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創造_先発メーカーと後発メーカー

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 先発メーカーと後発メーカーがあります。先発メーカーは、これまでに無かった物を販売するメーカーです。後発メーカーは、すでに有るものに自社なりのアイディアを入れて商品化し販売するメーカーです。先発メーカーは、新たな価値観を創るための投資を行います。その場合、一歩先を行く商品を作ってはいけません。消費者に理解されず売れません。一歩先に気づいたとしても特許出願し半歩先になるまでアイディアを寝かせ、時期が来たとき販売を開始します。そうすればブルーオーシャンで営業できます。競合メーカーが存在せず価格設定は自由に行えます。私の価格決定方法は、単価をいくらにすれば利益が最大になるかです。これを自社単独で行えば良いのです。誰かに相談する必要はありません。その後、他社が特許を避けて同様の目的の商品を作った場合、他社は特許を避けて作るため価格で不利になり、自社は特許出願から20年間、有利な状態が続きます。特許はその権利範囲を避けたとき、価格が不利になるように書く必要があります。特許は技術屋の仕事ではありません。法律家と営業担当、経営者の仕事です。しかし、その商品の必要性が無くなれば市場も無くなるので20年続かないこともあります。誰でも知っている大手メーカーの製品は人口に比例して全国で売れます。しかし、知名度が無い企業が新たな価値観で創った商品は簡単には売れません。中小企業が新たな価値観で創った新商品を創って販売する場合、消費者からすれば無名のメーカーなので、消費者に価値があることを認めてもらう必要があります。自発的に考えて、自分に必要かどうか判断できる消費者が多ければ良いのですが、そうでなければ苦戦します。昔、自社製品をネット販売したときに、都道府県別に購入率を計算したことがあります。石川県は、全国平均の1/10の購入率でしたが、千葉県は全国平均の2倍でした。関東で人口あたりの販売量が多いことが分かったので、その後、ネット広告は関東にしか出さないことにしました。広告がクリックされて費用がかかったとしても売れる率が高い方が得だからです。
 後発メーカーは市場を考えなくてもよいので簡単です。すでにその商品の市場があるため安心して参入できます。しかし、多くの利益を出すためには、新たな素材や製造方法などを考案しなければなりません。私が実際に製品仕様を決めた例を説明します。2割くらい性能が良いとか価格が安いでは無名の後発メーカーは太刀打ちできません。私は従来品と比較して性能を3倍に上げ価格を1/3にしました。コストパフォーマンスを約10倍にして参入したのです。そうなるような製品を考えたのです。後発なので仕様と価格の目標が立てやすく、そうなる作り方をすればよいのです。もし考えられなかったら実行しなければよいのです。私が実際に後発メーカーを立ち上げてみたところ、利益率は70%でした。コスパ10倍で参入しても利益が70%残る製品を考えたのです。このときの勝因は、素材をまったく別の業界から持ち込んだ事でした。普段から好奇心を持ち、いろいろな素材や技術を勉強しておくとよいと思います。私は、好奇心を満たす費用を研究開発費と呼んでいます。

