Tag Archives: 商品開発

創造_もがく

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、精神論を書いてみたいと思います。前回、「ぼんやりした商品のイメージができたとき、それを実現する方法を考え、現在から半歩先の未来へジャンプする」と書きました。しかし、どうやって半歩先の未来へジャンプしてハッキリした商品イメージをつくるのでしょうか。これは、どの本にも書いてありません。また、知識を増やしても実現しません。私の場合、もがきながら考えます。他に方法が思いつかなのです。
 その実例をお話しします。あるとき商品のアイディアが出ないことがありました。それまでアイディアを出し続けていたため、ネタの仕込みができていなかったのだと思います。しかし、仕事なので出ないでは済まされません。必ず売れる商品を考える必要があります。これができないと廃業することになります。そのときふと思いました「働かざる者食うべからず」と。そして、ヒット商品が出るまで日中断食を始めたのです。家を出て会社へ行き帰宅するまでの間、水しか飲まないと決めたのです。次のヒット作が出るまでに1年もかかってしまい、その間に体重は10kg減り、体温は下がり、午後になると頭がフラフラになっていました。それでも、ヒット作ができたおかげて投資額が3ヶ月で30倍になりました。そして1日3食に戻しました。ただ、1年続いた体の飢餓状態が影響したのか、大きな病院で手術を受けることになりました。案外ハードな断食でした。しかし、必ず売れる商品を考える自信がつきました。体調が良いから良い商品を生み出せるとか、お金が無いからできないとか、このとき言い訳は不要だと思いました。仕事は、結果だけを評価すべきだと思います。普段何をしていても良いのですが、期限までに成果を出せばよいのです。その後、断食はやめました。千日回峰行ほどではありませんが、案外精神的にきつかったです。
 その後は、もがき方を変えました。早朝日の出くらいの時間からロードバイク(自転車)で25kmを全力で走ることにしました。6、7月は4時頃にスタートしました。信号もあるので走っている時間は1時間くらいです。5月から10月くらいまで毎年行い10年以上続けました。迷っていることは事は走りながら考え、自宅に戻ってくる頃には結論を出しています。そして頭がスッキリした状態でパソコンに向かうのです。このように、考えて分からないときは走って考えました。また、体を鍛えることは精神的にも鍛えることになると思います。そして問題を解決する能力も高くなっていくのだと思います。
 毎日1時間ですが、走っていると筋肉がついてきます。私の場合、平地で時速54kmまで出るようになりました。長距離だと石川県から仙台市まで走ったことがあります。1日で走った最長時間は、17時間です。場所は、伊豆半島1週200kmです。ゴールしたとき、まだ元気だったので、もしかしたら24時間走れるのではないかと思いました。しかし、いくら体が疲れても期限までに売れる商品を考える事よりは楽です。体の疲れは寝たら取れます。売れる商品はそんな簡単にできるわけではないので、もがき苦しんで生み出すことになります。しかし、その過程がおもしろいのです。その過程を何回か経験すると、自分なりの法則が見えてきます。これが大事なのだと思います。一度、製品がヒットすると、やめられなくなります。

創造_何を作る

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株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 何をつくればよいのでしょうか。以前(本誌2021年9月17日号「仕様の決め方」参照)にも少し書きましたが、売れる商品を計算する方法をもう少し詳しく説明してみたいと思います。

