私が考える商品企画は、市場調査やデータ分析から始まるのではありません。すべては、世の中を注意深く見渡し、「なぜ、こんな便利な物がないんだろう?」という、ふとした疑問に気づくところからスタートします。
ステップ1:着想 ― 最もコストをかけるべき「気づく力」
日常の風景の中から、人々が不便に感じているであろう「空白」を見つけ出すこと。何を見て、何を思うか。この最初の「気づき」こそが、商品企画において最も時間と洞察力を要する、いわば最もコストのかかる重要な作業です。
ステップ2:調査と分析 ―「ない」理由を推理する
テーマが定まったら、次に行うのが特許検索です。ここで重要なのは、結果に応じて思考を巡らせることです。
- A. 類似の特許があった場合 →「なぜ、これは商品化されていないのだろう?」と推理します。技術的な課題、コストの問題、市場性の判断ミスなど、先行者が越えられなかった壁を分析します。
- B. 類似の特許が全くない場合 →「価値がないから誰も出願しないのか?」あるいは「まだ誰も気づいていない未開拓のニーズなのか?」を徹底的に考察します。
ステップ3:決断と実行 ― 未発見のニーズへの挑戦
分析の結果、「これは、まだ誰も気づいていない価値あるアイデアだ」という結論に達した時、初めて特許出願を行い、製品化のプロジェクトをスタートさせます。
ステップ4:事業化の9合目を越える
私の中では、無事に特許が取得でき、実際に動く試作品が完成した段階で、事業化におけるリスクの9割はクリアしたと考えています。なぜなら、「アイデアの独自性(権利)」と「実現可能性(技術)」という、最も不確実な2つの要素がここで確定するからです。
あとは、そのアイデアを世に送り出すための最終フェーズ。必要な材料を仕入れ、加工するための道具を揃え、事業を動かすためのお金を準備する。やるべきことは、もう明確なのです。
