の対策はできました。
しかし、空気を吸い込むということは穴が開いているということです。
虫や葉っぱが入って故障するだろうなと思いました。
原理は良いのだけどこの穴が欠点です。
ということでこの方式は断念しました。
しかし、放射冷却というものがだんだん理解できてきました。
特願2000-297710
今日は、ここまでにします。次回をお楽しみに。