創造_最強の企業

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 ほとんどの業種において各企業の役割は、最終製品を消費者に届けることだと思います。その一部を担っていたとしても、担当した物は最終製品のメーカーへ納められ、完成品となり最終的に消費者が購入します。では、最終製品を自社で開発・製造して直販しているメーカーはどうでしょうか。全ての工程を自社内で行い、消費者に直接販売しています。誰でもできる行程は外注を使う事があると思いますが、全てを自社でできるということです。具体的には、商品企画、製品開発、特許登録、製造、販売、ユーザーサポートなど、源流から川下まで全てを行います。ということは全ての知識やノウハウがあるということです。経験を積んで、さらにノウハウが蓄積されていくことでしょう。では、一部分だけを担当している企業はどうでしょうか。自社が担当していない部分を知ろうとすれば、新たに知識を入れる必要があります。これが勉強だと思います。その知識が無くても知恵があれば順序立てて考えれば知識を作ることができます。
 それでは、どの行程を担当している企業が一番利益を出しているでしょうか。部品の原料を作っている会社でしょうか。部品を加工している会社でしょうか。最終製品のメーカーでしょうか。たぶん最終製品のメーカーだと思います。メーカーとは投資業であり、開発投資を行いたくさん製品が売れて目標の利益が出れば成功、目標を下回れば失敗ということになります。メーカーとは必ずしも製造業ではありません。
 私の場合、1994年から直販メーカーをやっていて、全ての行程を一人で行っています。通常だと弁護士、弁理士、司法書士に頼むことも自分で行います。
 私が思うメーカーの仕事とは下の図のようなものです。製造業は、製造のみを担当しています。そこからメーカーになろうとすると仕事量は10倍くらいに増えると思います。但し、投資に成功すれば短期間で大きなリターンが期待できます。
 2021年に手数料20%のクラウドファンディングで5千個以上売れた製品があります。そのクラウドファンディングでの販売量は1位か2位だと思います。小売りチェーンのT社がそのクラウドファンディング会社と提携し、店頭販売する製品に選ばれました。その際の手数料は40%に引き上げるとのことです。原理の特許を持ちユーザーに直販できている会社の製品を販売したいから卸値を下げろとの要求です。回答は、「当社からの卸価格は変更しません、T社の取り分は値上げして捻出してください」と回答し納得して頂きました。まだ昭和を生きているようです。直販メーカーとは無敵なのです。景気にも左右されません。ただ消費者が欲しいものを作ればよいのです。

アイディアをかたちに

創造_販売方法

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

株式会社ソロモン 代表取締役 砂原康治 (商品開発アドバイザー)

 ここまで商品を考えて、つくって、売る手順と実行する力について説明してきました。次に具体的に商品を販売する方法を説明したいと思います。このコラムでは自社ブランドの自社製品を持ったメーカーのお話しをしています。
・ネット販売の種類
 自社ドメインのサイト、モール(amazonやYahooショッピングなど)、オークション(ヤフオクやメルカリなど)、アフィリエイトなどが考えられます。昔、プロジェクタースクリーンメーカーを運営していたことがあります。売れるかどうかの確認はヤフオクで行いその後、自社ドメインのサイトを立ち上げました。最初は集客力がないためYahooショッピングなども使いながら徐々に自社サイトの集客力が付くのを待ちました。そしてネットの販路が5つになり管理が大変になり販売手数料も多くなっていきました。そこで思い切って自社サイトのみにしてみました。売上は少し落ちましたが利益は変わりませんでした。このように、短時間で立ち上げ、軌道に乗ると販路を切り替えながら効率の良い体制に落ち着かせるとよいと思います。理想は、自社ドメインのサイトのみで目標の利益が出る事です。
・クラウドファンディング
 2021年前半、私のクラウドファンディングの成績は4戦4勝でした。合計5戦5勝になりました。クラウドファンディングと聞くと寄付を募ると思われている方もいると思いますが、世間はそんなに甘くはありません。リターンに見合う金額かどうか厳しくチェックされます。どんなに崇高なプロジェクトでも善意は期待できません。あくまで支払った金額に見合うリターンかどうかを判断されます。予約販売と思えば良いのです。
・小売店への卸し
 小売店への卸は必要か。2021年クラウドファンディングで販売件数が上位に入り、トップ60社を集めた展示会に出展することができました。その後、全国チェーンの小売店で店頭販売することになりました。クラウドファンディング会社の手数料は通常2割です。これまでのネットでの直販ではなく、流通過程に小売店が加わるため、4割欲しいと言ってきました。私の回答は、「当社の卸価格は変更しない。小売店が小売店分の利益を上乗せして販売すればよい。」です。小売店の利益を確保するためメーカーに値引きを要求してきたのです。ネット販売が普及し、すでにメーカーと小売店の立場が逆転していることに気づいていないようです。販売量を増やそうと無理に薄利で小売店に卸すより、ネットで自然に売れていく量がその商品の力だと思えば良いのです。
・主導権
 ビジネスにおいて主導権を持っているのは源流であるメーカーだと思います。最終製品を製造し、消費者に直接販売できているメーカーは無敵なのです。だから私は最終製品しか手がけないのです。