 まず、2つの条件を確認します。
条件①
 自社または取引先のノウハウや技術で、実現可能な範囲で商品を考える必要があります。できないことを商品にはできないからです。リソースをリストアップするということです。
条件②
 世の中にある商品カテゴリの範囲から商品を考えます。分からない人に知らないものを説明するのは時間とコストがかかるため、いま現在、世の中にある商品カテゴリの中から考えます。一歩先ではなく、半歩先の商品を考えるということです。もし一歩先のことに気づいてしまったら、そのアイディアが半歩先となる時期まで寝かせておきます。特許の期間は出願から20年なので、半歩先になると思われる時期がその範囲に入るようであれば、先に特許出願だけ済ませておくという方法もあります。次に、世の中にある商品カテゴリの一覧を作りますが、このとき、自社の事業領域とANDをとり、重なる領域の中で考えるようにすると良いと思います。あるいは、自社の事業領域の周辺までを含めても良いと思います。これはAmazonやYahooショッピングのカテゴリ一覧を見れば分かります。
 これで、リソースと商品カテゴリが決まったので、この2つのデータベースから計算します。リソースを頭に置き、カテゴリ一覧を見ながらマッチングしていきます。このときハッキリとした製品が思い浮かぶ場合は、すでに類似品がある可能性が高いです。ここでは、「ぼんやりした製品の雰囲気」、「具体的な製品は分からないが、こんな需要があるかもしれない」などが分かれば良いと思います。
 ぼんやりした商品のイメージができたとき、それを実現する方法を考えます。それが発明になります。現在から半歩先の未来へジャンプするのです。このジャンプの方法は本に書いてありません。本に書いてあるのは過去のことだけなので、いくら勉強し知識を増やしてもヒット商品は生まれないのです。未来を創造するしかありません。
 ジャンプする前に、さらに詳細な情報を収集し商品の条件を設定します。ここまでは学校の勉強と同じです。ここをおろそかにすると売れない商品をつくってしまうことになります。条件設定が完了し、商品の仕様がほぼ固まった状態でジャンプします。その商品の仕様を実現するための方法を創造するのです。その創造は発明を含む場合もあります。発明が含まれていれば特許を出願し、価値ある権利として20年の期間を利用すれば良いのです。
 結論としては、現在入手できる情報を元に商品の概要(アウトライン)まで追い込みます。考えるというより理詰めで追い込むという言い方が似合います。そして未来を創造しながら、それを実現する方法を考えます。ここは勉強すれば誰にでもできというものではなく、センスが問われるところです。自分にそのセンスが有るのか無いのか、自分の才能や性能を自覚することも大事で、無ければセンスを持った人と協力して行うしかありません。

Category: 書き物 | Tags: ,

創造_基礎研究

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株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 今回は、基礎研究の重要性について話したいと思います。
 そろそろ暑くなってきたので、冷やす話からしましょう。物を冷やすには4つの方法があります。放射冷却、電子冷却、気化熱を奪う、化学的に冷やすの4種類です。
 放射冷却とは、雲が無いときに地表から宇宙空間に赤外線を放射し冷える現象です。電子冷却とは、ペルチェ素子などを使い電流を流すと、発熱する部分と冷える部分ができる現象です。気化熱を奪う方法は、水などの液体が蒸発すると、その蒸発した部分が冷える現象です。化学的に冷やす方法は、氷に塩をかけると冷えるなどの現象です。
 私は現在、放射冷却と気化熱を奪う方法を利用した商品を販売しています。原理が単純なので特許など取れないと思うかもしれませんが、長期間の研究により原理に近いところから権利化することができました。単純ということは強い権利ということです。
 単純な権利ですから、他人が同じ目的で同じ事を考えた場合、同じ構造になるということです。実際に、他社製品が私の保有する特許の権利範囲に入っているというものがあったので、その製品の販売を中止してもらうことになりました。その後、別の他社へその特許を貸すことになりました。誰が考えてもたどり着くところは最も単純な方法です。これが強い権利です。他社を排除し自社で独占できるということです。独占できないと利益は出ません。
 では、なぜそんな都合の良い権利を簡単に取れるのでしょうか。実は、簡単ではないのです。その考えにたどり着くまでに、長い時間を基礎研究に使っているのです。他人から見れば、私は遊んでいるように見えるかもしれませんが、考えがあって研究しているのです。投資すると必ず成功と失敗があり、実らない研究もたくさんあります。しかし、投資に成功しないと利益は出ません。
 気化熱を奪う方法で繊維の特許を複数持っています。製品が売れだすまでに8年かかりました。その間、仕様、用途、販売方法など試行錯誤していました。特許はまだ10年残っているので、これから回収します。すぐ売れないからといって特許を捨ててはいけません。売る自信があるのなら売れるまで色々な条件を調整し、売れる状態にまで持っていけばよいのです。
 放射冷却の研究は、1993年から行っています。研究開始から30年が経過しましたが、今年2023年にやっとサンプルを作ることができました。開発費、用途、仕様など色々な条件が揃うまで時間がかかりました。この特許の期間はあと15年ありますので、今年から事業化しました。
 ネット上のツールを使って簡単に売上をつくっているように見えるかもしれませんが、膨大な開発費をかけているのです。最終段階の世に出すところだけ見せているので、簡単に強い取得して製品をつくり、売上をあげているように見えるのかもしれませんが、これは、長い長い基礎研究があるからできるのです。それも民間の零細企業がやっているので、当然それにともなう大きい犠牲があります。その犠牲と成功したときの喜びを天秤にかけて、成功したときの喜びが勝った人だけが、自社ブランドの自社製品をもつメーカーになれるのではないでしょうか。 

創造_売れる証拠

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


 ここまで製品仕様を決める方法を説明してきました。しかし、製品を製造販売しても売れなければ仕事をしたことにはなりません。そこで、売れる証拠が必要になってきます。
 マーケティングとは、Wikipediaに書かれている内容を要約すると、”マーケティング活動は、購買行動に働きかける行為である。”になります。働きかけた後どうなったかが問題なのです。もし私がマーケティングに費用を支払うとすると要求する成果は、売れる証拠です。「これくらい売れると思う」は誰でも言えます。必要なのは証拠です。それにより投資するかどうか判断します。売れる証拠とは売れた数量や金額です。売る前に販売実績を要求するのは無理があると思われるでしょうが、責任者の立場ならそう言いたいでしょう。
 いろいろな不確定な要素がある中で投資に踏み切る際、できるだけ小さな額を投資し売れる証拠を見つけたいと思います。しかし、小さく始めていては趣味のような規模になってしまいます。そこで使う手は、小さく初めて確証を得たら短時間で規模を拡大していくことです。数年前リーンスタートアップという本が流行っていましたが、そんなことが書いてあったようです。20年ほど前に販売した紙製品は、ネット上で売れるかどうかテストし、売れたので一気に投資し量産体制を整えました。そして中国製などが参入する前に撤退しました。トータル3ヶ月の仕事でしたが投資額が30倍になりました。ここまでは、小さくローリスクで始めて確証を得たら一気に拡大する方法です。
 次に確実に売れる証拠を作ってから製造販売する方法を説明します。売れる証拠とは売れた証拠です。売れた証拠とはお客さんが代金を払ったということです。お客さんが代金を払ってから作れば良いのです。予約販売のような仕組みです。これをクラウドファンディングを使って実現すれば良いのです。お客さんはその商品を欲しいと思えばクレジットカード決済を済ませます。目標額の注文が入ったらプロジェクト成功となりお客さんのクレジットカードから代金が決済されます。そしてメーカーが商品を発送した後、代金がメーカーに振り込まれます。投資資金が十分にある大企業もこの仕組みを使っています。売れる証拠が欲しいのだと思います。能力や規模に関係なく売れるかどうかはやってみないと分からないのです。もし分かるという人がいたらその人はすでに神様扱いされているはずです。
 結論としては、石橋を安く早く叩いてサッと渡るか、注文をもらってから作るかのどちらかになります。魅力ある製品であればお客さんは数ヶ月待ってくれます。ちなみに私のクラウドファンディングの成績は2021年前半で4戦4勝です。トータルで5戦5勝の負け無しです。