創造_実行する力

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

 ここまで大まかに商品を考え作って売る方法を説明してきました。次は、各工程を実行する力について説明したいと思います。いろいろな工程で壁にぶつかったり問題が起きたりします。しかし、売上にたどり着くためには作業を行わなければなりません。ここまで書いてきたことは手順です。コンピュータでいうところのソフトウェアです。次にそのソフトウェアを動かすCPUなどのハードウェアの話になります。いくら良いソフトウェアでも動作させるためのハードウェアが貧弱では計算結果が出ません。そこでCPUである人間の実行力を高める方法を説明してみたいと思います。各工程は、それぞれの企業、分野、商品などによって違いがあります。売上に到達しようと作業を行っていくと未知の問題が大量に発生します。それをその場で考え解決して前進していかなければなりません。そこで各工程で今達成しなければならない事を目標とします。実行する責任者は社長であったり社員であったり色々だと思います。しかし責任者となったからには売上に到達しなければなりません。期限が来たとき「あのときこうしておけば良かった」と後悔することがあると思います。ということは、「いまこうする」という方法があるのです。期限を決めると最善の方法はひとつになります。一つしかないものはひらめきや思いつきではなく計算できるはずです。私は、仕事の本質は未来予知だと思っています。未来を予知して判断し決断する事が経営者の仕事だと思います。作業をして仕事をした気分になっていてはいけません。
 話を戻します。今の目標を達成することを優先順位1にして最善の方法を計算し実行するのです。単に優先順位1と書きましたが、本当に何よりも優先すると失うものも大きいので覚悟して臨んでください。計算というのはシミュレーションです。たくさんの方法が考えられると思いますが、それらをすべてシミュレーションしてみるのです。そして一番良いと思われる方法を選べば良いのです。仮にその方法が2番目に良い方法だったとしても期限に間に合うかもしれません。自分を信じ欲と恐怖を頭から外し冷徹にシミュレーションするのです。そして実行し結果を受け入れるのです。昔、新しい商品のアイディアが出ないときがありました。仕事として商品開発を行っているので出ないではすまされません。そこで日中断食をすることにしました。家を出てから会社へ行き家に帰るまで水しか飲まない生活をヒット作が出るまで続けました。絶対負けたくなかったので、もし負けたときは意識がなくなっていてほしいと思ったのです。なぜかアイディアが出るまでに1年もかかりましたが一瞬で投資額が30倍になりました。しかし、病院へ行くことになり手術を受けました。私の場合、優先順位を1にするとはこんな感じです。その後は、毎朝日の出くらいからロードバイクで25km走って体を鍛えています。走りながらシミュレーションするのです。もう15年以上になりました。

創造_売れる証拠

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)


 ここまで製品仕様を決める方法を説明してきました。しかし、製品を製造販売しても売れなければ仕事をしたことにはなりません。そこで、売れる証拠が必要になってきます。
 マーケティングとは、Wikipediaに書かれている内容を要約すると、”マーケティング活動は、購買行動に働きかける行為である。”になります。働きかけた後どうなったかが問題なのです。もし私がマーケティングに費用を支払うとすると要求する成果は、売れる証拠です。「これくらい売れると思う」は誰でも言えます。必要なのは証拠です。それにより投資するかどうか判断します。売れる証拠とは売れた数量や金額です。売る前に販売実績を要求するのは無理があると思われるでしょうが、責任者の立場ならそう言いたいでしょう。
 いろいろな不確定な要素がある中で投資に踏み切る際、できるだけ小さな額を投資し売れる証拠を見つけたいと思います。しかし、小さく始めていては趣味のような規模になってしまいます。そこで使う手は、小さく初めて確証を得たら短時間で規模を拡大していくことです。数年前リーンスタートアップという本が流行っていましたが、そんなことが書いてあったようです。20年ほど前に販売した紙製品は、ネット上で売れるかどうかテストし、売れたので一気に投資し量産体制を整えました。そして中国製などが参入する前に撤退しました。トータル3ヶ月の仕事でしたが投資額が30倍になりました。ここまでは、小さくローリスクで始めて確証を得たら一気に拡大する方法です。
 次に確実に売れる証拠を作ってから製造販売する方法を説明します。売れる証拠とは売れた証拠です。売れた証拠とはお客さんが代金を払ったということです。お客さんが代金を払ってから作れば良いのです。予約販売のような仕組みです。これをクラウドファンディングを使って実現すれば良いのです。お客さんはその商品を欲しいと思えばクレジットカード決済を済ませます。目標額の注文が入ったらプロジェクト成功となりお客さんのクレジットカードから代金が決済されます。そしてメーカーが商品を発送した後、代金がメーカーに振り込まれます。投資資金が十分にある大企業もこの仕組みを使っています。売れる証拠が欲しいのだと思います。能力や規模に関係なく売れるかどうかはやってみないと分からないのです。もし分かるという人がいたらその人はすでに神様扱いされているはずです。
 結論としては、石橋を安く早く叩いてサッと渡るか、注文をもらってから作るかのどちらかになります。魅力ある製品であればお客さんは数ヶ月待ってくれます。ちなみに私のクラウドファンディングの成績は2021年前半で4戦4勝です。トータルで5戦5勝の負け無しです。

創造_独占する方法

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帝国ニュース北陸版(出典:帝国データバンク発行 帝国ニュース北陸版)

 ここまで製品仕様を決める方法を説明してきました。しかし、製品を製造販売しても独占しなくては利益になりません。他社が同じような物を安く販売するからです。
 1995年、起業直後にマイコン制御で動作する製品のメーカーをやっていました。外注に払った設計費の総額は1千万円です。製品単価は40万円ほどでした。初年度1人で1億円以上売り上げました。ユーザーサポートも大変でしたが何とかこなすことができました。
 インターネットが使えるようになり紙製品を販売したことがあります。3ヶ月間で650万円の利益が出ました。この二つを比べてみたとき気づいたことがあります。何を売っても、もらった1万円札は同じだということです。ならば開発費が安い物の方が効率が良いのです。しかし、開発費が安い物は単純な物が多く、すぐに真似されます。そこで特許が必要になります。特許登録までに数十万円かかったとしても開発費に1千万円より遙かに安いのです。
 まず特許を取るためには、これまでにどのような出願があるのか先行技術を調査する必要があります。JplatPatというサイトで検索可能です。ここでの調査が成功と失敗を分けます。私は、現在先行技術調査に慣れたので特許登録率は100%です。調査し出願しているので当たり前です。通常特許の権利は、過去にあった技術と今回開発した技術の境界まで取得できるものと思われています。しかし、出願明細書に正直にそのような権利範囲を書いても審査官は、拒絶する理由を何か探さなければいけないのです。そこで境界を境に権利範囲を主張しても審査官に押されて譲歩する必要が出てきます。そして本来取れるべき権利範囲から一歩引き下がった権利範囲が特許になってしまいます。この対策としては、主張する権利範囲を境界よりも少し押し気味に書くことです。そうすると審査官は、「ここ出過ぎ」とそこを理由に拒絶理由通知を送ってきます。そうなればストーリー通りで「・・は審査官殿の仰るとおりです。・・・」というふうに訂正し当初目標の権利範囲の特許を取得します。このような審査官とのやりとりは出願時点で想定しておきます。ですから出願明細には審査官とのやりとりの台本を盛り込むのです。脚本家の才能も必要なのです。特許のプロからは「また審査官を騙したのか?」とよく言われます。
 製品が完成し特許も登録になれば仕事は完了です。あとは作って売る作業に入ります。作って売ることは仕事ではなく作業です。他社を排除し独占状態で自社製品を売るブルーオーシャンになります。私は、ブルーオーシャンしか経験がありません。そしてやめる時期も自分で決めます。始まったものは必ず終わるのです。勝って終わる決断力が必要です。